[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
衛研名:横浜市衛生研究所
報告者:微生物検査研究課 仙田隆一
事例終息:事例終息
事例発生日:2024/07/24
事例終息日:2024/07/25
発生地域:横浜市
発生規模:
患者被害報告数:162名
死亡者数:0名
原因物質:黄色ブドウ球菌(エンテロトキシンA,C産生、コアグラーゼⅢ型)
キーワード:うなぎ、土用の丑(うし)の日、黄色ブドウ球菌
概要:
2024年7月24日に横浜市内商業施設Aで購入したうなぎ弁当、うなぎかば焼き及び飲食店内で提供されたうな重等を喫食した1,305人のうち、162人が下痢、おう吐、腹痛等の消化器症状を呈した。食品(営業者保管残品及び消費者保管残品)、患者便、調理従事者手指及び調理場内のふきとり検体から黄色ブドウ球菌(エンテロトキシンA,C産生、コアグラーゼⅢ型)が検出された。
調理従事者の手洗い不備かつ、素手での調理及び常温での長時間放置等、細菌付着や菌の増殖リスクが複数見られた。
背景:
黄色ブドウ球菌による食中毒は、近年では発生数は減少傾向であるが、今でも手指衛生の不徹底や食品の保存管理の不備等を原因とした食中毒事件が発生しており、依然として食品衛生上重要な毒素型食中毒である。
地研の対応:
当所において食品(営業者保管残品及び消費者保管残品)、患者便、調理従事者手指及び調理場内のふきとり検体等について食中毒起因菌の検査を行った。さらに、患者の便及び残品等から分離された黄色ブドウ球菌(エンテロトキシンA,C産生、コアグラーゼⅢ型)17株について、パルスフィールドゲル電気泳動法による分子疫学的解析を行った結果、1~2バンド差の泳動パターンを示し、疫学的な関連もあることからTenovarらの判定基準により同一事例株であると考えられた。
行政の対応:
原因施設を所管する港南福祉保健センターは、うなぎ弁当等を調製した当該レストラン、販売店舗、バックヤード厨房及び催事場について営業禁止処分を行った。
原因究明:
初動で探知した2グループの患者は、いずれも商業施設Aで購入したうなぎ弁当を喫食していたことから、7月24日(土用の丑の日)に商業施設Aでうなぎかば焼き、うなぎ弁当及びうな重を購入した者を主な対象として調査を開始した。
その結果、患者の便及び残品等(うなぎ弁当、うなぎ白焼き等)から同じ型のエンテロトキシンを産生する黄色ブドウ球菌が検出されたこと、患者の症状と潜伏期間が黄色ブドウ球菌によるものと一致したこと、患者の共通食は7月24日に調理・販売されたうなぎかば焼き、うなぎ弁当及びうな重に限られたことから、7月24日(土用の丑の日)に調理、販売されたうなぎかば焼き、うなぎ弁当及びうな重を原因食品とした。本事例は土用の丑の日にあわせて調理、販売されたうなぎ弁当等が原因で発生した事例であり、複数の調理場を使用し通常の十倍以上の数量を調理し、販売していた。土用の丑の日に向けて事前に衛生管理計画を見直すことはなく、調理能力以上の生産を行ったため、結果として衛生管理が疎かになっていた。
診断(定性・定量):
以下のことから黄色ブドウ球菌を原因とする食中毒と断定された。
1. 患者の便及び残品等(うなぎ弁当、うなぎ白焼き等)から同じ型のエンテロトキシンを産生する黄色ブドウ球菌が検出されたこと
2. 患者の症状と潜伏期間が黄色ブドウ球菌によるものと一致したこと
3. 患者の共通食は7月24日に調理・販売されたうなぎかば焼き、うなぎ弁当及びうな重に限られたこと
地研間の連携:
なし
国及び国研等との連携:
なし
事例の教訓・反省:
なし
現在の状況:
本事例を受け、季節商品の調理、製造を行う飲食店等の施設への立入点検を実施し、衛生的な取り扱いなどについて確認を行うことにした。(季節商品調理製造施設の点検)
今後の課題:
本事例は、土用の丑の日にあわせて調理されたうなぎ弁当等が原因食品となった食中毒であり、短期間に大量調理されることの多い“季節商品”の製造時に起こりやすい、施設の能力を超えた調理・製造や温度管理の不備等が関係しており、営業者への注意喚起が必要と考えられる。
問題点:
関連資料:
土用の丑の日に発生したうなぎ弁当等による黄色ブドウ球菌食中毒について. 月刊「食品衛生研究」2025年10月号
