[ 詳細報告 ]
分野名:ウィルス性食中毒
衛研名:栃木県保健環境センター
報告者:企画情報部 野中 由紀江
事例終息:事例終息
事例発生日:2016/12/26
事例終息日:特定不能
発生地域:栃木県
発生規模:喫食者753名中256名発症
患者被害報告数:256名
死亡者数:0名
原因物質:ノロウイルスGII
キーワード:ノロウイルス
概要:
2016年12月27日A病院医師より「870人の入院患者のうち160人が下痢、嘔吐等の症状があり全病棟で発生している。」と報告があり、保健所で直ちに調査を開始した。
調査の結果、発症者に共通する食事が当該病院で提供された給食のみであること、患者便からノロウイルスGIIが検出されたこと、患者の発症時間がほぼ一峰性のピークを示し、症状が下痢、発熱、嘔吐等でノロウイルスの症状に一致すること、感染症を疑うエピソードが無く、医師からも食中毒患者届出票の提出があったことから、当該病院で提供された食事が原因とするノロウイルスによる食中毒と断定した。
発症者数は入院患者224名、病院職員(調理従事者を含む)32名、計256名であった。(調理従事者は全員病院職員である。)
12月28日以降の発症については、2次感染の可能性があり、食中毒から感染症へ移行したと推察された。
背景:
ノロウイルスは、食品を介して食中毒を起こすほか、手指や環境を介して感染を起こすウイルスである。
特に、子供や高齢者、合併症のある入院や入所の患者などでは重症化することもあるため、食中毒だけでなく、施設内感染対策も重要である。
地研の対応:
・患者便のウイルス検査を実施。
行政の対応:
(対策委員会等も含む。)
(1) 食品衛生法第55条の規定に基づく給食施設使用禁止命令(12月31日)
(2) 指示書の交付
(3) 複数回の行政指導(衛生教育を含む)
(4) 給食施設使用禁止命令の解除(1月4日)
原因究明:
・発症者は、当該施設が調理した給食を喫食しており、共通食は当該給食のみ、また異なる病棟間での共通行動はない。
・喫食後、17~135時間(平均42.5時間)に発症し、概ね36~48時間をピークとする一峰性を示していた。
・主症状は下痢・嘔吐・発熱等ノロウイルスによるものと一致し、患者便からのノロウイルスGIIが検出された。
・該当施設の水や空調の異常はなかった。
・当該給食の検食で細菌検査を実施したが、食中毒原因菌の検出はなかった。
・原材料及び検食のウイルス検査は実施しなかったため、原因食品の特定には至らず、原材料が汚染されていたのか、調理中に食品が汚染されたのかは、断定できなかった。
診断:
・微生物学的検査
(1) 便検査
・細菌検査:患者便1検体(9検体中)大腸菌01陽性
・ウイルス検査:9検体全て陽性(ノロウイルスGII)
(2) ふきとり検査
・細菌検査:全て陰性
・ウイルス検査:実施せず
(3) 食品検査
・細菌検査:全て陰性
・ウイルス検査:実施せず
全ての患者便からノロウイルスGIIが検出されたこと、主症状(下痢・嘔吐・発熱等)とノロウイルスの症状のよるものと一致していることから、病因物質をノロウイルスGIIと断定した。
地研間の連携:
特になし
国及び国研等との連携:
特になし
事例の教訓・反省:
検便の結果では、調理従事者からもノロウイルスGIIが検出されたが、調理従事者も給食を賄いとして喫食していたため、調理従事者がノロウイルスを持ち込んだ食中毒とは結論づけられなかった。しかし、何らかの形でノロウイルスが持ち込まれ、不十分な消毒状態の施設・器具類、盛り合わせ作業台等にノロウイルスが付着し、調理工程を通して食品が汚染されたことで本食中毒が発生したと推察される。
現在の状況:
2017年4月、施設内の問題点を洗い出し、厨房床清掃用の薬液塗布用オートモップ、作業着、履物、手洗い時間確認用タイマー及びスノコ等を購入した。また、手指消毒剤の適正配置を実施した。2018年2月、大量調理施設衛生管理マニュアル等を参考にノロウイルス対策を充実させた「衛生管理実施マニュアル」を作成した。2018年5月、調理業務を業者委託とし、給食従事者を増員した。
今後の課題:
・大規模な食中毒や感染症のリスクを潜在的に抱えている病院等は、それらに関する知識の習得や最新の情報の収集に努め、発生時に適切な対応がとれるよう平時から備えることが必要である。
問題点:
関連資料:
・食中毒事件詳報(栃木県)