【疫学情報】 IDSC:船橋市における新型インフルエンザ事例に関する実地疫学調査報告(09/7/29) 国立感染症研究所感染症情報センター 2009/09/24

船橋市における新型インフルエンザ事例に関する実地疫学調査報告

2009年7月29日

国立感染症研究所感染症情報センター
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要旨

  新型インフルエンザの集団発生が船橋市で確認され、船橋市保健所から厚生労働省を通じて国立感染症研究所感染症情報センターへ疫学調査支援依頼があり、4名が2009年6月11日から19日まで実地疫学調査を実施した。42人の確定例が報告され、うち市立N中学校(以下N中学校)の生徒が34人、N 中学校の家族が4人、N中学校生徒の従兄弟が2人、N中学校と疫学的リンクの無かった2人(成人1人、幼稚園児1人)であった(年齢中央値14歳)。初発が6月5日で、6月7日に1回目のピークがあり、6月10日及び11日に2回目のピークがあった。これらの症例における保健所確認時の症状は、37度以上の発熱が100%(41人/41人)、咳が82.5%(33人/40人)であった。N中学校生徒について、修学旅行、部活動、教室内等の学校生活での感染伝播の可能性が考えられた。これらのうち、サンプルサイズが十分だった部活動について、相対危険度(RR: Relative Risk)を算出したところ、ソフトボール部のRR=6.53(95%信頼区間:2.21-19.25)が最も大きく、次いで卓球部(RR=2.43, 95%信頼区間:0.94-6.23)であった。また、部活動の試合で近隣の市町村の中学への伝播が確認された。臨時休業中の発熱者数は臨時休業後2日後に13人で臨時休業後最大となり、その後発熱者は減少し、6月15日に0人、6月16日に1人、6月17日に0人であった。臨時休業は感染拡大を予防する有効な対策であることが示唆された。流行性疾患発生中の学校等における健康観察は、今後の集団発生の早期探知に有用であり、集団発生終息後も継続が推奨された。教育委員会へは、学校における健康教育の推進、異常の把握等が提言された。船橋市及び船橋市保健所へは、疫学調査の正確性の確保、確実な情報共有、調査能力の向上、公衆衛生対応応能力の向上、協議の効率化及び関係部局との連携強化等が提言された。国への提言は、感染症に関する一般国民への普及啓発、省庁間の連携、国が支援する疫学調査体制の整備などであり、これらの充実が重要であると考えた。

(2009/9/18 IDSC 更新)