No.142 レジオネラニューモフィラ7群によるポンティアック熱の集団発生

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性感染症
登録日:2016/03/17
最終更新日:2016/05/26
衛研名:東京都立衛生研究所
発生地域:東京都渋谷区
事例発生日:1994年8月
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:推定患者数:45名(母集団45名)
死亡者数:0名
原因物質:Legionella pneumophila serogroup 7
キーワード:レジオネラ、ポンティアック熱、冷却塔、エアロゾル、集団発生

背景:
1976年の夏、米国フィラデルフィアのホテルで開催された在郷軍人会の参加者やホテル周辺の通行人などに原因不明の重症肺炎が集団発生し、感染者数221名のうち29名が死亡した。米国疾病管理センター(CDC)が行った原因調査によって、新しく発見された細菌によるものと判明し、本菌をレジオネラと命名した。
その後、世界各地で報告例が相次ぎ、我が国でも1979年から全国調査を行い、本症の発生を危惧していた。

概要:
1994年の夏、東京都渋谷区内の某企業の研修所にて宿泊研修中であった研修生43名と研修所職員2名の合計45名が発熱、咽頭痛、関節痛、頭痛、呼吸困難などの症状を訴え病院で受診した。
45名のうち35名が受診した病院での診療結果によると、年齢は18才から62才で平均29才、男性4名、女性31名であった。理学的所見では、咽頭痛を訴えた患者で軽度の咽頭粘膜の発赤を認め、検査所見では、白血球数の増加と血清CRP値の上昇が認められた。
治療は、非ステロイド系消炎剤の経口投与を行い、2~5日間で解熱した。しかし、2名は入院を必要とし5日間入院した。
研修所屋上の冷却塔水からレジオネラ属菌を検出し、血清群別試験の結果7群と判定された。この分離菌株を抗原とした抗体検査の結果1例に有意抗体上昇が認められたことと臨床症状からから、本事例はLegionella pneumophila serogroup 7によるポンティアック熱であったと推定された。

原因究明:
概要の項に記載した。

診断:

地研の対応:
渋谷保健所の行政指導によって冷却塔水の細菌検査を行った。その結果、8月24日と9月13日に採取した試料水から、Legionella pneumophila serogroup 7を分離した。

行政の対応:
本事例は、発生場所が渋谷区であったことから渋谷区が対応し、区が発生原因の究明について行政指導を行った。患者の診断等は、レジオネラ症に関心を持っている病院の医師が中心となって行った。

地研間の連携:
我が国では、本菌に関する研究を行っている地研が少ないため、特段の連携はなかった。

国及び国研等との連携:
特になし

事例の教訓・反省:
本事例が発生した1994年以前は、レジオネラ症に関する社会的関心が薄かった時代背景があり、散発事例を含め、実際にレジオネラ症が発生していても見逃す可能性もあるので今後は、きめの細かい監視体制を組む必要性が強く示唆された。

現在の状況:

今後の課題:

問題点:

関連資料:
1) 「Legionella pneumophila serogroup 7によるPontiacfeverの集団発生例」森正道ほか、感染症学雑誌、第69巻、第6号、646-652
2) 「Legionella pneumophila serogroup 7によるPontiacfeverの集団発生例・疫学調査結果」藪内英子ほか、感染症学雑誌、第69巻、第6号、654-664