参照元URL:https://www.pref.saitama.lg.jp/b0714/surveillance/covid-19_genome.html
埼玉県全域における最新のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のゲノム情報
新型コロナウイルス感染症の流行の波(第1波~第9波)では、それぞれの波で主流となる流行株は異なっていました。新型コロナウイルス感染症の動向を把握するには、ウイルスのゲノム情報を早期に把握することが重要となります。
埼玉県衛生研究所でおこなったゲノムの解析結果に加え、県内政令市・中核市、民間検査機関、国立感染症研究所が実施したゲノム解析結果を分析し、検出状況を掲載しました。
COVID-19のゲノム検出状況
特定のアミノ酸変異を有する変異株について
・R346T、F486P、F456L、L455F変異を有する変異株の系統別の推移
・COVID-19の定点当たり週別報告数における系統別(R346T、F486P、F456L、L455F変異の有無別)内訳の推計
・特定のアミノ酸変異(R346T、F486P、F456L、L455F変異)を有する変異株の一覧
COVID-19のゲノム検出状況
検出ゲノムの系統別推移 (2024年1月18日現在)
新型コロナウイルス感染症発生当初から現在までのゲノム解析結果が得られた陽性者の人数を、系統別に検体採取週別に集計しました。
県内流行の第1波から第9波まで、いずれも主流となる流行株は異なっていました。
第8波は第7波と同様のBA.5系統(オミクロン株の子孫系統)が主流ですが、系統の中の亜型は異なっています。
第9波は、第6波と同様のBA.2系統(オミクロン株の子孫系統)が主流ですが、系統の中の亜型は異なっています。
第7波以降の詳細な亜型、系統については次の項目に掲載しています。
2022年6月以降の変異株(亜型、系統)の推移(2024年1月18日現在)
2022年6月(第7波)以降のゲノム解析結果を詳細に集計しました。
第7波(2022年6月~9月)はBA.5.2、BA.5.2.1、BF.5などのBA.5系統の亜型が主流でした。
第8波(2022年10月~2023年3月)の前半の2022年10月~11月は、第7波の主流であったBA.5系統の亜型(BA.5.2、BA.5.2.1、BF.5など)が引き続き多く検出されていましたが、12月以降はBQ.1.1系統、BF.7系統などの新たなBA.5系統の検出数が徐々に増加し、主流となっていました。
第9波(2023年4月~11月)は、2023年4月から5月にかけてBA.2系統の子孫にあたるXBB.1.5系統、XBB.1.9系統、XBB.1.16系統が主流でした。2023年6月以降は、XBB.1.9系統の子孫系統であるEG.5系統の検出数が増加しました。
2023年12月以降は、EG.5系統の子孫系統であるHK.3系統及びHV.1に加え、BA.2.86系統(通称:ピロラ、詳細な説明は次の項目にあります)の検出数が増加傾向にあります。
BA.2.86系統(通称:ピロラ)について
世界保健機関(WHO)によるリスク評価で判明している、BA.2.86系統に関する主要事項は以下の通りです。
・BA.2.86系統(BA.2.86及びBA.2.86の子孫系統を含む)は、BA.2の子孫系統で、スパイク蛋白質に多数のアミノ酸変異を有していると言われています。
・BA.2.86は、BA.2と比較して34カ所、XBB.1.5と比較して36か所にアミノ酸変異があると言われています。
・WHOによると、BA.2.86について他の亜型と比較して重症化リスクが高いという報告はないとされています。
WHOは、BA.2.86系統(通称:ピロラ)が世界的に増加傾向にあることを踏まえて、2023年11月21日にBA.2.86系統をVOI(variants of interest:注目すべき変異株)に指定しました。
埼玉県においてもBA.2.86系統の検出数が増加傾向にありますので、今後の動向に注意が必要です。
さらにWHOは、世界的に、BA.2.86の子孫株であるJN.1(BA.2.86.1.1)の検出割合が急増していることを踏まえ、2023年12月13日にJN.1をVOIに指定しました。
WHOによるリスク評価で判明している、JN.1に関する主要事項は以下の通りです。
・JN.1は、BA.2.86のスパイク蛋白質のアミノ酸にL455S変異が加わった変異株で、WHOによると、他の亜型に比べて免疫逃避性が有意に高い可能性が指摘されています。
・WHOによると、JN.1について他の亜型と比較して重症化リスクが高いという報告はないとされています。
埼玉県内の、JN.1も含めたBA.2.86系統の亜型の検出状況を下に示しました。
2023年8月下旬から10月上旬はBA.2.86が検出されていました。10月中旬以降はBA.2.86の子孫株であるBA.2.86.1やBA.2.86.3が検出され始めました。
11月下旬からJN.1が検出されはじめ、12月中旬以降は埼玉県内で検出されたBA.2.86系統のうち4割以上を占めているため、今後の動向に注意が必要です。
直近の発生状況は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行情報をご確認ください。
(過去の発生状況は、2023年5月7日以前のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行情報をご確認ください。)
特定のアミノ酸変異を有する変異株について
R346T、F486P、F456L、L455F変異を有する変異株の系統別の推移 (2024年1月18日現在)
スパイク蛋白質の特定のアミノ酸変異について
・第7波(2022年6月~9月)は亜型の数が50以上でしたが、そのうちの約4%がスパイク蛋白質にR346T変異を有していました。
・第8波(2022年10月~2023年3月)は亜型の数が160以上でしたが、そのうちの約51%がスパイク蛋白質にR346T変異を有していました。R346T変異を有する変異株は免疫逃避性があると言われています。
・第9波(2023年4月~11月)は亜型の数が270以上でしたが、そのうちの約73%がスパイク蛋白質にR346T変異とF486P変異を有し、約14%がR346T変異とF486P変異とF456L変異を有していました。F486P変異を有する変異株は感染性が高くなると言われており、F456L変異を有する変異株は、感染力や免疫逃避性が高くなると言われています。
・2023年11月下旬以降は、亜型の数が30以上でしたが、そのうちの約29%がR346T変異とF486P変異とF456L変異とL455F変異を有していました。L455F変異を有する変異株は、感染力や免疫逃避性が高くなると言われています。
そこで埼玉県で検出があった変異株を、検体採取週別・系統別に、R346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異の4つの変異の有無によって以下の通り色分けをして集計しました。
・紫色の縦線:BA.2系統(R346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異の4つを全て持たない。)
・黒枠紫色の斜め線:BA.5系統(R346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異の4つを全て持たない。)
・黄緑色:BA.5系統(R346T変異を有する。F486P変異、F456L変異、L455F変異を持たない。)
・薄い橙色:BA.2系統(R346T変異を有する。F486P変異、F456L変異、L455F変異を持たない。)
・濃い橙色:BA.2系統(R346T変異とF486P変異を有する。F456L変異、L455F変異を持たない。)
・ピンク色:BA.2系統(R346T変異とF486P変異とF456L変異を有する。L455F変異を持たない。)
・黒枠赤色:BA.2系統(R346T変異とF486P変異とF456L変異とL455F変異の4つを全て有する。)
・黒枠水色:BA.2.86系統(通称:ピロラ)(F486P変異を有する。R346T変異、F456L変異、L455F変異を持たない。)
第7波(2022年6月~9月)の前半の6月~7月上旬は4つのアミノ酸変異を持たないBA.2系統(紫色の縦線)が主流でした。後半の7月中旬以降は、4つのアミノ酸変異を持たないBA.5系統(黒枠紫色の斜め線)が主流となっていました。
第8波(2022年10月~2023年3月)の10月は、第7波の主流であった4つのアミノ酸変異を持たないBA.5系統(黒枠紫色の斜め線)が主流でした。11月以降はR346T変異を有するBA.2系統(薄い橙色)やR346T変異を有するBA.5系統(黄緑色)の検出数が徐々に増加し、主流となっていました。
第9波(2023年4月~11月)の4月~9月中旬は、R346T変異とF486P変異を有するBA.2系統(濃いオレンジ色)が主流でした。6月下旬以降、R346T変異、F486P変異、F456L変異を有するBA.2系統(ピンク色)の検出数が徐々に増加し、9月下旬以降は主流となりました。
2023年7月中旬以降、R346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異を有するBA.2系統(赤色)が検出され始め、検体採取週ごとの全検出数に占めるR346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異を有する変異株の割合が増加傾向にあります。
さらに2023年8月下旬からBA.2.86系統(通称:ピロラ、水色)が検出され始め、検出数が増加傾向にあります。
(埼玉県内で検出されたR346T、F486P、F456L、L455F変異を有する変異株一覧につきましてはリンク先をご覧ください。)
COVID-19の定点当たり週別報告数における系統別(R346T、F486P、F456L、L455F変異の有無別)内訳の推計
また2022年10月以降の埼玉県内の新型コロナウイルス感染症の定点当たり週別報告数(2022年9月26日から2023年5月7日は全数報告からの推計値、2023年5月8日以降は定点医療機関からの報告に基づく定点当たり報告数)に、上図の週ごとの変異株系統の割合をかけて、定点当たり週別報告数の系統別の内訳を推計しました(2023年5月8日以降のCOVID-19の流行情報及び2023年5月7日以前の全数報告時のデータを用いた定点当たり報告数の推計につきましてはそれぞれリンク先をご覧ください)。
埼玉県内の新型コロナウイルス感染症の定点当たり週別報告数をみると、2023年8月から9月にかけて急激な患者数の増加がみられていました。その要因の一つとして、F456L変異を有するBA.2系統(上図のピンク色)が増加していたことが考えられます。
また2023年12月以降、定点当たり週別報告数が増加傾向にあります。L455F変異を有する変異株やBA.2.86系統(通称:ピロラ)の今後の動向には注意が必要です。
(埼玉県内で検出されたR346T、F486P、F456L、L455F変異を有する変異株一覧につきましてはリンク先をご覧ください。)
特定のアミノ酸変異(R346T、F486P、F456L、L455F変異)を有する変異株の一覧
スパイク蛋白質の特定のアミノ酸変異に着目して亜型を分類しました。
2022年9月8日以降に埼玉県内で検出された亜型のうち、スパイク蛋白質のR346T変異を有する変異株を、BA.5系統及びBA.2系統に分けて図示しました。
さらにF486P変異を有する系統は薄いピンク色、持たない系統は薄い青色で示しています。
またBA.2系統については、系統別に分類しました。その中でも、F456L変異を有する変異株を黄色、L455F変異を有する変異株をオレンジ色で染めています。
なお、BA.2.86系統はR346Tを持たない(BA.2.86系統はR346T変異とF456L変異とL455F変異を持たず、F486P変異を有します)ため、下の分類表には掲載していません。
Q&Aリンク
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般のかた向け)(厚生労働省)
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関のかた向け)(厚生労働省)
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業のかた向け)(厚生労働省)
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者のかた向け)(厚生労働省)
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(関連業種のかた向け)(厚生労働省)
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(発生状況と行政の対策)(厚生労働省)
関連機関リンク
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報について(国立感染症研究所)
・ 新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について(厚生労働省)