No.594 学校給食による病原性大腸菌食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/17
最終更新日:2016/05/26
衛研名:福島県衛生研究所(平成12年度までの名称:福島県衛生公害研究所)
発生地域:福島県安達郡本宮町・大玉村
事例発生日:1998年9月
事例終息日:
発生規模:摂食者数3,772名
患者被害報告数:患者数1,197名
死亡者数:0名
原因物質:病原性大腸菌(血清型O44:H-)
キーワード:食中毒、学校給食センター、病原性大腸菌、発生要因、原因食品、HACCP

背景:
学校給食においては衛生管理にHACCPを導入してきており、新設等の施設は、HACCPの概念に基づく施設として充実されてきている。本事例は、平成10年4月に共用開始された最新の設備を有する施設で発生した大規模食中毒である。

概要:
平成10年9月9日本宮町保健福祉課より同町内の小学生多数が、下痢・腹痛の食中毒様症状を呈し、同町内の医療施設で加療しているとの通報が福島県県北保健所にあった。発症者に共通する食品は、当該学校給食センターで調理された食品であった。
同施設が提供している本宮町及び大玉村内の全ての学校で同様の症状を呈した者が、児童、生徒、教師合わせて1,197名の患者が確認された。
県内の食中毒史上二番目の大規模な事故となった。症状は比較的軽く、入院加療を要する

原因究明:
患者便133検体中95件から病原性大腸菌(血清型O44:H-)が検出された。しかし、食材、ふき取り等からは検出されなかった。
汚染経路及び発生要因については、加熱済み食品が、その後の調理行程で汚染され、摂食までに増菌、発生に至ったものと推定された。
原因食品は特定できなかったが、原因物質、患者発生状況から推察すると9月7日の昼食である可能性が高かった。

診断:

地研の対応:
食中毒等集団発生時の当該保健所検査業務に援助が必要な場合、近隣保健所及び衛生研究所の応援体制がとられている。
衛生研究所は、患者便の検査等を分担した。

行政の対応:
福島県県北保健所は、9月9日事件探知、調査開始し、事故の拡大と再発防止のため当該学校給食センターに対し給食業務自粛を指導した。近隣保健所及び衛生研究所の検査の協力を得、関連施設の立ち入り調査等実施し、それらの疫学調査結果より9月12日当該学校給食センターを原因施設とする食中毒と決定し3日間の業務停止の行政措置等を講じた。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:
分離された病原性大腸菌O44の精査等を国立感染症研究所に依頼した結果、病原性大腸菌(血清型O44:H-)が確認され、PFGE型すべて同一であることから今回の食中毒の原因物質と考えられた。

事例の教訓・反省:
本事例は、最新の設備を有する施設であったこと等から、改めて、食中毒は人為的要因が大きいことを認識させられた。
今回の事故処理に際して、学校関係機関等の円滑な協力が得られ、迅速に調査、究明等できた。このことから、常に関係機関とは連絡を密にしておく必要性が再認させられた。

現在の状況:
当該学校給食センターでは、再発防止対策のため、9月23日まで自粛し、再開した。

今後の課題:
再発防止のためには、その施設に応じた作業マニュアルを作成し、全職員が理解した上で実行し、一般的衛生管理を徹底した上でのHACCPの手法による衛生管理の導入を進めていくことが必要と認められた。

問題点:

関連資料: