[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/17
最終更新日:2016/05/26
衛研名:埼玉県衛生研究所
発生地域:埼玉県他1都1県
事例発生日:2001年8月
事例終息日:2001年8月
発生規模:
患者被害報告数:67名
死亡者数:0名
原因物質:腸管出血性大腸菌 O157
キーワード:食中毒、集団発生、diffuse outbreak、和風キムチ、腸管出血性大腸菌O157
背景:
腸管出血性大腸菌O157によるdiffuse outbreakが多発しているが、原因食品の推定及び菌の検出は困難な状況が続いている。
2001年8月埼玉県、東京都および群馬県でdiffuse outbreakの発生があり疫学調査により原因食品が推定されたが、推定の段階で情報が公開されたことより、患者宅から提供された食品からO157が検出された。
また、同時期に埼玉県でのO157による集団発生があり、原因食品が共通であったことにより事件は大きく前進した。
Diffuse outbreakの調査では、関連各機関の迅速な連携・情報の共有が重要であり、システム整備を模索している中で、今回の事例では、パルスネットでのPFGE情報等がうまく機能した事例でもあった。
概要:
埼玉県内の児童自立支援施設(児童数47名)で2001年8月23日から発熱、下痢(血便)を症状とする食中毒が発生した。患者は13名で非発症保菌者は15名であった。
同時期、埼玉県で10名、東京都28名の散発事例が相次ぎ、東京都では詳細な喫食調査結果により、埼玉県内製造の「和風キムチ」を原因食品と推定し、調査依頼があった。
児童自立支援施設でも8月20日の夕食に調査依頼の和風キムチを使用した「キムチ納豆」が提供されていた。
製造所からの回収品等は、全て不検出であった。
埼玉県内の散発患者についても再度の喫食調査で「和風キムチ」の喫食が明らかになった。
さらに積極的情報公開により衛研に搬入された「和風キムチ」1検体から菌が検出された。
各検出菌株の遺伝子パターンが一致し、今回の事例は「和風キムチ」を原因食品とする、腸管出血性大腸菌O157によるdiffuse outbreakと判明した。
製造所への監視結果から「和風キムチ」がO157に汚染されたと推定される8月15日前後は、製造所はお盆休みであったが、注文があり家族だけで製造したという特殊事情も判明した。
有機野菜を標榜している白菜を原料としたものであったが、この「和風キムチ」は仕入れ状況記録等が不備であったため、原料に関する遡り調査はできなかった。
なお、今回の「和風キムチ」は製造工程中に殺菌・消毒工程はなく、塩漬けの一夜漬けにキムチ調味液を添加したものであり、完全な発酵食品ではない。
原因究明:
今回のdiffuse outbreakは、患者等の発生状況、喫食調査、細菌学的検査の結果から、腸管出血性大腸菌O157汚染キムチを喫食することにより発生したことが判明したが、製造施設での各種記録が不備であったため、その汚染元までは追求することができなかった。
診断:
地研の対応:
平成13年度、埼玉県衛生研究所は食品安全対策研究事業として、「食品媒介感染症における危機対応の迅速化に関する研究」を実施しており、効率的・迅速に検査を実施することができたと考えている。
当所、中毒発生施設所管保健所、製造施設所管保健所及び県生活衛生課が頻繁に連絡会議を開催し情報交換と今後の対応を検討した。
東京都衛生研究所とは、パルスネットでのPFGE画像の交換や菌株の交換を行った。
また、国立感染症研究所には菌株を送付し、そのPFGEパターンが当時全国的に流行していたパターンと一致していたことが判明した。
行政の対応:
原因食品推定の早い段階に記者発表を行い、一般住民からの情報を募った。
地研間の連携:
国及び国研等との連携:
事例の教訓・反省:
1. Diffuse outbreakの早期探知の必要性を痛感するとともに、疫学調査の重要性を再確認し、CDCの調査法を取り入れた喫食調査票を参考とし、埼玉版喫食調査票(腸管出血性大腸菌感染症発生原因調査票)を完成させた。
2. 「腸管出血性大腸菌感染症発生時における原因調査事業」を実施する担当として、所内に新たに「感染症疫学情報担当」を設置した。
3. 遡り調査の必要性と難しさを改めて感じた。食品監視時に製造工程等での記録を製造販売者の責務として指摘する等も必要と思われる。
4. Diffuse outbreak発生時は、原因追及と被害拡大の防止の為に、From farm to Tableを視野に入れた広範囲な調査が必要となる。現在の食品流通の複雑さに対応できる行政機関内部の協力・調整が必要となる。
現在の状況:
今後の課題:
問題点:
関連資料: