ロッキー山紅斑熱 – Rocky mountain spotted fever(詳細)

病原体の特徴

Rickettsia rickerrsiiによるリケッチア感染症で、ダニを媒介して感染する。おもに米国、カナダ西部、メキシコ、パナマ、コスタリカ、アルゼンチン、ブラジル、コロンビアに分布している。米国国内では、ノースカロライナ、サウスカロライナ、テネシー、オクラホマ、アーカンサスで半分以上を占めており、90-93%は4~9月に集中している。

▲TOP

主な臨床像

ロッキー山紅斑熱は軽症から重症まで症状が多彩である。潜伏期間は平均で7日(2-14日)であり、病初期の症状は他のリケッチア感染症と同様、特異的な症状がなく診断が難しい。病歴上、ダニ咬傷は重要であるが、発病2週間以内にダニ咬傷のエピソードは60%で認められるのみであったという報告もある。病初期3日間でロッキー山紅斑熱古典的三徴とされる、発熱、頭痛、発疹が認められるのでは約3%にすぎないという報告もあり、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛、食欲不振、嘔気・嘔吐、腹痛、羞明などがある。特に頭痛の程度は強く、しばしば”これまでで経験したことがないような頭痛”と表現されることもある。ダニ咬傷から2週間で先にあげた古典的3徴は60-70%で認められる。特に発疹は典型的には、発熱から2-5日遅れて認められ、発疹は四肢に出現し、その後体幹へと広がる。ただし、9-12%で発疹は認められない。他の紅斑熱リケッチア症で見られる特徴的な刺し口Escharは稀である。一般的には、手掌、足底には発疹を認めないため、この部位に発疹を認めた場合は他の疾患の可能性が高い。鑑別疾患としては、腸チフス、エーリキア症、その他のリケッチア感染症、髄膜炎菌感染症、血栓性血小板減少性紫斑病、レプトスピラ症、デング熱、伝染性単核球症、敗血症などがあげられる。

▲TOP

臨床検査所見

白血球数は、正常範囲内で、血小板減少、軽度肝機能上昇、低Na血症をきたすことが多い。髄液所見で細胞数の増加(通常100個/μl以下)、軽度の蛋白上昇(100-200mg/dL)を認める一方、糖は正常であることが多い。しかしながら、髄膜炎菌症やエーリキア症と臨床検査上区別することは難しく、除外できるまでは髄膜炎菌症を含めた治療を行うことが必要となることもある。

▲TOP

確定診断

ロッキー山紅斑熱は基本的には身体所見と疫学的な関連を含めた臨床症状で診断する。ただし、特異的な身体所見はないため、診断が難しい。R rickettsiiは発病から7-10日後まで抗体は検出できないため、病初期の診断は非常に難しい。ペア血清による抗体価が4倍以上に上昇するか、回復期の血清抗体価が64倍以上で診断が確定される。抗体検査はELISA法で行われることが多い(米国等)。抗体測定では、他の紅斑熱群リケッチア症との鑑別が困難であり、流行地への渡航直後などのエピソードが重要である。(2)PCR法は、急性期の診断として、特に皮膚検体(発疹中心部のパンチバイオプシー)が有用であり、血液からの検出の感度は低く推奨されない。国内では、保健所に連絡し、都道府県衛生研究所又は国立感染症研究所に検査を依頼する。

▲TOP

治療

テトラサイクリン系抗菌薬、クロラムフェニコールについては効果が実証されている。特にドキシサイクリンは子供も含め、すべての患者に対して有効である。使用量は成人ではドキシサイクリン100mg/回を1日2回(1日量200mg)、45kg以下の子供では2.2mg/kg/回を1日2回(1日量4.4mg/kg/日)で5〜7日内服または経静脈投与とする。解熱後2〜3日継続することが望ましい。国内では、ドキシサイクリンの注射用製剤はないため、経静脈投与が必要な際には、ミノマイシンが選択される。妊婦に対しては、テトラサイクリン系抗菌薬が使用できないため、胎児に対するgrey baby syndromeの危険性があるものの、クロラムフェニコールも治療選択となる。使用方法は、50-75mg/kg/日を4回に分けて7日間、特に解熱後2日間投与する。生命の危険性がある場合はテトラサイクリン系抗菌薬の使用も検討する必要がある。

▲TOP

予防(ワクチン)

現段階では開発されていない。

▲TOP

バイオハザード対策

ダニを介して伝播するため、ダニ咬傷のリスクを避ける。野外活動時、長袖長ズボンなどを着用して皮膚の露出を避ける。また、DEETによる防虫薬を衣類や露出している皮膚の部位に噴霧することは有効である。ダニ咬傷後の抗菌薬内服による曝露後予防の適応はない。

▲TOP

感染症法における取り扱い

四類感染症に指定されており、全数届出の対象となっている。

▲TOP

参考文献

  1. 東京都新たな感染症対策委員会, ロッキー山紅斑熱, 東京都感染症マニュアル2009. 東京都福祉保健局, 2009, 348-349
  2. Filipe Dantas-Torres, Rocky Mountain spotted fever. Lancet infect Dis 2007;7:724-32
  3. Centers for Disease Control and Prevention.Diagnosis and Management of Tickborne Rickettsial Diseases: Rocky Mountain Spotted Fever, Ehrlichioses, and Anaplasmosis — United States A Practical Guide for Physicians and Other Health-Care and Public Health Professionals. MMWR 2006;55(No. RR-4)

▲TOP

2012年07月06日 17時16分 改訂