レプトスピラ症(詳細)

病原体の特徴

レプトスピラ症とは、レプトスピラ属菌(Leptospira spp.)を原因とする人獣共通感染症である。レプトスピラは、スピロヘータ目に属する長さ6~20μm 、直径0.1μm のらせん状のグラム陰性桿菌である (図1)。微好気もしくは好気的な環境で生育し、中性あるいは弱アルカリ性の淡水中、湿った土壌中で数カ月は生存できる。

病原性レプトスピラは、保菌動物(主にげっ歯類)の腎臓に定着し尿中に排菌されるため、保菌動物の尿との直接的な接触、あるいは尿に汚染された水や土壌との接触により経皮的または経口的に感染する。ヒトからヒトへの感染は起こらない。我が国においては、1960年代中頃までは毎年100人以上の死亡者数が報告されていたが、衛生環境の向上などにより近年著しく減少している。しかしながら、感染症法に指定された2003年11月から2010年6月までの約7年間に、国内では沖縄県を中心に157例の報告がある1)。海外では東南アジア、中南米などでの流行が見られており、これらの流行地域からの輸入感染例も報告されるようになっている(図2)。全世界では、年間30~50万例のレプトスピラ症が発生していると推測されている2)。

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主な臨床像

レプトスピラ症は急性熱性疾患で、感冒様の軽症型から、黄疸、出血、腎不全を伴う重症型(ワイル病)までその臨床症状は多彩である。通常5 ~14 日間の潜伏期を経て、発熱(38〜40℃)、悪寒、頭痛、筋痛、腹痛、結膜充血などが生じ、重症型では第5 ~8病日頃より黄疸や出血傾向(皮下出血、鼻出血、肺出血など)が出現する3)。

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臨床検査所見

特異的な検査所見はないが、病状に応じてBUNの上昇、炎症所見、蛋白尿などがみられる。黄疸を生じた場合はビリルビン値が上昇するが、トランスアミナーゼは正常か軽度の上昇にとどまる場合が多い。

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確定診断

レプトスピラ症の病原体診断は、レプトスピラの分離培養(抗菌薬投与以前の発熱期の血液、髄液あるいは尿を用いてコルトフ培地あるいはEMJH培地などのレプトスピラ専用培地に接種する)、PCR法によるレプトスピラ遺伝子の検出、あるいは顕微鏡下凝集試験法(MAT)による抗体の検出(ペア血清による抗体陽転または抗体価の有意の上昇)により行われる。感染初期に、暗視野顕微鏡によって血液や尿から直接レプトスピラが観察される場合があり早期診断に有用であるが、感度は低く診断には習熟を要する。

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治療

静注用ペニシリンが第一選択役とされているが,セフトリアキソンやセフォタキシムも同等の効果がある4)。軽症者には,アモキシシリン,アンピシリン,ドキシサイクリン,エリスロマイシンなどが有効である。

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予防(ワクチン)

レプトスピラに感染している可能性のある動物や汚染された環境と接触する場合は、尿や血液、汚染された水や土壌との直接的な接触を最小限にすることが重要である。

国内では4つの血清型の不活化全菌体ワクチン「ワイル病秋やみ混合ワクチン」が製造されているが、現時点では入手不可能である5)。短期間の職業的ハイリスクグループに対してドキシサイクリン200㎎/週の内服は予防効果があることが報告されている 6)。

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感染症法における取り扱い

感染症法では四類感染症に定められており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る。

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参考文献

  1. 東京都感染症情報センター レプトスピラ症の発生状況(2010年6月16日更新)。http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/leptospirosis/lep.html
  2. Hartskeerl RA. Leptospirosis: current status and future trends. Indian J Med Microbiol. 24: 309, 2006
  3. 田島 剛、7.レプトスピラ症、小児科臨床, 62: 735-738, 2009.
  4. Suputtamongkol Y,et al. An open,randomized,controlled trial of penicillin, doxycycline,and cefotaxime for patients with severe leptospirosis.Clin Infect Dis 39:1417-1424,2004
  5. 小泉信夫、他 レプトスピラ症とは.IASR 29: 5-7,2008
  6. Takafuji ET,et al. An efficacy trial of doxycycline chemoprophylaxis against leptospirosis. N Engl J Med. 310:497-500, 1984

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2012年07月15日 15時00分 改訂