【感染症エクスプレス@厚労省】Vol.444(2021年8月13日)
2021年8月6日、ギニア共和国保健省は、同国南西部ンゼレコケ州ゲケドゥ県で発生したマールブルグ病の確定症例1例を世界保健機関(WHO)へ報告しました。
ゲケドゥ県はシエラレオネとリベリア国境近くにあり、同地域は本年6月19日に終息したばかりの同国のエボラ出血熱の発生地でもありました。マールブルグ病の発生は同国初で、西アフリカでも初めてです。
症例は46歳の農業を営む男性で、7月25日に発症し、8月1日に、発熱、頭痛、倦怠感、腹痛、歯肉出血の症状で、近くの小規模医療施設を受診、8月2日に亡くなりました。
この患者の発生は県の保健当局に報告され、WHOと国の当局の専門家からなる調査チームが詳細な調査を開始しました。
死亡した患者の検体を県の研究所で検査したところ、マールブルグウイルスが検出され、その後、国立研究所、セネガルのパスツール研究所で確定診断されました。
本疾病の発生を受け、現在、ギニア保健省、WHO、米国疾病対策予防センター(CDC)等の関係機関が発生時対応・感染拡大防止策を実施しており、高リスクの濃厚接触者4名等の健康観察が実施されています。
WHOは、ギニア共和国の脆弱な医療体制と新型コロナウイルス感染症等の発生状況、患者発生地域がシエラレオネとリベリア国境近くであることから、国及び地域レベルの流行リスクを「高」とし、世界レベルのリスクは「低」としています。
マールブルグ病とは?
フィロウイルス科マールブルグウイルスによるウイルス性出血熱でわが国では一類感染症です。
自然宿主は、ルーセット・オオコウモリと考えられており、生息する鉱山、洞窟への長期暴露から感染する他、感染した人(遺体含む)の血液、体液に触れたことにより、粘膜等から感染することもあります。
潜伏期間は2~21日程度で、一般に、突然の高熱、頭痛、倦怠感等で発症し、3病日頃から重度の下痢、腹痛、嘔吐等を生じ、多くの事例で5~7病日に出血症状が見られます。
致死率はウイルス株によって異なりますが、24~88%と高く、平均50%程度です。
特効薬やワクチンはなく、早期の補液・対症療法が生存率の向上に有用とされています。コウモリの住む鉱山、洞窟等での適切な防御と、患者やご遺体に十分な防御なく触れないこと等が重要です。
発生状況
1967年にウガンダから輸入された実験用のアフリカミドリザルにより、ドイツのマールブルグとフランクフルト、セルビアのベオグラードで多数の患者が発生し、この疾患が知られるようになりました。
以降、アンゴラ、コンゴ民主共和国、ウガンダ等で散発。直近では2017年にウガンダで3名の患者が発生し、全例が死亡しています。
より詳しい情報は下記、WHOアウトブレイク発生情報、WHOアフリカ地域事務局の週報等をご覧ください。
厚生労働省は本疾患に対して引き続き情報収集を実施し、必要に応じて情報提供を行ってまいります。
【出典】
・WHO Disease Outbreak News (DONs): マールブルグ病(ギニア共和国)(2021/8/9)
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2021-DON331
・WHO マールブルグ病 ファクト・シート(2021/8/7)
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/marburg-virus-disease
・WHOアフリカ地域事務局週報 第32週: 2021/8/2-8/8 (8/8 17時時点)
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/343824/OEW32-0208082021.pdf
・WHOアフリカ地域事務局 ニュースリリース(2021/8/9)
https://www.afro.who.int/news/west-africas-first-ever-case-marburg-virus-disease-confirmed-guinea
・厚生労働省 感染症法に基づく医師の届出のお願い(マールブルグ病)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-01-06.html
・厚生労働省検疫所 FORTH 海外感染症情報 マールブルグ病―ギニア(2021/8/11)
https://www.forth.go.jp/topics/20210811_1.html