No.17021 山形県における麻しんの発生

[ 詳細報告 ] 分野名:ウイルス性感染症
登録日:2018/03/22
最終更新日:2018/03/22
衛研名:山形県衛生研究所
発生地域:山形県(置賜・村山・庄内地域)
事例発生日:2017/03/09(初発患者発症3月2日)
事例終息日:2017/05/17(最終陽性者の発症日4月15日)
発生規模:健康観察対象者 約3700名、検査実施対象者 137名、麻しん患者 60名
患者被害報告数:県内居住者 52名、県外居住者 8名
死亡者数:0名
原因物質:麻しんウイルス
キーワード:麻しんウイルス、アウトブレイク、輸入感染症、ワクチン接種

背景:
日本は2015年3月に麻しんの排除認定を受けた。かつての土着株による感染は無くなったが、国内では旅行者による輸入感染事例は年間数百例ほど報告されており、そのほとんどは単発か数名程度の規模で終息している。しかしながら山形県で7年ぶりの麻しん事例となった本事例では1名の輸入感染事例から著しく拡大し、最終的に60名の感染者を数え、排除認定以降最大のアウトブレイク事例となった。

概要:
初発患者は関東在住の20代男性で、2月20日~26日にインドネシアのバリ島へ旅行歴があり、3月2日に自動車教習所受講のために来県した。翌3月3日に発熱し、8日に医療機関を受診、9日に県衛生研究所において当該患者検体から麻しんウイルス遺伝子を検出した。以後、2次、3次、4次、感染経路不明の順に、それぞれの感染者は25名、27名、2名、5名となり、4月15日までに計60名(麻しん20名、修飾麻しん40名)となった。それから約4週間新たな患者が発生しないことを確認し、5月17日に終息との判断をした。

原因究明:
初発患者がワクチン接種歴のない状態で流行地域へ渡航したことが最大の原因である。また、初発患者(合宿で免許取得に来たという特殊な環境)、ならびに二次感染者のうち2名を加えた3名が発症後も活動を続け他者との接触を続けたことが主な拡大要因と考える。現在のワクチンの接種率は高くなったものの、20代より上は未接種・接種歴不明がある世代であり、このいわゆるポケット世代の方々が典型的な麻しんを発症し、感染拡大の要因となっていることが背景として考えられる。

診断:
当所では53例の陽性患者の検査を行った。残りの7例は他都県において検査が実施された。当所の検査は国立感染症研究所の病原体検出マニュアルに従い検査を行った。咽頭拭い液、尿、末梢血単核球、血清からRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR法によるN遺伝子の検出を以て陽性とした。判定保留例はコンベンショナルPCR法とダイレクトシークエンス法によりNならびにH遺伝子の検出を行い、シークエンスの確認を以て陽性とした。検査した53例中50例については、N遺伝子のシークエンスを解析することができ、50例全て塩基配列が一致し、遺伝子型はD8であることを確認した。県外で検査が行われた患者は、麻しんウイルス遺伝子陽性であり、遺伝子型はD8との情報を得た。

地研の対応:
県内の各保健所より依頼があった137名の434検体について検査をおこない、53名の117検体において陽性と判断した。検体受け入れ当日にリアルタイムRT-PCR検査の結果を報告できるように、休日中の対応を含め人員体制を整えた。

行政の対応:
保健所による患者および接触者調査が行われ、健康観察対象者は約3700名、調査対象施設は約70箇所であった。また、県外へすでに移動している接触者445名について、延べ201の自治体へ情報提供と健康観察依頼を行った。
接触者に対する緊急ワクチン、医療機関スタッフの感染防止、それぞれの目的で麻しん含有ワクチン144本、906本の計1050本を用意し、優先順位に基づいて接種を実施した。
県民への情報提供として、患者発生状況と注意喚起のプレスリリース(24報)およびホームページへの掲載をおこなった。加えて、関係機関によるチラシ配布、市町報による注意喚起をおこなった。
麻しん患者発生対策連絡会議ならびに関係機関への直接の通知により情報共有を図った。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:
国立感染症研究所感染症疫学センターから麻しん対策支援チームが派遣され、行政側対応の面でアドバイスを受けた。検出した麻しんウイルスN遺伝子の塩基配列について当所より国立感染症研究所に情報提供を行った。

事例の教訓・反省:
一部の医療機関(消防含む)において、職員の罹患歴・ワクチン接種歴等が把握されていなかった。医療従事者に加え、学校等へも従事者の罹患歴を把握する等の対応を要請した。
感染拡大防止にワクチン接種が重要であることが再認識された事案であり、今後も広く周知していく必要がある。
感染拡大防止の観点から一部施設の名称を公表したところ、風評被害と思われる事案が発生し、情報提供のあり方に課題が残った。

現在の状況:
検査手技は所内のマニュアルにより、担当者が容易に再現可能な状況である。平常時でも麻しんを疑う症例が発生した場合に、すぐ検査を実施できる環境を整えている。

今後の課題:
麻しんアウトブレイクの発生状況、遺伝子検査の結果について、論文化して報告することを予定している。血清学的検査をおこない、病型、予防接種歴との相関を詳細に解明する必要がある。

問題点:

関連資料:
・衛生研究所・保健所 麻しん対策担当者会議資料(平成29年6月2日、於:県庁)
・麻しん対策会議資料(平成29年8月3日、於:県庁)