No.18011 シガテラ毒による食中毒

[ 詳細報告 ]

分野名:自然毒等による食中毒
衛研名:鹿児島県環境保健センター
報告者:食品薬事部 茶屋真弓
事例終息:事例終息
事例発生日:2017/11/13
事例終息日:2017/11/24
発生地域:鹿児島県大島郡宇検村
発生規模:2グループ11名中8名発症
患者被害報告数:8名
死亡者数:0名
原因物質:シガトキシン類
キーワード:シガテラ、動物性自然毒、イッテンフエダイ、フエダイ

概要:
平成29年11月15日に名瀬保健所管内の医療機関からシガテラ毒による食中毒が疑われる患者を診察したとの連絡があった。同保健所で調査したところ,平成29年11月13日に管内の魚介類販売業者が販売したイッテンフエダイ及びフエダイの一種(魚種不明)を食べた2グループ11名中8名(グループAはイッテンフエダイを食べた者4名,グループBはフエダイの一種を食べた者4名)が消化器症状及び神経症状等を呈していることが判明した。

背景:
平成29年11月,鹿児島県大島郡喜界島近海で漁獲された魚(イッテンフエダイ等)によるシガテラ食中毒事例が発生した。

地研の対応:
マウス毒性試験(食品衛生検査指針※2掲載)を実施した。また,沖縄県衛生環境研究所にLC/MS/MSによるシガトキシン類の機器分析を依頼した。

行政の対応:
管轄保健所は,医療機関からの食中毒届出を受理後,直ちに食中毒調査を開始し,当該魚を販売した魚介類販売業者に対し,2日間の営業停止及び再発防止のための有毒魚に関する講習を実施した。また,患者に対し有毒魚について十分に気をつけるよう助言し,漁業関係者に対しても,漁協を通じて注意喚起を行った。

原因究明:
保健所は,販売者による当該魚の入手経路,販売状況等の聞き取りを行うとともに,患者に対して症状及び喫食状況等を,医療機関に対して臨床症状及び診断結果等について聞き取りを行った。また,グループAから入手した食品残品について当センターに検査を依頼した(グループBは残品なし)。

診断:
検体(筋肉)からマウス毒性試験により,0.2MU/g以上の毒力を検出し,LC/MS/MSによる分析により,CTX1B, 52-epi-54-deoxyCTX1Bを検出した。
グループAの患者聞き取り調査より算出した喫食量とマウス毒性試験結果から,摂取したシガトキシン類の量を換算すると,最も多く摂取した患者(約250gを喫食)で50MU以上となり,シガトキシン類のヒトの推定最小発症量(10MU)※1を超えた。また,最も少なく摂取した患者(約36gを喫食)で7.2MU以上となった。

地研間の連携:
シガトキシン類の機器分析を沖縄県衛生環境研究所へ依頼した。また,後日,沖縄県衛生環境研究所において魚種の遺伝子鑑別検査も実施された(イッテンフエダイと同定)。

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
マウス毒性試験においては,動物愛護の観点からマウスの使用数は最小限に留めるべきであるが,検体の毒力が不明な状態において,その数を算出するのは困難であった。特に高濃度含有する検体については,試験を実施する希釈倍率に配慮する必要がある。また,マウスを24時間観察し,特徴的な症状及び致死の確認でシガトキシン類と断定することは困難であったことから,今後は,当センターでも機器分析等によるシガトキシン類の確認ができるよう検査体制の整備が必要であると感じた。
さらに,内閣府食品安全委員会HPに掲載の「シガテラ調査票(第49回かび毒・自然毒専門調査会会議資料)」を用いれば,より詳細な患者症状の実態及び喫食状況を把握できたものと考える。

現在の状況:
シガトキシン類の機器分析を検討中である。また,魚種の遺伝子鑑別による特定を検討した結果,鑑別が可能となった。

今後の課題:
シガトキシン類の機器分析について,当センター保有の機器による測定方法を確立する必要がある。また,マウス毒性試験の際は,患者状況等から毒力の推定を行い,適切なマウス必要数を算出し効率よく試験を行う必要がある。

問題点:

関連資料:
※1 安元健:シガテラ,医学のあゆみ,112:886-892(1980)
※2 厚生労働省監修:食品衛生検査指針理化学編,p691-693,2005