[ 詳細報告 ]
分野名:リケッチア感染症
登録日:2016/03/17
最終更新日:2016/05/26
衛研名:京都府保健環境研究所
発生地域:京都府与謝郡岩滝町
事例発生日:1983年6月
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:
死亡者数:1名
原因物質:Orientia tsutsugamushi
キーワード:リケッチヤ、新型つつが虫病、熱性疾患、散発死亡事例、免疫ペルオキシダーゼ法
背景:
昭和50年頃には全国で5件しか発生をみなかったつつが虫病は、昭和51年頃から増加し始め、従来は発生のみられなかった地域からも本症(新型つつが虫病)が全国的に多発するようになり、昭和59年には全国で957名の患者が確認されるに至った。京都府でも昭和33年の1名のつつが虫病患者の発生をみて以来24年間その発生記録はなかったが、昭和58年(1983年)の6月に京都府北部(与謝郡岩滝町)で49歳女性の患者発生を確認し、不幸にも患者は死亡した。
概要:
昭和58年6月に京都府与謝郡岩滝町在住の49歳の女性が持続する発熱及び発疹により、京都府立与謝の海病院内科に受診し、つつが虫病と診断されたものである。
原因究明:
患者発生が京都府北部の野田川流域に限局している背景を解明するため、
1) 野田川流域を中心とし、広く京都府内全域について野鼠を捕獲し、付着しているつつが虫の分布を解明することにより、患者発生の地域限局性について解明する。
2) 一般健康人の抗つつが虫病リケッチア抗体保有状況を調査し、その地域における本症の侵婬状況を把握する。
等の調査を継続的に実施している。
診断方法としては免疫蛍光抗体法による血清学的診断法を整備するとともに、PCR法による診断法についても実施する方向で検討している。
診断:
地研の対応:
京都府立与謝の海病院の内科部長から血清学的診断について依頼を受けたが、当研究所では検査体制が整備されていなかったため、秋田大学医学部須藤恒久教授に血清学的診断を依頼したところ、免疫ペルオキシダーゼ法により血清学的にGilliam型によるつつが虫病と診断された。
当研究所においてもその検査体制を整備するため、秋田大学からGilliam株、Karp株及びKato株を分与依頼し、L細胞により増殖させたものをアセトン固定標本とし、免疫蛍光抗体法による診断の体制を整備したところである。
行政の対応:
その後の京都府におけるつつが虫病患者の発生は、岩滝町、野田川町及び宮津市の野田川流域に限局していることから、京都府健康対策課はこの地域を中心として、つつが虫による刺咬防止、早期受診、早期治療等について一般府民を対象として啓発パンフレットを配布するとともに、地域病院・医院に対して協力要請を行った。
地研間の連携:
民間医療機関からの血清学的診断の依頼はあるが、本症に係る地研間の連携は特にない。
国及び国研等との連携:
国立感染症研究所に対し、年に1回、様式に基づいた事例報告を行っている。
事例の教訓・反省:
特になし
現在の状況:
京都府内で毎年数例の発生がある。
今後の課題:
特になし
問題点:
関連資料:
京都府衛生公害研究所年報第31号、37~42(1986)