◆IDESコラムvol.75 薬剤耐性対策アクションプラン(2023-2027)と 抗微生物薬適正使用の手引き第三版(2023年12月22日)

【感染症エクスプレス@厚労省】Vol.503(2023年12月22日)

こんにちは、感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム9期生の城 有美(じょう ゆみ)と申します。
  11月は薬剤耐性(AMR)対策推進月間だったことをご存じでしょうか。このコラムでも何度か取り上げられている話題ですが、2023年4月、今後5年間で実施すべき「薬剤耐性(AMR)対策アクションブラン(2023-2027)」が取りまとめられましたので、今回ここで取り上げたいと思います。
  特定の種類の抗菌薬や抗ウイルス薬等の抗微生物薬が効きにくくなる、又は効かなくなることを「薬剤耐性(AMR)」といいます。
  耐性化した細菌やウイルスに感染し発症すると、耐性がない細菌やウイルスに感染し発症した時と比べて重症化・死亡に至る可能性が高まることが報告されています。
  そのため、AMRの発生をできる限り抑制し薬剤耐性微生物による感染症のまん延を防止することが大切とされています。
  2015年の世界保健機関(WHO)総会において「AMRに関するグローバル・アクション・ブラン」が採択され、日本でも2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016-2020)」を策定し、AMR対策について取り組みが進められてきました。新型コロナウイルス感染症のまん延の影響により2016年から2020年の計画期間が2022年度末まで延長されておりましたが、2023年、更なるAMR対策の推進のために2027年までの5年間で実施すべき事項がまとめられました。

  今回のAMR対策アクションプラン(2023-2027)でもこれまでの対策を引き継いで、普及啓発・教育、動向調査・監視、感染予防・管理、抗微生物剤の適正使用、研究開発・創薬、国際協力の6つの分野に関して目標が設定されました。
  IDES養成プログラムにおいても、AMR対策は深く関係しており、私が取り組んだ課題の一部をご紹介します。
  抗微生物剤の適正使用に関して、今年11月、抗微生物薬適正使用の手引き第三版を公表しました。
  第三版は本編、別冊、補遺の三部から校正されています。第一版、第二版では外来における抗菌薬処方の判断について記載していますが、第三版、本編では入院患者における感染症に対する基本的な考え方、別冊では入院患者の感染症で問題となる微生物についてそれぞれ診断や治療方針について記載しています。
  補遺では本編・別冊の記載に関する詳細やエビデンスを記載しています。
  現在、この手引きについて、医師のみではなく薬剤師、看護師等、幅広い職種で利用していただけるよう工夫を検討しています。
  研究開発・創薬の支援として、2023年11月、抗菌薬確保支援事業(抗微生物薬に対する市場インセンティブ)の仕組みが導入されました。このような仕組みは世界的に見ても少なく、抗菌薬開発を維持する一手段として活用が期待される
  我が国の先駆的な取り組みです。
  すでにAMR対策アクションプラン(2023-2027)で設定された6分野すべてにおいて今後5年間にむけた取り組みが開始されています。
  今回ご紹介したのは取り組みのごく一部ですが、これからも何らかの形でAMR対策に貢献できるといいなと思っています。

 参考資料
 ・特設サイト「薬剤耐性」 
  
 ・抗微生物薬適正使用の手引き 第三版
    本編
    別冊
    補遺
 ・ 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン
 ・ 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(概要)
 ・サイト内リンク 厚生労働省 薬剤耐性(AMR)対策について

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