[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
衛研名:宮城県保健環境センター
報告者:生活化学部 佐藤由美
事例終息:事例終息
事例発生日:2024/09/05
事例終息日:2024/09/06
発生地域:宮城県栗原市
発生規模:家庭内(喫食者2名)
患者被害報告数:2名
死亡者数:0名
原因物質:ククルビタシン類
キーワード:苦みのあるユウガオ、ククルビタシンB、LC-QTOF/MS
概要:
2024年9月5日午後5時頃、岩手県から「岩手県内の医療機関から岩手県一関保健所に、苦みのあるユウガオを喫食し、嘔吐、下痢等の症状を呈した患者1名(宮城県在住)を診療した」と宮城県に通報があった。
管轄保健所が調査したところ、8月19日から8月31日の間に宮城県内の販売店からユウガオを購入し、9月5日の朝食に調理して喫食した2名のうち2名が嘔吐、下痢等の症状を呈し、うち喫食量の多かった1名が医療機関を受診し、入院したことが判明した。 患者症状がユウガオの苦み成分(ククルビタシン類)による症状と一致していたことから、調理前のユウガオ残品が検体として搬入された。
背景:
ユウガオはウリ科植物特有の苦味成分ククルビタシン類を含んでいる。ククルビタシン類を多量に含有する個体を摂食すると、腹痛、下痢、嘔吐などの症状を呈することが報告されており、厚生労働省の食中毒統計によると2000年から2023年の間に、国内で5件の食中毒事例が発生している。宮城県では2024年7月に、県内初となる事例が発生したばかりであった。
地研の対応:
保健所の依頼により、患者から提供された調理前ユウガオ残品について、9月6日にククルビタシン類の定性及び定量検査を実施した。
行政の対応:
保健所は、患者の症状及び発症までの時間がユウガオに含まれるククルビタシン類による食中毒とほぼ一致したこと、診察した医師から食中毒患者等届出票が提出されたことから、9月6日にユウガオの炒め物が原因食品と推定される食中毒と断定し、県環境生活部食と暮らしの安全推進課が記者発表を行った。
本事例の発生により、保健所は生産者及び販売者に苦みの強いユウガオは喫食せず、廃棄する旨の注意喚起を行うよう指導、販売者はユウガオの販売コーナーに注意喚起の表示を設置した。
原因究明:
搬入された調理前ユウガオ残品のつるを除去し、横に3分割し、それぞれを縦に4分割したものから対角の2つずつを取り合わせ、皮を剥き、種子を除去して均一化試料とし、ククルビタシン類の定性及び定量検査を実施した。定性検査はLC-QTOF/MSのSCAN分析で、NISTマススペクトルライブラリー2017より選択したククルビタシンB、D、E、I及びEの配糖体のプロトン付加体、アンモニウム付加体の精密質量におけるピークの有無により判定した。定量検査は標準品を保有していたククルビタシンBについてのみ絶対検量線法により実施した。
診断(定性・定量):
定量検査の結果、ククルビタシンB 470μg/gが検出された。また定性検査ではククルビタシンBとともにククルビタシンE と推定されるピークが確認されたが、Eの配糖体のピークは確認できなかった。
地研間の連携:
国及び国研等との連携:
事例の教訓・反省:
現在の状況(技術、体制、設備等):
今後の課題:
今回、定性試験でククルビタシンE と推定されるピークが確認されたが、標準品を所有していなかったことから、定量結果を得るには至らなかった。
発生事例が多くない自然毒による食中毒は、標準品の常備や入手が難しい場合もあり、国、地研間の協力が重要と考える。
問題点:
関連資料:
・吉岡直樹ら(2017):兵庫県立健康生活化学研究所健康科学研究センター研究報告第8号、26-29p
・吉岡直樹ら(2018):兵庫県立健康生活化学研究所健康科学研究センター研究報告第9号、11-17p
