No.18002 保育園で発生した腸管出血性大腸菌O103の集団感染事例

[ 詳細報告 ] 分野名:細菌性感染症
衛研名:岐阜県保健環境研究所
報告者:保健科学部 門倉由紀子
事例終息:事例終息
事例発生日:2017/07/18
事例終息日:2017/08/17
発生地域:岐阜県関市
発生規模:被験者数291名 菌陽性者37名
患者被害報告数:37名
死亡者数:0名
原因物質:腸管出血性大腸菌O103:H11(VT1)
キーワード:腸管出血性大腸菌、O103、保育園

概要:
 2017年8月8日に届出された患者を発端とした調査により、岐阜県関市内の保育園においてO103の集団感染が判明した。園児、職員および園児の家族計290名の糞便、給食の保存食3検体について検査を実施したところ、園児31名と園児の家族5名の計36名からO103が検出された。国立感染症研究所によるMLVAの結果、O103はすべて同一コンプレックス(17c403)と判定された。
菌陽性の園児32名(発端者を含む)は、24名が年長児で残りの8名はその兄弟(弟または妹)であった。このことから、年長児に共通の行事、プール、トイレなどを介し年長児内に感染が広がり、次いで家庭内感染が拡大したと推察された。園児の有症者は55名(菌陰性者34名を含む)であったが、腹痛や軟便など症状が比較的軽度であり、健康状態の把握が十分にできなかったことが感染拡大の要因として考えられた。

背景:
 腸管出血性大腸菌感染症は、年間約4,000例の届出がされており、そのうち患者は2,600例ほどで無症状病原体保有者の報告も多い。地方衛生研究所からの菌検出報告数によると、O群はO157およびO26が約80%を占めるものの、その他の血清群も増加傾向にある。また、腸管出血性大腸菌は少量の菌数でも感染が成立するため、感染が拡大しやすい。例年、保育施設や福祉施設において人から人への感染によるものと推定される集団感染事例が発生している。

地研の対応:
 岐阜県では地研である当所も検便検査の管轄地域を持っており、本事例はその管轄内であったことから検査は当所で実施した。検査は直接培養(クロモアガーSTEC、CT-RMAC)および増菌培養(mEC)にて行った。mECからのVT遺伝子探索をリアルタイムPCR法により行い、陰性の検体についてはEHEC不検出とした。クロモアガーSTEC上で藤色、CT-RMAC上で無色の疑わしいコロニーについては釣菌し、VT遺伝子と血清群の確認を行った。
 検査の結果、保育園の園児217名中30名からVT1遺伝子陽性のO103が検出された。職員25名からは検出されなかった。また、菌陽性者の家族等44名について検便を行い、4名からVT1遺伝子陽性のO103が検出された。なお、このうち園児1名は直接培養ではO103は検出されず、増菌液のO103免疫磁気ビーズ集菌によって検出された。血清型は、発端者を含めた35名すべてがO103:H11(VT1)であった。このうち1名からはOUT:H11(VT1)も重複して検出された。国立感染症研究所によるMLVAの結果、O103はすべて同一コンプレックス(17c403)と判定された。なお、園児1名とその家族3名については県外の自治体で接触者検便が実施され、園児と家族1名からO103が検出された。国立感染症研究所によるMLVAの結果、この2株も同一コンプレックスであった。
 給食については、7/28提供の保存食3品について腸管出血性大腸菌O26、O103、O111、O145及びO157の検査法(平成26年11月20日厚生労働省通知)に準拠し検査を行った。その結果、3検体とも腸管出血性大腸菌陰性であった。

行政の対応:
 管轄保健所は、感染症対策として下痢症状の園児のいる教室および利用するトイレの消毒と手洗いを徹底するよう指導した。また、地域医療機関と連携し、お盆休み期間中の受診先確保などの対応をとった。

原因究明:
 MLVAの結果、O103はすべて同一コンプレックスと判定され、本事例は同一の感染源に由来するものと推察された。園児に共通する食事は当該施設が提供する給食であるが、給食調理員を含む職員に体調不良者はいなかったこと、発端者の発症日は7/31であるが、その他の園児の発症は7/18~8/17の期間であり発症曲線は一峰性でなかったことなどから、食中毒の可能性は低いと考えられた。なお、検食が確保できた7/28提供の給食の保存食および給食調理員を含む職員からO103は検出されなかった。菌陽性者の多くは年長児であり、プールやトイレなど年長児に共通する接触事項による感染の拡大が示唆された。有症者の症状は軽く、発端者発症前から消化器症状を有する園児もいたことから、明確な感染源や感染経路を特定することは困難であった。

診断:

地研間の連携:

国及び国研等との連携:
 MLVAは国立感染症研究所において実施された。

事例の教訓・反省:
 本事例は軽症者が多く、年長児の間で特定の感染症が広がっていることを保護者や保育士が認識しにくかった。また、プールやトイレについて消毒は頻回にされていたものの濃度や消毒の確認が不十分であり、感染拡大の要因になったと考えられた。
現在の状況:
 岐阜県では試験検査係を有する保健所にリアルタイムPCRを導入しており、接触者検便においても増菌培地からのVT遺伝子探索を実施している。これにより血清群によらず迅速に結果を判定することができ、早急に危機管理事案に対応する体制をとっている。

今後の課題:
 腸管出血性大腸菌感染症について、事例によらず一律に対応しているが、軽症者や無症状病原体保有者の多い事例について弾力的に対処できないか検討する必要がある。検査においてもVT遺伝子陽性であるが菌分離が困難な場合など、発生規模や血清群を考慮し柔軟に対応する体制が望ましいと考えられた。

問題点:

関連資料: