No.378 カンピロバクター・ジェジュニ及び病原大腸菌による集団食中毒事件

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/17
最終更新日:2016/05/26
衛研名:札幌市衛生研究所
発生地域:札幌市清田区
事例発生日:1982年10月
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:7,751名
死亡者数:0名
原因物質:カンピロバクター・ジェジュニ、病原大腸菌
キーワード:細菌、大規模食中毒、2菌種による食中毒、飲料水、カンピロバクター・ジェジュニ、病原大腸菌

背景:
カンピロバクター・ジェジュニは、1978年アメリカで2件の集団下痢が流行し、その原因であることが判明し大きな反響を呼んだ。日本においては厚生省が1978年後半から下痢研究班の作業としてこの菌の検査を行ったところ、散発性下痢の原因としてサルモネラ、腸炎ビブリオを上回ることが確認された。
その後、厚生省は1982年3月11日付けで、カンピロバクターに起因した急性胃腸炎又は下痢症は食中毒として取り扱うよう通知した。
札幌市では1981年6月に患者数112名の食中毒があった。これは中学生が修学旅行後に発症した事例で原因施設、原因食品とも不明であった。

概要:
1982年10月市内清田区のスーパーマーケットが開店し、同店を利用した客が下痢腹痛等の食中毒症状を呈した。その後の調査で本食中毒は患者数7,000名を超える我が国最大規模のものとなった。
疫学調査によると、10月9日(土曜日)に開店した同店を利用した周辺住人のうち小学生が週明けから下痢腹痛等で欠席し、その数が増加したことから10月14日、本市教育委員会は保健所に通報した。また、同店利用者からの届け出も保健所に相次いであった。
10月16日、同店は自主休業に入った。保健所は同店を立ち入りし、井戸ピット内に汚水が溜まっているのを発見した。
10月19日、本市公衆衛生部はこの食中毒の原因を細菌検査結果からカンピロバクターと病原大腸菌によるものと発表した。
10月20日、患者数2,000名を超えた。
10月21日、本市は集団食中毒原因究明委員会を設置した。井水給水施設、周辺排水路等を調査し、井水給水施設の塩素滅菌装置の1台が使用不能になっていたことが判明した。
11月6日、原因究明委員会を開催し、感染源を同店の飲料水とほぼ断定した。
11月9日、同店に対し食品衛生法第4条違反で10日間の営業停止処分、給水設備の洗浄を含む改善指示書を交付した。
12月6日、本市公衆衛生部は衛生状態確認のためふきとり検査を実施した。
12月15日、同店は再オープンした。

原因究明:
届け出後直ちに実施した便、吐物、食品、土壌、ふきとりの食中毒菌検査の結果、カンピロバクター・ジェジュニが16名、病原大腸菌が42名の便から検出され、本市公衆衛生部はこれら2菌による食中毒と判断した。
その後の原因究明の再調査で、井水ピット周辺の土壌及び浸出水(10月30日採取)からカンピロバクター・ジェジュニ、病原大腸菌、井水(11月4日採取)から病原大腸菌が検出され、井水が汚染されていたことが推定された。

診断:

地研の対応:
本食中毒は患者数が多く、原因が飲料水であることが予想され、原因究明のための大規模な環境調査も実施することにしたことから、それぞれの検査を担当する3課3係にわたる検査体制と全所協力体制を敷いた。

行政の対応:
患者数が2,000名を超えた時点で、集団食中毒原因究明委員会(委員長厚生局長)を設置し、公衆衛生部、保健所、衛生研究所をはじめとする関係部署全体での協力体制で原因究明に当たった。

地研間の連携:
カンピロバクター・ジェジュニの血清型別、病原大腸菌の確認同定等を東京都及び北海道の衛生研究所に検査依頼した。

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
集団食中毒原因究明委員会を設置し、関係部署全体での協力体制で原因究明に当たった。この委員会の設置により、再三にわたり井水、土壌、排水路等の検査を行い、その結果、井水、土壌などから病原大腸菌、カンピロバクター・ジェジュニが検出され、井水の汚染がこの食中毒の原因となったことが推定された。
今後とも患者数が多い場合や重症患者がいる場合など必要に応じ、食中毒原因究明委員会を設置し、原因を究明し食中毒の防止を図るべきと思われる。

現在の状況:

今後の課題:
カンピロバクターの検査は細菌検査の中でも日数がかかるため迅速検査法の開発が望まれる。

問題点:

関連資料: