[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
衛研名:群馬県衛生環境研究所
報告者:
事例終息:事例終息
事例発生日:2023/4/5
事例終息日:2023/4/6
発生地域:群馬県前橋市
発生規模:
患者被害報告数:2
死亡者数:0
原因物質:リコリン、ガランタミン
キーワード:スイセン 植物性自然毒 リコリン ガランタミン
概要:
2023年4月5日(水)21時頃、前橋市内医療機関から、「知人から貰った野草を自ら調理し喫食したところ、嘔吐を呈した患者が救急搬送されてきた。喫食した野草の残品を確認したところ、有毒植物のスイセンに似ていたため、食中毒を疑って通報した。」旨の電話連絡が前橋市保健所にあった。
同保健所で調査したところ、患者は4月5日(水)に知人から譲り受けた野草を、同日お昼に自宅で調理し喫食していたことが判明した。喫食した野草の残品を、確認したところ、有毒植物のスイセンであることが推定された。 患者の症状がスイセンの中毒症状に合致していたこと、喫食した野草の残品がスイセンであると推定されたこと及び患者を診察した医師から食中毒届が提出されたことから、有毒植物のスイセンを原因とする食中毒事件と断定した。
有毒成分確認のため、喫食残品等野草中のリコリン及びガランタミンの測定を群馬県食品安全検査センターに依頼し、それらが検体中の含有していることを確認した。
背景:
毎年、特に春先から初夏にかけて、有毒植物を食用の植物と誤って喫食したことによる食中毒が多く発生しており、全国的にもスイセン等を誤食したことによる食中毒事例が複数例報告されている。本市においても、2021年4月に有毒植物のバイケイソウをオオバギボウシと誤って認識し喫食したことによる食中毒が発生している。
地研の対応:
行政の対応:
前橋市保健所は、有毒植物のスイセンを原因とする食中毒事件と断定した4月6日(木)に、スイセンの誤食による食中毒事件として速やかに事件概要を公表し、市民に対し有毒植物の誤食による食中毒予防の注意喚起を行った。
原因究明:
前橋市保健所は、患者から入手した1「喫食残品(調理前)」、2「知人から譲り受けた野草」、3「2の中で形態が若干異なったもの」の3検体について、抽出液を作成し、群馬県食品安全検査センターにリコリン及びガランタミンの成分測定を依頼した。:
診断:
群馬県食品安全検査センターでのLC/MS/MSによる測定で、1からリコリン219 μg/g、ガランタミン8.4 μg/g、2からリコリン236 μg/g、ガランタミン10.1 μg/g、3からリコリン7.1 μg/g、ガランタミン12.8 μg/gが検出され、1から3全てがスイセン等ヒガンバナ科植物であったと考えられた。
地研間の連携:
国及び国研等との連携:
事例の教訓・反省:
群馬県食品安全検査センターに測定を依頼することができ、迅速に検査結果を出すことができた。有毒植物による食中毒は全国において毎年発生しており、原因究明における検査機器の役割は重要である。発生事案に速やかに対応できる体制を整えておく必要がある。
現在の状況:
前橋市保健所として体制を模索中である。
今後の課題:
多くの自然毒による発生事案に備え、関係機関との連携が必要である。
問題点:
課題解決には前橋市保健所単独では困難である。
関連資料: