参照元URL:https://www.pref.saitama.lg.jp/b0714/surveillance/covid-19_genome.html
掲載日:2024年7月24日
埼玉県全域における最新のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のゲノム情報
新型コロナウイルス感染症の流行の波(第1波~第10波)では、それぞれの波で主流となる流行株は異なっていました。新型コロナウイルス感染症の動向を把握するには、ウイルスのゲノム情報を早期に把握することが重要となります。
埼玉県衛生研究所でおこなったゲノムの解析結果に加え、県内政令市・中核市、民間検査機関、国立感染症研究所が実施したゲノム解析結果を分析し、検出状況を掲載しました。
【現在の状況】
2023年11月中旬から12月にかけて増加が見られたHK.3系統(EG.5系統の子孫系統)などの「L455F」変異を持つXBB系統は、2024年1月末から減少を続け、2024年3月11日~17日の週以降、ほとんど検出されなくなりました。2024年1月以降に急増したJN.1系統は、2月中旬以降減少傾向にありましたが、4月中旬以降は、JN.1.11.1やKP.3系統(JN.1.11.1の子孫系統)等、JN.1系統の子孫系統の中でもF456L変異を有するものの検出数が増加しており、5月以降は全体として増加傾向が続いています。
COVID-19のゲノム検出状況
特定のアミノ酸変異を有する変異株について
- ・R346T、F486P、F456L、L455F、L455S変異を有する変異株の系統別の推移
- ・COVID-19の定点当たり週別報告数における系統別(R346T、F486P、F456L、L455F、L455S変異の有無別)内訳の推計
- ・特定のアミノ酸変異を有する変異株の一覧
COVID-19のゲノム検出状況
検出ゲノムの系統別推移 (2024年7月18日現在)
新型コロナウイルス感染症発生当初から現在までのゲノム解析結果が得られた陽性者の人数を、系統別に検体採取週別に集計しました。
県内流行の第1波から第10波まで、いずれも主流となる流行株の亜型は異なっていました。
第8波は第7波と同様のBA.5系統(オミクロン株の子孫系統)が主流ですが、系統の中の亜型は異なっています。
第9波、第10波及び2024年5月以降は、第6波と同様のBA.2系統(オミクロン株の子孫系統)が主流ですが、それぞれの期間において系統の中の亜型は異なっています。
第7波以降の詳細な亜型、系統については次の項目に掲載しています。
2022年6月以降の変異株(亜型、系統)の推移(2024年7月18日現在)
2022年6月(第7波)以降の埼玉県内のゲノム解析結果を詳細に集計しました。
第7波(2022年6月~9月)はBA.5.2、BA.5.2.1、BF.5などのBA.5系統の亜型が主流でした。
第8波(2022年10月~2023年3月)の前半の2022年10月~11月は、第7波の主流であったBA.5系統の亜型(BA.5.2、BA.5.2.1、BF.5など)が引き続き多く検出されていましたが、12月以降はBQ.1.1系統、BF.7系統などの新たなBA.5系統の検出数が徐々に増加し、主流となっていました。
第9波(2023年4月~11月)は、2023年4月から5月にかけてBA.2系統の子孫にあたるXBB.1.5系統、XBB.1.9系統、XBB.1.16系統が主流でした。2023年6月以降は、XBB.1.9系統の子孫系統であるEG.5系統の検出数が増加しました。
第10波の前半(2023年11月中旬から12月)は、HK.3系統(EG.5系統の子孫系統)、HV.1(EG.5系統の子孫系統)、BA.2.86系統(通称:ピロラ)が検出されました。第10波のピーク付近(2024年1月から2月前半)ではJN.1系統(BA.2.86系統の子孫系統)の検出数が急激に増加しましたが、2024年2月中旬以降、新型コロナウイルスの検出数の減少に伴いJN.1系統の検出数は減少しています。
2024年4月以降は、総検出数は20~50件で推移しているものの、JN.1系統が占める割合が徐々に増加し、5月以降は検出のほとんどがJN.1系統となっています。(BA.2.86系統及びJN.1系統の詳細な説明は次の項目にあります)。
BA.2.86系統(通称:ピロラ)及びJN.1系統について(2024年7月18日現在)
世界保健機関(WHO)によるリスク評価で判明している、BA.2.86系統に関する主要事項は以下の通りです。
・BA.2.86系統(BA.2.86及びBA.2.86の子孫系統を含む)は、BA.2の子孫系統で、スパイク蛋白質に多数のアミノ酸変異を有していると言われています。
・BA.2.86は、BA.2と比較して34か所、XBB.1.5と比較して36か所にアミノ酸変異があると言われています。
・WHOによると、BA.2.86について他の亜型と比較して重症化リスクが高いという報告はないとされています。
WHOは、BA.2.86系統(通称:ピロラ)が世界的に増加傾向にあることを踏まえて、2023年11月21日にBA.2.86系統をVOI(variants of interest:注目すべき変異株)に指定しました。
さらにWHOは、世界的に、BA.2.86の子孫株であるJN.1(BA.2.86.1.1)の検出割合が急増していることを踏まえ、2023年12月13日にJN.1をVOIに指定しました。
WHOによるリスク評価で判明している、JN.1に関する主要事項は以下の通りです。
・JN.1は、BA.2.86のスパイク蛋白質のアミノ酸にL455S変異が加わった変異株で、WHOによると、他の亜型に比べて免疫逃避性が有意に高い可能性が指摘されています。
・WHOによると、JN.1について他の亜型と比較して重症化リスクが高いという報告はないとされています。
埼玉県内においても、JN.1及びJN.1の子孫株を含めたJN.1系統でL455S変異を有することが確認されています。
BA.2.86系統の検出状況(検出週別)
埼玉県内の、JN.1系統も含めたBA.2.86系統の亜型の検出状況(検体採取週別)を下図に示しました。
2023年11月以降はBA.2.86の子孫株であるBA.2.86.1が検出され始めました。
2023年11月下旬からJN.1が検出され始めました。2024年1月中旬以降はJN.1に加え、JN.1.4やKP.2を始めとするJN.1の子孫株が多く検出されるようになり、子孫株の占める割合が2月以降、相対的に増加している状況です。特に、2024年4月下旬以降、JN.1の子孫株であるKP.3系統の検出割合が大きく増加しています。
また、2023年8月下旬以降の埼玉県内の新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数に、上図の週毎の変異株系統の割合をかけて、定点当たり週別報告数の系統別の内訳を推計しました。
2024年5月以降、KP.3系統の検出の増加に伴い、新型コロナウイルス感染症の週別定点あたり報告数が増加傾向にある可能性が考えられます。
直近の発生状況は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行情報をご確認ください。
(過去の発生状況は、2023年5月7日以前のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行情報をご確認ください。)
特定のアミノ酸変異を有する変異株について
R346T、F486P、F456L、L455F、L455S変異を有する変異株の系統別の推移 (2024年7月18日現在)
埼玉県で検出されたCOVID-19の亜型について、期間ごとに、亜型数と特定のアミノ酸変異を有する亜型の割合を集計しました。
波・期間 | 亜型の数 | 特定の変異の種類(特定の変異を有する亜型の割合) |
---|---|---|
第7波(2022年6月~9月) | 50以上 | R346T変異(約4%) |
第8波(2022年10月~2023年3月) | 160以上 | R346T変異(約51%) |
第9波(2023年4月~11月中旬) | 270以上 |
R346T変異とF486P変異(約73%) R346T変異とF486P変異とF456L変異(約14%) |
第10波(2023年11月下旬~2024年4月) | 110以上 |
R346T変異とF486P変異とF456L変異とL455F変異(約25%) F486P変異とL455S変異(JN.1等、約22%) |
2024年5月以降 | 30以上 | F486P変異とL455S変異(JN.1等、約24%) F486P変異とL455S変異とF456L変異(KP3等、約71%) |
特定のアミノ酸変異を有する変異株は、以下のような特徴があると言われています。
・R346T変異を有する変異株は免疫逃避性があると言われています。
・F486P変異を有する変異株は感染性が高くなると言われています。
・F456L変異を有する変異株は、感染性や免疫逃避性が高くなると言われています。
・L455F変異を有する変異株は、感染性や免疫逃避性が高くなると言われています。
・L455S変異を有する変異株(JN.1系統)は、他の亜型に比べて免疫逃避性が有意に高い可能性が指摘されています。
そこで埼玉県で検出があった変異株を、検体採取週別・系統別に、R346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異の4つの変異の有無によって、以下の通り色分けをして集計しました。
なお、BA.2.86系統についてはF486P変異、F456L変異、L455F変異の有無に加えて、L455S変異の有無によっても色分けをしました。(BA.2.86系統はR346T変異を持たないことが多いです。)
・:BA.2系統(R346T、F486P、F456L、L455F変異の4つを全て持たない。)
・:BA.5系統(R346T、F486P、F456L、L455F変異の4つを全て持たない。)
・:BA.5系統(R346T変異を持つ。F486P、F456L、L455F変異を持たない。)
・:BA.2系統(R346T変異を持つ。F486P、F456L、L455F変異を持たない。)
・:BA.2系統(R346TとF486P変異を持つ。F456L、L455F変異を持たない。)
・:BA.2系統(R346TとF486PとF456L変異を持つ。L455F変異を持たない。)
・:BA.2系統(R346TとF486PとF456LとL455F変異の4つを全て持つ。)
・:BA.2.86系統(通称:ピロラ)(F486P変異を持つ。F456L、L455F、L455S変異を持たない。)
・:BA.2.86系統(通称:ピロラ)(JN.1系統)(F486PとL455S変異を持つ。F456L、L455F変異を持たない。)
・:BA.2.86系統(通称:ビロラ)(JN.1系統)(F486PとL455SとF456L変異を持つ。L455F変異を持たない。)
第7波(2022年6月~9月)の前半の6月~7月上旬は4つのアミノ酸変異を持たないBA.2系統(紫色の縦線)が主流でした。後半の7月中旬以降は、4つのアミノ酸変異を持たないBA.5系統(黒枠紫色の斜め線)が主流となっていました。
第8波(2022年10月~2023年3月)の10月~11月は、第7波の主流であった4つのアミノ酸変異を持たないBA.5系統(黒枠紫色の斜め線)が主流でした。12月以降はR346T変異を有するBA.2系統(薄い橙色)やR346T変異を有するBA.5系統(黄緑色)の検出数が徐々に増加し、主流となっていました。
第9波(2023年4月~11月)の4月~9月中旬は、R346T変異とF486P変異を有するBA.2系統(濃いオレンジ色)が主流でした。6月下旬以降、R346T変異、F486P変異、F456L変異を有するBA.2系統(ピンク色)の検出数が徐々に増加し、9月下旬以降は主流となりました。2023年7月中旬からR346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異を有するBA.2系統(赤色)が検出され始め、11月にかけて検体採取週ごとの全検出数に占める割合が増加しました。さらに2023年8月下旬からはBA.2.86系統(濃い水色)が検出され始めました。
第10波の前半(2023年11月~12月)は、第9波の後半に引き続き、346T変異、F486P変異、F456L変異、L455F変異を有するBA.2系統(赤色)及びBA.2.86系統(濃い水色)が検出されました。その後、2023年12月中旬より、L455S変異を有するBA.2.86系統(明るい水色、JN.1系統)が検出され始め、2024年2月前半にかけて検出数が急増しました。2月中旬以降は、総検出数は減少したものの、総検出数に対するL455S変異を有するBA.2.86系統(明るい水色、JN.1系統)の割合は高い状況にありました。
2024年の3月以降、L455S及びF456L変異を有するBA.2.86系統(薄い水色)が検出され始め、特に4月下旬以降、検出数は急激に増加しています。
(埼玉県内で検出された特定のアミノ酸変異を有する変異株の一覧につきましてはリンク先をご覧ください。)
COVID-19の定点当たり週別報告数における系統別(R346T、F486P、F456L、L455F、L455S変異の有無別)内訳の推計(2024年7月18日現在)
また2022年10月以降の埼玉県内の新型コロナウイルス感染症の定点当たり週別報告数(2022年9月26日から2023年5月7日は全数報告からの推計値、2023年5月8日以降は定点医療機関からの報告に基づく定点当たり報告数)に、上図の週ごとの変異株系統の割合をかけて、定点当たり週別報告数の系統別の内訳を推計しました(2023年5月8日以降のCOVID-19の流行情報及び2023年5月7日以前の全数報告時のデータを用いた定点当たり報告数の推計につきましてはそれぞれリンク先をご覧ください)。
埼玉県内の新型コロナウイルス感染症の定点当たり週別報告数をみると、2023年8月から9月にかけて急激な患者数の増加がみられていました。その要因の一つとして、F456L変異を有するBA.2系統(ピンク色)が増加していたことが考えられます。
また、2023年12月以降に定点当たり週別報告数の増加がみられています。2023年12月中旬はL455F変異を有するBA.2系統(赤色)が流行の大部分を占めていましたが、2024年1月以降はBA.2.86系統(通称:ピロラ)のうち、L455S変異を有するJN.1系統(明るい水色)が急激に増加し、大きな流行拡大が見られました。L455S変異を有するBA.2.86系統(JN.1系統、明るい水色)が、2024年1月以降の流行に影響したと考えられます。
2024年4月下旬以降は、L455S及びF456L変異を有するBA.2.86系統(JN.1系統、薄い水色)に検出数の増加がみられ、今度の動向に注意が必要です。
(埼玉県内で検出された特定のアミノ酸変異を有する変異株の一覧につきましてはリンク先をご覧ください。)
特定のアミノ酸変異を有する変異株の一覧(2024年7月18日現在)
BA.2.86系統におけるL455S、F456L変異の有無について
2022年9月8日以降に埼玉県内で検出されたBA.2.86系統のうち、スパイク蛋白質のL455S変異の有無別に図示しました。
さらに、F456L変異を有する亜型については、薄い青色で染めて示しています。
BA.2及びBA.5系統におけるR346T、F486P、F456L、L455F変異の有無について
2022年9月8日以降に埼玉県内で検出された亜型のうち、スパイク蛋白質のR346T変異を有する変異株を、BA.5系統及びBA.2系統に分け、F486P変異を有する系統は薄いピンク色、持たない系統は薄い青色で示し、エクセルファイルにまとめました。
また、BA.2系統については、系統別に分類し、その中でも、F456L変異を有する変異株を黄色、L455F変異を有する変異株を橙色で染めています。
なお、BA.2.86系統はR346Tを持たないことが多いため、下の分類表(Excelファイル)には掲載していません。
詳細については、以下のExcelファイルをご覧ください。
BA.2及びBA.5系統におけるR346T、F486P、F456L、L455F変異の有無別一覧表(エクセル:46KB)
Q&Aリンク
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般のかた向け)(厚生労働省)
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関のかた向け)(厚生労働省)
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業のかた向け)(厚生労働省)
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者のかた向け)(厚生労働省)
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(関連業種のかた向け)(厚生労働省)
・ 新型コロナウイルスに関するQ&A(発生状況と行政の対策)(厚生労働省)