ゴールデンウィークの海外旅行では感染症に注意しましょう!

参照元URL : http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=231433

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海外へ渡航されるみなさまへ

ゴールデンウィークには海外へ渡航される方が多くなります。海外滞在中に感染症にかかることなく、安全で快適に旅行し、帰国することができるように、海外で注意すべき感染症及びその予防対策をお知らせします。

海外での感染症予防のポイント

  • 海外で感染症にかからないようにするために、感染症に対する正しい知識と予防に関する方法を身に付けましょう。【一覧】海外で注意しなければいけない感染症 [104KB]
  • 渡航先や渡航先での行動によって異なりますが、最も感染の可能性が高いのは食べ物や水を介した消化器系の感染症です。
  • 日本で発生していない、動物や蚊・マダニなどが媒介する病気が海外では流行していることがあり、注意が必要です。
  • 世界保健機関(WHO)が排除又は根絶を目指している麻しん(はしか)、風しん(三日はしか)及びポリオは、日本での患者は減少傾向又は発生していないものの、海外では感染することがあり注意が必要です。これらの感染症についても紹介します。

渡航の前に・・・

  • 検疫所のホームページや外務省の海外安全ホームページで、渡航先の感染症の発生状況に関する最新の情報や注意事項を確認しましょう。
  • 海外渡航をする前に、これまで受けた予防接種について確認しましょう。国内の感染症を海外に持ち出さない、又は海外の感染症を国内に持ち込まないために、国内で予防接種が推奨される疾患であって予防対策が不十分なものがあれば、予防接種を検討しましょう。
  • 予防接種が受けられる感染症については、余裕をもって医師にワクチン接種の相談をしておくなど、適切な感染予防を心がけましょう。
  • 渡航が決まったら、外務省が提供している海外安全情報配信サービス「たびレジ 」への登録をお願い致します。「たびレジ」に渡航期間・滞在先・連絡先等を登録すると、渡航先の最新の安全情報がメールで届き、緊急時には在外公館からの連絡を受け取ることができます。また、3か月以上滞在する場合は必ず在留届 を提出してください。

渡航中及び帰国後に体調が悪くなったら

  • 空港や港に設置されている検疫所では、渡航者の方を対象に健康相談を行っています。帰国時に発熱や咳、下痢、具合が悪いなど体調に不安がある場合、又は、動物に咬まれたり、蚊に刺されたなど健康上心配なことがありましたら、お気軽に検疫官までご相談ください。
  • 感染症には、潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)が数日から1週間以上と長いものもあり、帰国後しばらくしてから具合が悪くなることがあります。その際は、早急に医療機関を受診し、渡航先、滞在期間、現地での飲食状況、渡航先での職歴や活動内容、動物との接触の有無、ワクチン接種歴などについて必ず伝えてください。
  • その他不安な点は、最寄りの保健所にお問い合わせください。

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海外で注意すべき感染症

1.蚊やマダニなどが媒介する感染症

(1) マラリア
(2) デング熱、デング出血熱
(3) ジカウイルス感染症
(4) チクングニア熱
(5) 黄熱
(6) ウエストナイル熱・ウエストナイル脳炎
(7) クリミア・コンゴ出血熱

2.動物からうつる感染症

(1) 鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)
(2) 狂犬病
(3) エボラ出血熱
(4) 中東呼吸器症候群(MERS:マーズ)
(5) マールブルグ病

3.諸外国での感染に注意すべき感染症

(1) 麻しん(はしか)
(2) 風しん(三日はしか)
(3) ポリオ

4.そのほか注意すべき感染症

1.蚊やマダニなどが媒介する感染症

渡航先や渡航先での行動によって、感染する可能性のある感染症は大きく異なりますが、蚊を媒介した感染症が世界的に多く報告されています。特に熱帯・亜熱帯地域ではマラリア、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症などに注意が必要です。
蚊に刺されたり、マダニに咬まれたりすることなどによる感染症を防止するためにも、野外活動の際には、長袖・長ズボンを着用する、素足でのサンダル履き等は避ける、虫除け剤を使用するなど注意をしましょう。

(1) マラリア

発生地域 アジア、中南米、アフリカなど熱帯・亜熱帯地域に広く分布。なお、近年、マラリア制圧に成功していた、韓国(北部が中心)でも、国内感染例が確認されている。
感染経路 マラリア原虫を保有した蚊(ハマダラカ)に吸血された際に感染する。ハマダラカは、夕方から夜間に出没する傾向がある。都市部での感染リスクは、アフリカやインド大陸を除き減っている。
主な症状 マラリア原虫の種類により異なるが、7日以上の潜伏期ののち、寒け、発熱、息苦しさ、結膜充血、嘔吐、頭痛、筋肉痛など。迅速かつ適切に対処しなければ重症化し、死亡する危険がある。
感染予防 長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤や蚊帳等の使用により蚊に刺されないように注意する。特に、夜間の屋外での飲食や外出時に注意する。2週間以上流行地に滞在し、野外作業等に従事する場合は、抗マラリア薬(国内で承認されている予防薬は「メファキン「ヒサミツ」錠275®」と「マラロン配合錠®」がある)の予防内服を行うことが望ましいとされている。

毎年世界中で約2億人の患者が発生し、約43万人以上の死亡者がいると報告されています。海外で感染して帰国された方(輸入症例)が、2015年は41例、2016年は54例報告されています。

(2) デング熱、デング出血熱

発生地域 アジア、中南米、アフリカなど熱帯・亜熱帯地域に広く分布。
感染経路 ウイルスを保有する蚊(ヤブカ類)に吸血された際に感染する。
主な症状 2〜14日(多くは3〜7日)の潜伏期ののち、突然の発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹など。デング熱患者の一部は重症化してデング出血熱やデングショック症候群を発症することがある。
感染予防 長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。媒介蚊は日中、都市部の建物内外に生息しているので、屋外だけではなく屋内でも虫除け剤の使用等によって、蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

世界中で毎年約5,000万〜1億人の患者が発生していると考えられています。
2017年3月現在、昨年同時期に比べて中国、マレーシア、フィリピン、カンボジアなどで患者報告が増加しています。本年1月には、マレーシアでデング熱に感染した邦人がその後死亡する事例が発生したほか、昨年7月には、フィリピンから帰国した方がデング出血熱を発症し、死亡する事例も発生しています。最近ではイエメン、インド、パナマ等で流行が報告され、台湾やハワイにおいても患者報告が増加しています。流行地では蚊に刺されないように注意することが大切です。日本では、流行地から日本へのデング熱輸入症例は、2014年、2015年、2016年にそれぞれ179例、292例、338例が報告されています。また、2014年には東京で流行しましたが(患者数162例)、その後国内流行は確認されていません。

(3) ジカウイルス感染症

発生地域 アフリカ、東南アジアや南アジア、カリブ海諸国、アメリカ大陸、太平洋島嶼国の熱帯・亜熱帯地域で流行している。
感染経路 ウイルスを保有する蚊(ヤブカ類)に吸血された際に感染する。
主な症状 潜伏期間は2〜12日(多くは2〜7日)である。症状は発熱(多くは38.5度以下)、発疹、関節痛等で、これらの症状はデング熱やチクングニア熱との症状と区別がつかない。ただし、一般的にデング熱やチクングニア熱と比べると症状は軽いと言われている。デング熱やチクングニア熱と同様に、ウイルスに感染しても症状がないこともある。多くの場合軽症で治癒する。
感染予防 長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。媒介蚊は日中、都市部の建物内外に生息しているので、屋外だけではなく屋内でも虫除け剤の使用等によって蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

ジカウイルス感染症にはジカウイルスに感染したときに発熱・発疹症状を呈するジカウイルス病と、女性が妊娠しているときにジカウイルスに感染した時に胎内で赤ちゃんがジカウイルスに感染することにより病気になる先天性ジカウイルス感染症が含まれます。
ジカウイルス病は、ジカウイルスに感染することにより起こる感染症で、その症状は発熱、関節痛、発疹などです。一般的に症状は軽く治癒します。先天性ジカウイルス感染症について説明します。女性が妊娠中にジカウイルスに感染した場合、母体から胎内で赤ちゃん(胎児)がジカウイルスに感染(垂直感染)し、小頭症などの先天性障害を起こすことがあります。これを先天性ジカウイルス感染症といいます。
ジカウイルス感染症は、アジアとアフリカの熱帯・亜熱帯地域で流行していましたが、2015年から、中南米の熱帯・亜熱帯地域で流行し始めました。媒介蚊はヤブカ類です。日本では、2016年に、12例の輸入症例が報告されています。感染予防には、長袖・長ズボンの着用、虫除け剤を使用するなどして、蚊に刺されないようにすることが大切です。
妊娠している、又は、妊娠している可能性がある方は、流行地域への渡航を控えることが推奨されます。また、ジカウイルスに感染した男性から性行為により女性パートナーがジカウイルスに感染した事例が報告されています。性行為による感染のリスクを考慮し流行地域に滞在中は性行為の際に、適切にコンドームを使用するなどの配慮が推奨されます。また流行地域から帰国した方は、症状の有無にかかわらず、少なくとも6か月、パートナーが妊娠している場合は妊娠期間中、性行為の際に、適切にコンドームを使用するなどの配慮が推奨されます。
なお、世界保健機関(WHO)は2016年11月18日に開催されたジカウイルス感染症及び神経疾患と先天性異常の増加に関する国際保健規則(IHR2005)緊急委員会に基づき、国際的な脅威に対する公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)の終息を宣言しました。しかし、これはジカウイルス感染症の流行が完全に終息したことによるものではなく、引き続きジカウイルスへの感染には注意が必要です。

(4) チクングニア熱

発生地域 アフリカ、東南アジア(フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、シンガポール、カンボジアなど)、インド、パキスタン、インド洋島嶼(しょ)国(スリランカやモルディブなど)、マダガスカル。その他、2007年にイタリア、2010年にフランス、2013年にはカリブ海諸国で流行。2014年には米国フロリダ州で地域流行が発生し、中南米でも流行した。世界中の熱帯・亜熱帯地域で流行している。
感染経路 ウイルスを保有する蚊(ヤブカ類)に吸血された際に感染する。
主な症状 2〜12日(通常4〜8日)の潜伏期ののち、突然の発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹など。関節痛は急性症状消失後も数か月続くことがある。
感染予防 長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。媒介蚊は日中、都市部の建物内外に生息しているので、屋外だけではなく屋内でも、虫除け剤の使用等によって蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

アフリカ、東南アジア、南アジアの熱帯・亜熱帯地域で流行があり、2006年にはインドで約140万人の患者が報告されています。2013年には中南米の熱帯・亜熱帯地域で流行し始め、現在では、世界中の熱帯・亜熱帯地域で流行しています。
日本での輸入症例は、2015年と2016年に、それぞれ17例、13例報告されています。

(5) 黄熱

発生地域 サハラ砂漠以南のアフリカ、中南米地域
感染経路 ウイルスを保有する蚊(ヤブカ類)に吸血された際に感染する。主な媒介蚊はネッタイシマカである。
主な症状 3 〜6日の潜伏期ののち、主として発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、背部痛、悪心・嘔吐などの症状が出現する。黄熱患者の一部は重症化して、ショックや多臓器不全に至る場合がある。
感染予防 長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。媒介蚊は日中、都市部の建物内外に生息しているので、屋外だけではなく屋内でも虫除け剤の使用等によって蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

日本では、輸入症例を含め、患者の報告はありません。アメリカ合衆国とヨーロッパでは、1970年〜2013年の間で10例の輸入症例が報告されています。2016年にはアフリカ(アンゴラとコンゴ民主共和国)で比較的大きな流行が発生しました。また、2017年1月以降、ブラジルで黄熱が流行しています。世界保健機関(WHO)により、ブラジルは黄熱に感染する危険のある国とされており、大西洋沿岸の一部地域を除く地域(内陸部全域)が黄熱ワクチン接種推奨地域に指定されています。また、黄熱の予防接種証明書(イエローカード)を携帯していないと入国できない国や、複数の国を渡航する場合に予防接種証明書の提示を求める国がありますので、渡航先の在外公館から最新の情報を確認してください。

(6) ウエストナイル熱・ウエストナイル脳炎

発生地域 アフリカ、ヨーロッパ南部、中央アジア、西アジア、近年では北米地域、中南米、ロシアにも拡大している。
感染経路 ウイルスを保有する蚊(主にイエカ類)に吸血された際に感染する。媒介する蚊は多種類に及ぶ。
主な症状 2〜14日(通常1〜6日)の潜伏期ののち、発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、背部痛、発疹などの症状が出現する。感染者の一部は脳炎を発症する。
感染予防 長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤の使用等によって、屋外のみならず屋内でも蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

ウエストナイル熱は、ウエストナイルウイルスに感染することによる熱性疾患です。このウイルスは、鳥と蚊の間で維持されています。ウエストナイルウイルスを保有する蚊に吸血された際に感染します。北米地域だけで例年数千人の患者が報告されています。北米地域での流行は、例年蚊の活動が活発になる7月頃から始まります。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると米国では2017年は1月17日時点で患者数2038名(うち死亡者94名)が報告されています。

(7) クリミア・コンゴ出血熱

発生地域 中国西部、東南アジア、中央アジア、中東、ヨーロッパ、アフリカ。
感染経路 ウイルスを保有するマダニに咬まれたり、感染動物(特にヒツジなどの家畜)と接触したりして感染する。
主な症状 2〜9日の潜伏期ののち、発熱、関節痛、発疹、紫斑(出血)、意識障害など。
感染予防 長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。また、家畜などにむやみに触れない。

クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによる感染症です。このウイルスは、哺乳動物とマダニの間で維持されていますが、ヒトはウイルスを有するマダニに咬まれたり、ヒツジなどの家畜を解体する作業中に血液に触れたりした場合に感染します。患者体液との直接的接触でも感染することがあります。このウイルスに感染すると発熱、関節痛、発疹などの書上に加えて出血症状や意識障害などの症状を呈することがあります。死亡率の高い感染症で、特に、中央アジアや中東(トルコを含む)では毎年患者が発生しています。最近ではスペインで患者が報告されました。

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2.動物からうつる感染症

現在、日本での発生はなく海外で発生している、人に重篤な症状を起こす感染症について紹介します。野生動物や家畜はどのような病原体を持っているか分からないことが多く、重篤な感染症の病原体を持っている可能性もあります。海外では、むやみに動物に触れることはやめましょう。

(1) 鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)

発生地域 H5N1は、東南アジアを中心に、アフリカの一部地域など。H7N9は、中国。
感染経路 感染した家きんやその臓器、体液、糞などとの濃厚な接触。
主な症状 1〜10日(多くは2〜5日)の潜伏期間ののち、発熱、呼吸器症状、下痢、多臓器不全など。
感染予防 家きんとの接触を避け、むやみに触らない。生きたニワトリやアヒルなどが売られている市場や養鶏場に近寄らない。手洗い等の実施(特に発生国では徹底する)。

鳥インフルエンザ(H5N1)は、人が感染した場合には、重篤な症状となることが多く、世界保健機関(WHO)によると、2003年11月から2017年2月16日までに世界16か国で856人(死亡者452人)の発症者が報告されています。昨年はエジプトで患者が10名確認されています。
また、鳥インフルエンザ(H7N9)は、2013年3月末から、中国で発生しています。2017年2月22日までの患者数は1223人(うち死亡者は少なくとも380人)です。H5N1、H7N9いずれについても、多くの患者が直接的又は間接的に家きん等との接触があったことが報告されていますが、適切に加熱調理された食品を食べて感染することはありません。

(2) 狂犬病

発生地域 世界のほとんどの地域。特にアジア、アフリカ。
感染要因 動物(アジアでは特に犬)に咬まれること。アメリカ大陸ではコウモリに咬まれて狂犬病ウイルスに感染し、狂犬病を発症して死亡する事例が報告されている。なお、北米ではアライグマ、スカンク、キツネ等、東ヨーロッパでは、キツネ、タヌキ等、アフリカではジャッカル、マングース等、韓国ではタヌキ、中国と台湾ではイタチアナグマの野生動物で狂犬病が流行しており、注意が必要である。
主な症状 通常、1〜3か月の潜伏期間ののち、発熱、咬まれた場所の知覚異常が現れる。恐水、恐風症状などの特徴的な症状の他に、神経症状(不安発作、嚥下困難(飲食物が飲み込みにくくなる)、けいれん)が見られる。有効な治療方法はなく、ほぼ100%死に至る。
感染予防 犬等(猫、野生動物を含む。特に飼い主の分からない動物。)にむやみに近付かない(特に小さなお子さんを動物のそばで一人にさせない)。もし犬等に咬まれたり引っかかれたりした場合は、傷口を石けんと水でよく洗い、速やかに医療機関を受診し、適切な処置を受けた上で、狂犬病ワクチンの接種について医師に相談する。狂犬病発生地域(アジア、アフリカ等)に渡航し、動物と頻繁に接触する場合や地方(農村部等)で野外活動を行う場合は、渡航前に狂犬病ワクチンの接種を受けておく。

狂犬病は、狂犬病ウイルスによる感染症です。人は、狂犬病ウイルスに感染した動物(アジアでは主として犬)に咬まれることによって唾液に含まれるウイルスに感染し、長い潜伏期の後に発症します。発症してしまうと有効な治療法はなく、ほぼ100%死に至ります。狂犬病はごく限られた国と地域を除いて、世界中で発生しており、死者数は毎年6万人以上といわれています。ただし、感染動物に咬まれた直後に狂犬病ワクチンの連続接種を開始することで、多くの場合発症を防ぐことができます。狂犬病発生地域では、動物(野良犬や野生動物等)との接触機会が増えれば増えるほど感染のリスクが高まります。日本では、2006年にフィリピンで犬に咬まれて、狂犬病ワクチン接種を受けることなく帰国した2人が、狂犬病を発症して亡くなった事例が報告されています。
2008年11月以降、それまで狂犬病が発生していなかったバリ島(インドネシア)において、犬の間で狂犬病が発生し、住民が狂犬病を発症した犬に咬まれて、多数死亡しています。
2013年7月には、1961年を最後に狂犬病の発生が報告されていなかった台湾で、狂犬病にかかったイタチアナグマが見つかり、調査の結果、野生動物であるイタチアナグマで狂犬病の流行が明らかとなりました。イタチアナグマの狂犬病は現在も継続しています。
狂犬病は予防のできる感染症です。狂犬病発生地域で犬や野生動物に接する機会がある場合には、渡航前にワクチンを接種しておくことが望まれます。渡航先で、犬などの動物に咬まれたら、すぐに傷口を石けんと水でよく洗い、できるだけ早く現地の医療機関を受診し、傷口の消毒と狂犬病ワクチン接種の必要性について相談しましょう。万が一、狂犬病に感染した恐れのある場合は帰国時に検疫所にご相談ください。

(3) エボラ出血熱

発生地域 アフリカ(中央部〜西部)。
感染経路 自然宿主はオオコウモリとされている。エボラ出血熱患者に接触して感染する場合が最も多い(院内感染など)。感染したサルなどの動物の血液、分泌物、排泄物、唾液などとの接触でも感染する可能性もある。また流行地域の洞窟に入ることは感染リスクの1つである。
主な症状 2〜21日の潜伏期ののち、発熱、頭痛、下痢、筋肉痛、吐血、下血など。インフルエンザ、チフス、赤痢等と似た症状を示す。
感染予防 流行している地域への旅行を控える。野生動物や患者に直接触れない。洞窟に入らない。

発熱、頭痛、消化器症状などの感染症状に加えて、出血症状を呈する重篤な感染症です。エボラ出血熱の流行は、現在までアフリカ中央部のコンゴ民主共和国、スーダン、ウガンダ、ガボンやアフリカ西部のギニア、リベリア、シエラレオネ、マリ、ナイジェリア、コートジボワールで発生しています。2014年3月以降、ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリ、ナイジェリアでエボラ出血熱の大規模流行が発生しました。2015年末までに全ての国で流行は終息しました。現地時間2016年3月29日付で、WHOで緊急委員会が開催され、西アフリカにおけるエボラ出血熱に関する「PHEIC(国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態)」について議論された結果、2014年8月から宣言されていたPHEICが解除されました。

(4) 中東呼吸器症候群(MERS:マーズ)

発生地域 中東のサウジアラビアを中心に、アラブ首長国連邦、ヨルダン、カタール、オマーン、クウェート等で発生が報告されている。また、中東以外の地域(フランス、ドイツ、イタリア、英国、オランダ、スペイン、オーストリア、チュニジア、マレーシア、米国、韓国、中国、タイ、フィリピン)でも中東に渡航して感染した人やその感染者に接触したことにより感染した人が報告されている。
感染経路 中東のヒトコブラクダがMERSコロナウイルスを保有している。特に子どものヒトコブラクダは高濃度のウイルスを保有している。そのため、ラクダとの接触や未殺菌乳の喫食が感染リスクである。またヒトからヒトへの感染は医療機関や家族において、濃厚接触によって起こる。咳による飛沫により感染すると考えられる。
主な症状 発熱、咳などの急性呼吸器症状、下痢等の消化器症状。
感染予防 一般的な衛生対策を心がける。(手洗い等の実施。未殺菌の乳や生肉など加熱不十分な食品を避ける。咳やくしゃみなどの症状を示している人やヒトコブラクダなど、動物との接触をできる限り避ける。)特に糖尿病や心臓病等の慢性的な病気の患者や、高齢者は、中東で病院に行くことやラクダに乗ることをできる限り避けるべきである。

2012年9月から2017年2月10日までに、世界保健機関(WHO)に報告されたMERSコロナウイルスに感染したと確定された患者は1,905人で、このうち677人が死亡しています。
中東諸国においてラクダとの接触や未殺菌乳を喫食した場合などMERS に感染するリスクのある行動をとった方は、帰国時に、到着した空港等の検疫ブースで検疫官に申し出てください。中東地域に渡航する際は、ラクダとの接触を避けるようお願いします。帰国後2週間以内に上記の症状が見られた場合には、一般の医療機関には受診せず、直ちに最寄りの保健所に連絡するようお願いします。

(5) マールブルグ病

発生地域 サハラ以南のアフリカ。
感染経路 自然宿主はオオコウモリである。洞窟内でコウモリの排泄物などに含まれるウイルスを吸い込むことにより感染することがある。感染したサルなどの動物の血液、分泌物、排泄物、唾液などとの接触でも感染する可能性がある。流行地域ではマールブルグ病患者に接触して感染する場合が最も多い(院内感染など)。
主な症状 2〜21日の潜伏期ののち、初期には発熱、頭痛、悪寒、下痢、筋肉痛など。その後、体表に斑状発疹、嘔吐、腹痛、下痢、出血傾向。
感染予防 流行地への旅行を控える。野生動物や患者に直接触れない。洞窟に入らない。

マールブルグ病はエボラ出血熱と同様に、発熱などの症状に加えて出血症状を呈する重篤な感染症です。これまで、アフリカのケニア、ジンバブエ、コンゴ民主共和国、アンゴラ、ウガンダで流行が確認されています。2008年には、オランダと米国からの旅行者が、ウガンダの洞窟に入って、それぞれ帰国後にマールブルグ病を発症・死亡した例が報告されています。2014年にもウガンダで1例患者の報告がありました。

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3.諸外国での感染に注意すべき感染症

世界では世界保健機関(WHO)を中心に、麻しん、風しん及びポリオについて、具体的な排除・根絶の目標を設定し、感染者の減少のための対策に取り組んでいます。
日本国内の麻しん及び風しんの流行状況は、2015年においては、それぞれ35例、162例の報告があります。2016年はそれぞれ159例、125例の報告があります。
ポリオは、30年近くにわたり、日本国内で野生株によるポリオ症例は発生していませんが、アフリカや中東では流行が報告されています。
また、2015年から2016年にかけて西アフリカでラッサ熱と呼ばれる危険性が高いウイルス性出血熱患者がとても多く発生しています。ネズミの尿などの排泄物にウイルスが含まれており、感染源となります。ドイツなどで輸入感染事例が報告されています。
これらの疾患については、流行地からの輸入症例に留意する必要があります。

(1) 麻しん(はしか)

発生地域 麻しんは特に感染力が強く、世界中で発生の報告がみられる。2014年には全世界で約27万人の報告があり、日本が所属する西太平洋地域では、2015年に約4万5千人の報告があり、2016年5月時点において、モンゴル、中国、マレーシアで麻しんの罹患率が高い(100万人当たり10人以上の感染者数)。その他、アフリカ、南アジア、欧州などの予防接種率の低い国では依然として患者数が多い。なお、2015年3月には、世界保健機関(WHO)西太平洋事務局から、日本は国内で持続的な流行がみられていない麻しんの排除状態にあることが認定されており、輸入感染を予防し、仮に発症した場合にも、早期に発見し対策をとること等により、排除状態を維持することが重要である。
感染経路 空気感染、飛沫感染、接触感染。
主な症状 10〜12日の潜伏期間ののち、発熱、咳、鼻水、目の充血・目やになどが2〜3日続いた後、39℃以上の高熱と全身に発疹が出る。発熱は4〜7日続き、発疹は顔や首から出現し、徐々に胴体及び手足に広がって、5〜6日続いた後に消える。また、肺炎、中耳炎、脳炎が起こる場合もある。
感染予防 国内の排除状態を維持するために、そして海外から麻しんを持ち込まないために、事前の予防対策が重要。感染予防には、予防接種が有効であり、海外では、麻しんだけでなく、風しんも同時に流行しているので、ワクチン接種を受けていない場合には、麻しん風しん混合ワクチンの接種が勧められる。(定期予防接種は1歳から2歳未満に1回目の予防接種を受け、小学校入学前1年間の間に2回目の予防接種を受ける。)

2015年には世界中で年間約13万4200人(毎日367人、毎時間15人)の麻しんによる死亡者がいると推計され、その多くは5歳以下であると報告されています(WHOファクトシート2016年11月)。

(2) 風しん(三日はしか)

発生地域 風しんの排除宣言がされている南北アメリカ大陸の国等では輸入感染事例に限られるものの、世界中で風しんの発生報告がみられる。世界には風しんの定期予防接種がまだ導入されていない国や十分な風しんの調査体制が整備されていない国も多い。日本が所属する西太平洋地域では、2015年には9,383例の感染報告があり、その多くの報告は中国から(8,245例)であり、次いでベトナム(862例)、フィリピン(154例)であった(2016年10月時点)。その他、アフリカ、東南アジアなどの予防接種率の低い国では依然として風しんの患者数が多い。
感染経路 飛沫感染、接触感染。
主な症状 感染から14〜21日の潜伏期間の後、発熱、発疹、リンパ節腫脹(耳介後部、後頸部)が出現するが、発熱は風しん患者の約半数にみられる程度であり、不顕性感染が15〜30%程度存在する。基本的には予後良好な疾患であるが、まれに血小板減少性紫斑病や急性脳炎などをきたすことがある。また、感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が感染したことにより、風しんウイルスが胎児に感染し、先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風しん症候群が生じることがある。
感染予防 予防接種が有効。海外では、風しんだけでなく、麻しんも同時に流行しているので、ワクチン接種を受けていない場合には麻しん風しん混合ワクチンの接種が勧められる。(定期予防接種は1歳から2歳未満に1回目の予防接種を受け、小学校入学前1年間の間に2回目の予防接種を受ける。)

世界保健機関(WHO)によると年間約10万人の先天性風しん症候群が発症していると推計されています(WHO Rubella Fact sheet 2016年3月)。


(3) ポリオ

発生地域 ポリオ流行国は、パキスタン、アフガニスタン及びナイジェリアの3か国であり、2016年には37例(2017年は2月28日現在で3例)が報告された。2015年には、上記の2か国のほかに、ナイジェリア、ギニア、マダガスカル、ウクライナ、ラオス及びミャンマーの6か国で32例のワクチン由来ポリオウイルスによる感染症例が発生したが、2016年1月のラオスでの症例以降、ワクチン由来ポリオウイルス伝播によるポリオ症例は報告されていない。世界保健機関(WHO)は、2014年5月5日、ポリオの発生状況が「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC:Public Health Emergency of International Concern)」に該当すると発表しており、2016年11月11日には、引き続きPHEICに該当するとしている。
感染経路 経口感染(感染者の糞便中に排泄されたウイルスが、口から体内に入る)。
主な症状 感染した人の多くは症状が出ずに経過するが、典型的な麻痺型ポリオを発症する事例では、発熱等かぜのような症状が1〜10日続いて、手足に非対称性の弛緩性麻痺(だらんとした麻痺)が起こる。
感染予防 予防接種が発症予防に有効。十分に加熱がされていない物の飲食は避ける。手洗いを十分に実施する。ポリオが発生している上記の国に渡航する場合は、追加の予防接種を検討する。

2016年11月11日には、野生型ポリオウイルス伝播の国際的拡大に関する世界保健機関(WHO)の声明が改訂されています。
WHOは、ポリオの発生状況が引き続きPHEICに該当するとし、発生国に対し、予防接種の徹底や国境管理の強化など、ポリオの根絶に向けた努力を引き続き求めています。パキスタンでは2016年2月1日、アフガニスタンでは2015年6月6日を最後に、野生型ポリオウイルスの輸出例は報告されていません。一方で、ナイジェリアでは、2016年8月以降、野生型ポリオウイルスによる急性弛緩性麻痺症例4例が報告され、2014年以降初めて、新たな感染者の報告がありました。WHOは、周辺国カメルーン、チャド及びニジェールでも感染が拡大するリスクがあるとの懸念を示しています。
WHOからの声明は、ポリオが流行している地域から他の地域へポリオを持ち出さないことを目的としており、日本から他国へ出国する際に予防接種を求めるものではありません。しかし、旅行等でポリオ流行地域へ渡航後、出国時に上記のように予防接種証明書の提示を求められることがあります。必要に応じて下記の検疫所ホームページでも情報提供を行っておりますが、ポリオ流行地域へ渡航される際には、十分な確認をお願いします。

4.そのほか注意すべき感染症

水や食べ物から感染する消化器系の感染症はA型肝炎、E型肝炎、コレラ、赤痢、腸チフスなど数多く存在しますが、開発途上国など公衆衛生の整備が不十分な地域では感染するリスクがより高いので、以下のことに注意しましょう。その他、生鮮魚介類や生肉等を介した寄生虫疾患も注意が必要です。

手洗いをこまめにしましょう 食事の前には必ず石けんと水で手を洗いましょう。きれいな水が使えない場合は手洗い後にアルコール成分を含む衛生用品の利用が効果的です。
生水を飲まないようにしましょう 未開封の市販の飲料水が最も安全です。水道水は、しっかりと沸騰させてから飲みましょう。水を沸騰させることができない場合には、飲料水消毒用薬剤を使用してください。
氷を避けるようにしましょう 屋台や不衛生な飲食店で提供される氷は、病原体に汚染されていることがあるので注意しましょう。自分で氷を作る場合は、未開封の市販の飲料水を使用しましょう。
完全に火の通った食べ物を食べましょう 生鮮魚介類や生肉などは食べずに、十分に加熱された物を食べましょう。
加熱料理された料理であっても何時間も室温で保管されていると、病原体が増えてしまいます。屋台や不衛生な飲食店では、作り置きされている料理が出されることがあるので注意しましょう。
サラダや生の野菜は避けましょう 野菜類は生水を用いて処理されている場合など、病原体に汚染されていることがあります。野菜やフルーツなどは、自分で皮をむいたものを食べましょう。

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海外の感染症に関する情報


出発前に渡航先の感染症の流行状況等に関する情報を入手しておくことが大切です。厚生労働省検疫所及び外務省では、ホームページで各国の感染症や安全に関する情報を提供しています。また、空港や港の検疫所においても、リーフレット等を用意し情報提供を行っていますので、積極的にご活用ください。

感染症に関するホームページ

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