[ 詳細報告 ]
分野名:化学物質による食品汚染
衛研名:川崎市健康安全研究所
報告者:水質・環境担当 牛山温子
事例終息:事例終息
事例発生日:2024年5月
事例終息日:2024年5月
発生地域:川崎市
発生規模:
患者被害報告数:0名
死亡者数:0名
原因物質:シアン化合物
キーワード:生あん、シアン化合物、規格基準
概要:
令和6年度に検査を行った生あんからシアン化合物が検出された。当所で実施した検査法は「公定法と同等以上の性能を有すると認められた検査法」ではないと判断されたため、公定法で再度検査を実施した。
背景:
生あん中のシアン化合物については、食品衛生法において「検出されるものであってはならない」と定められている。また、豆類のシアン化合物についても「不検出」と定められているが、例外として、サルタニ豆、サルタピア豆、バター豆、ペギア豆、ホワイト豆及びライマ豆にあってはシアン化水素として500ppmを超えて含有するものであってはならないと定められており、シアン化合物が検出される豆類の使用は生あんの原料のみに限定されている。
地研の対応:
生あん及びその原料のバター豆について、ピクリン酸紙法による定性検査を実施した。その結果、バター豆のピクリン酸紙は赤褐色となり「検出」となった。生あんのピクリン酸紙については、ほぼ色の変化は無いようであったが先端がわずかに淡褐色に色づいているように見えたため、バター豆とともに定量検査を実施することにした。
ピリジンカルボン酸・ピラゾロン法(酵素不添加)にて分光光度計を用いて定量検査を実施したところ、生あんから3.3ppm、バター豆から400ppmを検出した。(定量下限:2ppm)
確認検査として、生あんを水蒸気蒸留して得られた留液を100倍希釈してイオンクロマトグラフ-ポストカラム吸光光度法で測定した。保持時間がシアン化物イオン標準品と一致したことから、シアン化合物を含有していることを確認した。
厚生労働省監視安全課に問い合わせたところ、次のような回答を得た。「妥当性判断のためのガイドラインが示されていないため、川崎市が行った試験法を公定法と同等以上とは判断できない。したがって、今回の川崎市の結果をもって、食品衛生法13条違反と判断することはできないと考える。現時点で「同等以上の性能を有すると認められた検査法」は存在しない。生あんの成分規格については告示370号で示されている検査法で実施された結果で判断する必要があると思料する。」
上記の回答を受けて、告示370号に示されている硝酸銀滴定法による定量検査を行った。その結果、生あんから2.2ppmを検出した。
行政の対応:
原因究明:
診断:
地研間の連携:
国及び国研等との連携:
生あんの規格基準の解釈についてご教示いただいた。
事例の教訓・反省:
バター豆はシアン化合物の含有量が多く、生あんの製造基準に沿って製造していても製造工程によっては生あんに残留してしまうことが示唆された。
現在の状況:
今後の課題:
告示370号に示されている硝酸銀滴定法の終点は液が濁る点とされており、試験者の人為的裁量が入りやすく、終点の判定が難しい。地方衛生研究所においては人事異動などにより職員の入れ替わりもあり硝酸銀滴定法のように終点の判定に経験を要する検査に対して検査技術の維持が非常に難しく大きな課題となっている。
今後も収去検査による監視指導を継続し食品衛生行政に寄与するにあたり、シアン化合物試験に対して数値による客観的な判定が可能なピリジンカルボン酸・ピラゾロン法が認められること、基準値が設定されることを当所としては望んでいる。
問題点:
関連資料:
食品、添加物等の規格基準(昭和 34 年厚生省告示第 370 号)
堤智昭ら. 生あん中のシアン化合物分析法の性能評価と生あん中のシアン化合物の実態調査. 食品衛生学雑誌. 54 巻 4 号 p. 345-350 (2013)
牛山温子ら. 生あんからシアン化合物を検出した事例について. 令和6年度地方衛生研究所全国協議会関東甲信静支部第37回理化学研究部会総会・研究会資料. P.29-30
「シアン化合物を含有する食品の取扱いについて」平成30年6月14日付け薬生食監発0614第2号厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課長通知
