No.18007 加湿器が原因とされたレジオネラ症集団発生事例

[ 詳細報告 ] 分野名:細菌性感染症
衛研名:大分県衛生環境研究センター
報告者:微生物担当 佐々木麻里
事例終息:事例終息
事例発生日:2017/12/22
事例終息日:2018/03/16
発生地域:大分県国東市
発生規模:80歳代から90歳代の男性3名
患者被害報告数:3名
死亡者数:1名
原因物質:レジオネラ属菌
キーワード:レジオネラ属菌、レジオネラ症、集団感染、加湿器、高齢者福祉施設

概要:
2017年12月22日から2018年1月15日にかけて、同一の高齢者福祉施設に入居する3名がレジオネラ症を発症した。患者3名のうち2名の喀痰を検査した結果、1名からLegionella pneumophila血清群1が検出された。施設内入浴設備や加湿器について、水及び拭き取り検体の検査を実施したところ、加湿器内の残り水1検体から380,000cfu/100mLのレジオネラ属菌が検出され、L. pneumophila血清群1と同定された。患者及び加湿器からの分離株のPFGEパターンが一致し、国立感染症研究所に依頼したSBT(Sequence-based typing)法による遺伝子型もST120で一致した。保健所の指導を受けて、当該施設は、居室で使用する加湿器を全て取り替え、さらに、加湿器に用いるため新たに次亜塩素酸水生成機を導入した。一方、入浴設備のシャワー水からも、L. pneumophila血清群1が検出されたが、患者株とはPFGEパターンもSBT型も異なっていた。施設は大規模な清掃、消毒、配管洗浄を実施し、使用水の行政検査で2018年3月16日にレジオネラ属菌が検出されないことを確認して終息した。
この事例を踏まえ、平成30年8月3日付け厚生労働省告示第297号により「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針(平成15年厚生労働省告示264号)」の一部が改正され、新たに加湿器による衛生上の措置に関する項目が設けられた。また、同日付で厚生労働省から各都道府県等介護保険主管部あてに「介護関連施設・事業所等におけるレジオネラ症防止対策の徹底について」という事務連絡が発出された。

背景:
レジオネラ症はレジオネラ属菌による感染症で、当該細菌に汚染されたエアロゾルを吸入して感染・発症する1)。国内の集団感染事例としては、入浴設備を原因とするものが多数報告されている2)。
1) 厚生労働省:レジオネラ症Q&A,
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html
2) 倉文明:平成29年度生活衛生関係技術担当者研修会資料,
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000194747.pdf

地研の対応:
患者喀痰2検体、施設関連47検体(水24検体、拭き取り23検体)について、レジオネラ属菌検査を実施した。患者から分離されたレジオネラ属菌株と、施設から分離されたレジオネラ属菌株とをパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)により比較した。その結果、患者由来株と加湿器由来株のPFGEパターンが一致した。

行政の対応:
管轄保健所が、①患者および施設の調査などの感染症法に基づく積極的疫学調査(検体採取、施設のATP測定を含む)、②施設に対する衛生管理に関する指導・助言、③レジオネラ症講習会を行った。県庁担当課は、保健所への助言および報道対応を行った。

原因究明:
患者喀痰2検体、施設関連47検体(水24検体、拭き取り23検体)について、レジオネラ属菌検査を実施した。患者から分離されたレジオネラ属菌株と、施設から分離されたレジオネラ属菌株とをパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)により比較した。その結果、喀痰由来株と加湿器由来株のPFGEパターンが一致した。

診断:
患者3名は、医療機関にて尿中抗原検査で診断された。そのうち2名の患者について、当所で喀痰からレジオネラ属菌分離培養を行い、1名からL. pneumophila血清群1が検出された。

地研間の連携:
なし

国及び国研等との連携:
患者、加湿器、入浴設備それぞれからの分離菌株を国立感染症研究所に送付し、SBT(Sequence-based typing)法による遺伝子解析を依頼した。その結果、患者由来株と加湿器由来株のSBT型が一致し、入浴設備由来株は異なる型であった。

事例の教訓・反省:
事例発生当初は入浴設備を感染源と疑い、その衛生管理の指導に重きを置いたため、加湿器や空調設備の管理状況の把握が遅くなった。

現在の状況:
当所では、レジオネラ属菌分離のため、3種類の選択分離培地(WYOα、GVPC、MWY)とBCYEα培地を常備している。迅速検査のため、LAMP法試薬も常備している。分子疫学解析にはPFGEを用いている。

今後の課題:
生活衛生担当部署、感染症担当部署および検査担当部署が、さらに効率よく情報を共有し、連携すること。

問題点:
感染源の解明には患者分離株と環境分離株との比較が必要であり、患者からの菌分離を要するが、医療機関でのレジオネラ症の診断はほとんど尿中抗原検査により行われ、喀痰を確保している事例は少ない。また、保健所の要請により喀痰が採取された時には、既に抗菌剤投与後であることが多い。

関連資料:
大分県衛生環境研究センター年報第45号,47-51(2017)