デング熱(詳細)

病原体の特徴

デングウイルスは、フラビウイルス科に属するウイルスで、1〜4 型まで 4 種類の異なる血清型が存在する。一度感染した血清型に対しては終生免疫を獲得するが、異なる血清型に対しての交差免疫は時間経過とともに消失するため、他の型に感染しうる。すなわちヒトは、最大で 4 回デングウイルスに感染することがありうる。また、2 回目以降の感染では、より重篤なデング出血熱を発症する危険性が増すことが知られている。本病原体は、主にネッタイシマカ(Aedes aegypti)やヒトスジシマカ(Aedes albopictus)に媒介することが知られている。2014 年の国内での流行では 2014 年 10 月 31 日までに東京都、千葉県、静岡県、兵庫県などで確定診断例だけで 160 人の渡航歴のない患者が発生した。ヒトスジシマカは沖縄から東北地方にかけて分布しており、2014 年の国内での流行においてもヒトスジシマカからウイルスが検出されている。

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主な臨床像

  1. デング熱
    蚊に刺されてから、通常4-7日の潜伏期(範囲;3-14日)を経て、突然の発熱で発症する。随伴症状として頭痛(眼窩痛を伴うことが多い)、関節痛、筋肉痛を認める。消化器症状や呼吸器症状も時に認められる。また、発症数日後に、体幹や上肢を中心に淡い紅斑を伴う (図1)。発熱は通常3-6日間持続し、後遺症を残さずに回復することが多い。一般的に臨床症状は、青年や成人と比較して、小児のほうが軽度である。
  2. デング出血熱
    デング熱を発症した1%程度に、出血傾向を伴うデング出血熱を発症する。本疾患は適切な治療が行われないと、死に至る疾患であるため、厳重な注意が必要である。デング出血熱は通常、発熱3-7日経過した解熱期に発症する。デング熱の症状に加えて、1. 持続する発熱、2. 出血症状の存在、3. 血小板減少(100,000/µL以下)、4. 血管透過性亢進を示唆する所見(胸腹水、低蛋白血症、低アルブミン血症など)を全て満たす場合に、デング出血熱と診断する。症状が重篤な場合、循環血液量減少性ショックを起こすことがあり、デングショック症候群とも呼ばれる。

デングウイルスは4つの型に分類され罹患した型に対しては終生免疫となるが、次に別の型に感染した場合にデング出血熱を発症する確率が高くなるといわれている。

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臨床検査所見

デング熱では、白血球減少や血小板減少が多く認められる。血小板が100,000/µL以下になる例は、16-55%と報告されている。また、軽度の肝酵素上昇(正常上限の2-5倍)を伴うことが多いが、時に著明に上昇(正常上限の5-15倍)することもある。

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確定診断

デング熱は、流行地域への渡航歴( 図2参照)、臨床症状や検査所見から疑い、病原体診断もしくは血清学的診断にて確定する。病原体診断では、ウイルス遺伝子を検出するRT-PCR法やウイルス分離がある。血清学的診断は、ELISA法によるIgM抗体の検出や、HI法によるペア血清でのIgG抗体価の上昇を検出する方法がある。いずれも国内では未承認であるが、迅速診断キットとして、イムノクロマト法による、NS-1 抗原、IgM、IgG の検出キットが海外で市販されている。

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治療

デング熱に対しての特異的な治療法は存在せず、解熱鎮痛剤や補液などの対症療法が中心となる。解熱鎮痛剤としては、アセトアミノフェンが推奨される。サリチル酸系薬剤や非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は出血傾向やアシドーシスを助長する可能性があり、禁忌である。デング出血熱やデングショックショック症候群は、血管透過性亢進により血管外に血漿漏出を起こすため、速やかに十分量の補液が重要である。バイタルサイン、水分バランス、血液データ(ヘマトクリット値、血小板数など)を注意深く観察し、全身管理が必要となる。

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予防

  • 肌を露出しないように、長袖・長ズボンを着用
  • 十分な蚊対策が施されている宿泊施設を利用
  • DEET(N,N – diethylmetatoluamide)を含有する昆虫忌避剤を使用
  • 蚊が繁殖するための場所(例;水がたまりやすい容器など)を排除

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バイオハザード対策

デングウイルスは、感染症法では四種病原体等に指定されている。四種病原体等では届け出は不要であるが、施設基準、保管、使用、運搬、滅菌等の基準の遵守が求められている。基準に対する違反が判明した場合には、改善命令や立入検査等が行われる。また、本ウイルスは、バイオセーフティレベル(BSL)2に指定されており、病原体等安全管理区域運営規則を遵守することが求められている。

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感染症法における取り扱い

デング熱は、感染症法では四類感染症に定められており、診断した医師はただちに最寄りの保健所に届ける必要がある。我が国における近年のデング熱患者報告者数を 図3に示す。報告基準は以下の通りである。

  • 診断した医師の判断により、症状や所見からデング熱が疑われ、かつ、以下のいずれかの方法によって病原体診断や血清学的診断がなされたものとされている。
    • 病原体の検出(例;血液などからのウイルス分離)
    • 病原体の遺伝子の検出(例;RT-PCR法など)
    • 病原体に対する抗体の検出(例;血清中のデングウイルス特異的IgM抗体の検出、ペア血清による抗体の陽転化もしくは4倍以上の上昇など)
  • 上記に基準に加えて、下記の4つの基準を全て満たした場合には、デング出血熱として報告する
    1. 臨床症状
      • 2-7日持続する発熱(時に2峰性のパターン)
    2. 血管透過性の亢進(以下の血漿漏出症状のうちの一つ以上)
      • ヘマトクリットの上昇(補液なしで同性、同年代の者に比べ20%以上の上昇)
      • ショック症状の存在
      • 血清蛋白の低下あるいは、胸水または腹水の存在
    3. 血小板の低下
      • 100,000/mm3以下
    4. 出血傾向
      • Tourniquetテスト陽性
      • 点状出血、斑状出血あるいは紫斑
      • 粘膜あるいは消化管出血、あるいは注射部位や他の部位からの出血
      • 血便

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参考文献

  1. CDC ホームページ: http://www.cdc.gov/Dengue/
  2. WHOホームページ: http://www.who.int/topics/dengue/en/
  3. 国立感染症研究所情報センターホームページ: http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html

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2012年07月15日 14時15分 改訂