No.18001 高齢者福祉施設における呼吸器感染症の集団発生

[ 詳細報告 ] 分野名:ウィルス性感染症
衛研名:福岡県保健環境研究所
報告者:ウイルス課 芦塚 由紀
事例終息:事例終息
事例発生日:2018/01/04
事例終息日:2018/02/01
発生地域:福岡県内
発生規模:
患者被害報告数:43名
死亡者数:2名(ライノウイルスに感染していたかは不明)
原因物質:C群ライノウイルス
キーワード:ライノウイルス、集団発生、呼吸器感染症、高齢者福祉施設

概要:
2018年1月に、福岡県内の高齢者福祉施設(入所者45名、職員46名)において、複数の入所者が発熱または呼吸器症状を呈した。管轄の保健所が施設内の患者の発生状況を調査したところ、初発有症者の発症日は1月4日で、1月18日までに計43名(入所者39名、職員4名)が発症、8名が入院、うち2名(いずれも90代女性)が死亡していた。有症者の年齢は入所者が66~98歳、職員が23~63歳であった。主な症状は、発熱および咳、痰、呼吸困難、喘鳴等の呼吸器症状であった。

背景:

地研の対応:
最初に、呼吸器マルチプレックスPCR法による検査を実施したが、病原体は検出されなかった。国立感染症研究所の次世代シークエンサーによる検査により、HRV-Cが1検体から検出されたため、当研究所でより高感度な検査として新たなNested PCR法を構築して再検査を実施した。

行政の対応:
国立感染症研究所の病原体ゲノム解析研究センターに次世代シークエンサーによるウイルス探索を行政依頼した。

原因究明:
保健所は感染症の原因究明およびまん延防止のため、当施設における健康調査および疫学調査を実施した。1月12日に有症者10名から咽頭ぬぐい液を採取し、福岡県保健環境研究所で検査を実施した。

診断:
(1) 当研究所では、呼吸器マルチプレックスPCR法により、ライノウイルス、メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、クラミジア・ニューモニエ、ボカウイルス、マイコプラズマ・ニューモニエ、アデノウイルスの検査を実施したが、呼吸器ウイルスは検出されなかった。
(2) 次に、検体を国立感染症研究所の病原体ゲノム解析研究センターに送付し、次世代シークエンサーによるウイルス探索を依頼した。その結果、10名中1名の咽頭ぬぐい液検体からC群ライノウイルス(HRV-C)の3Dpol遺伝子が検出された。
(3) 次世代シークエンサーの結果を基に、当研究所でHRVのより高感度な検査として、5’-UTR-VP4/VP2領域におけるNested PCR法を用いて検査したところ、10検体中2検体からHRV-Cが検出され、シークエンスにより塩基配列441bpが決定された。
(4) 配列が判明した441bp領域内で、今回のウイルス株に反応する特異的なプライマーを設計し、新たなNested PCR法を構築して再検査を実施したところ、10検体中8検体からHRV-Cが検出された。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:
国立感染症研究所の病原体ゲノム解析研究センターに次世代シークエンサーによるウイルス探索を行政依頼した。

事例の教訓・反省:
・施設等の感染症集団発生に対応するための各保健所における検体採取器材(検体をより多く採取できるナイロン製の綿棒)の整備状況の把握や検体採取法の周知等が必要である。
・感染症発生時の初動の検査において原因不明となった場合、できるだけ早い段階で次世代シークエンサーを活用することは有効な手段である。

現在の状況:

今後の課題:
次世代シークエンサーの導入

問題点:
HRV感染症は感染症発生動向調査事業の対象ではないため、流行状況やウイルスの性状の変化の把握が難しい。

関連資料:
・高齢者福祉施設における呼吸器感染症の集団発生について-福岡県
(IASR Vol. 39 p103-105: 2018年6月号)
・An outbreak of rhinovirus species C infection in a welfare facility in Fukuoka Prefecture, Japan
(Jpn. J. Infect. Dis. 71, 479-481 :2018)