No.732 社員食堂のイワシの蒲焼きによるヒスタミン中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都立衛生研究所
発生地域:東京都中央区
事例発生日:200年10月
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:12名
死亡者数:0名
原因物質:ヒスタミン
キーワード:食中毒、ヒスタミン、社員食堂、イワシ

背景:
ヒスタミンによる食中毒は、魚介類中の遊離のヒスチジンが、Morganella morganii等のヒスチジン脱炭酸酵素産生菌の増殖により脱炭酸され、ヒスタミンが生成されることにより発生する。したがって、これまで発生したヒスタミンによる食中毒事例でも、イワシ、マグロ、ブリ等遊離のヒスチジンを多く含有する魚種で多く発生している。症状は、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、頭痛、顔面紅潮、発疹等で、発症時間は摂食直後から1時間以内の事例が大半である。

概要:
平成12年10月18日午後4時30分、某株式会社から中央区日本橋保健所に、「社員多数が吐き気と顔面紅潮等の症状を呈している。」旨の届け出があった。日本橋保健所が調査した結果、患者全員は18日の昼食を同社の社員食堂で食べており、共通食は「イワシの蒲焼き」で、摂食20~30分後から吐き気、顔面紅潮、嘔吐、発疹等の症状を呈していることが判明した。
10月19日、診断した医師から食中毒の届け出があり、また、都立衛生研究所における検査の結果、残品の「イワシの蒲焼き」及び原材料の「イワシの開き」からヒスタミンが検出されたことから、日本橋保健所は、当該社員食堂で調理された給食を原因とする食中毒と断定した。

原因究明:
本橋保健所により、当該社員食堂から調理済みの「イワシの蒲焼き」3検体及び原材料の「イワシの開き」14検体が収去され、衛生研究所に搬入された。
患者の摂食状況及び症状からヒスタミンによる食中毒が疑われた。そこで、これら17検体についてヒスタミンの分析を行った。
試料に水を加えホモジナイズ後、トリクロロ酢酸で除たんぱくを行い、ろ過し試験溶液とした。この溶液をシリカゲルプレートにスポットした。展開溶媒:アセトン-アンモニア水(9:1)で展開した後、フルオレスカミン・アセトン溶液を噴霧して蛍光スポットの
有無を確認し、さらにニンヒドリン・アセトン溶液を噴霧して赤紫色スポットの確認を行った。
TLCでヒスタミンを検出した試料については、標準品及び試験溶液の一定量を分取し、ダンシルクロライドで蛍光ラベル化した後HPLCで分析を行った。HPLC条件:カラム;Inertsil ODS-80A(4.6mmx250mm)、移動相;アセトニトリル-水(62:38)、流速;1.5ml/min、カラム温度;40℃、励起波長;325nm、蛍光波長;525nmで行った。
その結果、調理済みの「イワシの蒲焼き」3検体すべてからヒスタミンが試料100gあたり26~76mg検出された。また、「イワシの開き」14検体中13検体からヒスタミンが15~460mg/100g検出された。さらに、原材料の仕入れ元の業者に冷凍保管されていた「イワシの開き」について分析したところ、18検体中2検体からヒスタミンが22及び150mg/100g検出された。原材料のイワシは新潟沖で漁獲され、鳥取県で水揚げ、加工された後、冷凍で流通されたものであった。調査の結果、流通過程では異常が認められなかったことから、加工時にイワシがヒスチジン脱炭酸酵素産生菌に汚染され、ヒスチジンが生成したものと推察された。

診断:

地研の対応:

行政の対応:

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:

現在の状況:

今後の課題:

問題点:

関連資料: