No.496 給食センターに発生した大型食中毒事件

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/17
最終更新日:2016/05/26
衛研名:岐阜県保健環境研究所
発生地域:大垣市
事例発生日:1983年9月8日
事例終息日:
発生規模:摂食者数4,111名
患者被害報告数:3,045名
死亡者数:0名
原因物質:
キーワード:食中毒、給食センター、腸炎ビブリオ、菌増殖要因、食中毒の企業活動への影響

背景:
大垣市内には中小企業が多く、従業員の昼食には民間の給食センターを利用しているところが多い。この事例では、1つの食中毒事件が企業活動にも大きな影響を及ぼす事例となった。

概要:
昭和58年9月9日午前6時30分頃、羽島保健所から大垣保健所へ「A病院へ多数の食中毒患者が来院しており、患者に共通する食品は大垣市内O給食センターの給食が疑われる」と連絡が入り、6時40分頃にはB病院からも同様内容の届出があった。O給食センターでは9月8日早朝に昼食用として給食を調製し大垣市他周辺市郡の493事務所へ2,500食配達していたようであった。給食弁当の摂食者のうち早発症状は9月8日23時頃にみられており、ピークは9月9日3時頃である。患者は9日未明にかけA病院、B病院はじめ周辺医療機関に殺到した。患者はほぼ9日夜までに発生し9日2時頃を山とする一峰性の分布を示した。

原因究明:
ふき取り検査、使用井戸の検査、食品8検体の検査、患者の検便がそれぞれ実施されたが、26人の検便のうち25人の検便から腸炎ビブリオが、また、食品のうち「きゅうりとちくわの中華あえ」から同菌が検出され、他の病原菌は検出されず、「腸炎ビブリオ」が原因菌であり、「きゅうりとちくわの中華あえ」が原因食と断定された。きゅうりは冷凍いかの調理された調理台で調理されており、調理台を通して汚染されたと思われる。きゅうりは常温で重石を半日置いた後ちくわと中華あえにされていた。

診断:

地研の対応:
衛生研究所では保健所の検査への応援、細菌の同定を分担した他、調理台を通し、きゆぅり塩漬け、ちくわとの中華あえに至る再現実験を行い腸炎ビブリオの増殖を確認した。

行政の対応:
管轄である大垣保健所が中心となり、本庁担当課、衛生研究所の協力のもとに患者調査、環境調査、菌検索などが実施された。
大垣保健所はO給食センターに対し営業の禁止、及び施設の整備改善命令などを出した。
県担当課はこの事例を教訓に、従来の監視記録をより一層整備するため、感染症サーベーランスに使用しているコンピューターを活用した食品衛生監視記録システムを構築し、問題施設のフォローアップなどが容易となった。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
職場や学校の集団給食と同様、民間給食センターに起因する食品汚染事故は大事故となりやすく衛生行政上重大事故である。今回の集団食中毒は幸い死者は発生しなかったが、多数の患者発生となり、医療機関でも総動員体制をとるなどパニック状況となり保健所や地研にとっても大変な状況となった。また、O給食センターを利用していた各事業所では多くの従業員の欠勤により臨時休業するなど周囲への影響も大きかった。

現在の状況:
施設の整備改善がされないまま営業廃止の届が提出された。

今後の課題:
集団給食施設における事故対策には業者側の意識が大切であり、行政側では保健所や地研において不測の事態に常に対応出来る体制を整える必要がある。

問題点:

関連資料:
1)岐阜県大垣保健所、O給食センターに係る食中毒事件の記録、(1984)