重症熱性血小板減少症候群:SFTS(詳細)

病原体の特徴

ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規ウイルスSFTS virus(SFTSV)は、マダニが媒介するウイルスである。中国では患者の生活圏に生息するフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)およびオウシマダニ(Rhipicephalus microplus)からSFTSV遺伝子が検出されたことから、SFTSVの宿主はこれらのマダニと考えられている。ただし、日本のSFTS患者に付着していたマダニはフタトゲチマダニおよびタカサゴキララマダニ(Amblyomma testudinarium)であり、これらのマダニがヒトへの感染に関わっていると考えられる(図1)。日本分離株の遺伝子塩基配列を決定し、中国株のそれと系統樹学的に解析すると、日本株は中国株とは独立したクラスターを形成することから、日本株は中国株とは独立して進化を遂げているものと考えられる(図2)。

自然界においてはマダニと哺乳動物がSFTSVの宿主であり、マダニにおいては経卵性伝搬で成ダニから幼ダニに、また、マダニから哺乳動物にSFTSVが感染し、その感染動物からマダニがウイルスを獲得する。SFTSVの自然界における存在様式を図に示した(図3)。

主な臨床像

表1.発熱、消化器症状(吐気、嘔吐、腹痛、下痢等)の症状、および、中には吐血や歯肉出血等の出血所見が認められる。神経症状が認められる場合があり予後不良の兆候である。

各種症状およびその発生頻度(Am J Trop Med Hygiene 88:510-512, 2013参照)

症状 患者数(N = 16) 割合(%)
発熱 16 100
倦怠感 8 50
リンパ節腫脹 8 50
下痢 8 50
嘔吐 7 44
筋肉痛 7 44
めまい 5 31
嘔気 5 31
腹痛 4 25
関節痛 4 25
寒気 3 19
頭痛 3 19
腹部膨満 3 19
食欲不振 2 13

臨床検査所見

末梢血液検査で白血球減少および血小板減少が認められる。生化学検査でAST、ALT、LDHの上昇、尿検査では血尿および蛋白尿等が高頻度で認められる。重症例では骨髄検査により細胞低形成およびマクロファージの血球貪食像が認められることが多い。

表2.主要検査結果の出現頻度(Am J Trop Med Hygiene 88:510-512, 2013参照)

検査成績 患者数 (N = 16) 割合 (%)
ASTの上昇 15 94
白血球減少 (< 4,000/µl) 13 84
ALTの上昇 11 69
血小板減少 (< 15万/µl) 10 63

確定診断

急性期の血液からのVero細胞等を用いたウイルス分離および同定、または、RT-PCR法によるウイルス遺伝子の増幅が診断に欠かせない。また、急性期および回復期におけるSFTSVに対するIgG抗体の有意な上昇を確認する。国立感染症研究所ウイルス第一部および全国の地方衛生研究所においてRT-PCR法によるSFTSV遺伝子検査が実施できる体制が整備されている。また,感染研および一部の地衛研ではSFTSV感染細胞を抗原とした間接蛍光抗体法やSFTSV抗原を用いたIgG ELISA法による抗体測定法も整備されている。死亡例においては病理学的に所属リンパ節等の臓器にSFTSV抗原を組織免疫染色法で検出して診断することも可能である。SFTS疑い患者を診た場合には、所属地域の地方衛生研究所等に相談するとよい。

治療

特異的な治療法はない。対症療法が基本である。ヒトからヒトへ感染する事例も報告されている。その際、患者血液や体液との直接的接触で感染する。空気感染や飛沫感染はない。

予防(ワクチン)

ない。

バイオハザード対策

国立感染症研究所(感染研)では、SFTSVはBSL3に分類されている。

感染症法における取り扱い

また、日本における病原体等管理規制(感染症法)が改訂され、三種病原体に指定されている。三種病原体は、病原体等に応じた施設基準、保管、使用、運搬、滅菌等の基準(厚生労働省令)の遵守や厚生労働大臣等による報告徴収・立入検査の他、病原体を所持することになってから、SFTSVを所持するには入手してから7日以内に厚生労働大臣への届出(厚労省結核感染症課)や施設外にSFTSVを運搬する場合の公安委員会への事前の届出(感染症法第56条の16)が課されている。SFTSは感染症法においては四類感染症として対象疾病に指定された。今後、SFTS患者を診た医師は24時間以内に最寄りの保健所に届け出なければならない(感染症法第12条第1項)。

参考文献

1.Yu XJ, et al. Fever with thrombocytopenia associated with a novel bunyavirus in China. N. Engl. J. Med. 364:1523-1532, 2011.
2.Xu B, et al. Metagenomic analysis of fever, thrombocytopenia and leukopenia syndrome (FTLS) in Henan Province, China: discovery of a new bunyavirus. PLoS Pathogens 7: e1002369, 2011.
3.Gai, ZT, et al. Clinical Progress and Risk Factors for Death in Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome Patients. J Infect Dis 206:1095-1102, 2012.
4.Cui F, et al. Clinical and Epidemiological Study on Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome in Yiyuan County, Shandong Province, China. Am. J. Trop. Med. Hygiene 88:510-512, 2013
5.Takahashi T, et al. The First Identification and Retrospective Study of Severe Fever With Thrombocytopenia Syndrome in Japan. J. Infect. Dis. (in press, http://jid.oxfordjournals.org/content/early/2013/12/12/infdis.jit603.long)
6.感染症研究所ホームページ(http://www.nih.go.jp/niid/ja/component/content/article/2238-infectious-diseases/disease-based/sa/sfts/3143-sfts.html)