No.1138 ドクツルタケによる食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:神戸市環境保健研究所
発生地域:神戸市/三田市
事例発生日:2003年11月5日
事例終息日:
発生規模:1家族
患者被害報告数:2名
死亡者数:0名
原因物質:ドクツルタケ毒素
キーワード:ドクツルタケ、α-アマニチン、β-アマニチン、ファロイジン、肝腎機能障害

背景:
2003年11月にキノコ(ドクツルタケ)が原因と考えられる食中毒事例が発生した。

概要:
2003年11月3日、三田市在住の夫婦(夫60歳、妻58歳)が、知人からもらった白いキノコを湯がき、翌朝サラダにして、喫食。5日朝から激しい下痢・嘔吐の症状を示した。近くの医療機関で受診した後、同日、神戸市中央市民病院に搬送された。患者は、入院時、意識清明で肝機能検査の結果も正常範囲内であったが、致死量を超える中毒物質を摂取しているおそれがあったため、大量輸液、下剤・活性炭の頻回投与、吸着式血液浄化法、ペニシリンGとビタミンCの大量投与などの処置を受け、夫は11日目に、妻は15日目に退院した。

原因究明:
当研究所では、キノコ各部位の形態学的観察と3%KOHによる笠部分の黄色反応、Meixner試験による青色反応などから、ドクツルタケと鑑定した。
また、原因物質の抽出を行い、HPLCにより分析した結果、α-アマニチン、β-アマニチン、ファロイジンと暫定的に同定した。
さらに、日本電子(株)にESI-TOF-LC/MSによる測定を依頼し、最終的な同定を行った。

診断:

地研の対応:
6日早朝、調理済みキノコの残品があったため、当研究所に鑑定が依頼された。

行政の対応:
毒キノコ中毒についてマスコミに公表することにより、危険性の周知等を行った。

地研間の連携:
分析法に関する情報を名古屋市衛生研究所から入手できたので、速やかに分析できた。

国及び国研等との連携:
今回の事例では特になかった。

事例の教訓・反省:
今回は、残品があったため、形態による分析が可能であり、早急に鑑定できた。
また、すぐに医師に鑑定結果を連絡することにより、適切な治療を施すことができた。一般的には、毒キノコ等自然毒に対する市民啓発が必要である。

現在の状況:
HPLCでは、暫定的な同定しかできず、最終的な同定には、感度の高いESI-TOF-LC/MSによる測定が必要である。

今後の課題:
今後とも、神戸市中央市民病院との密接な連携が必要不可欠である。

問題点:

関連資料:
1) 伊藤光男、小川淳、小島信彰、田中敏嗣、有吉孝一、佐藤愼一(2004) キノコ中毒の原因物質の同定 神戸市環境保健研究所報 第32巻 81-83
2) 小川淳、伊藤光男、小島信彰、八田知之、田中敏嗣、有吉孝一、佐藤愼一(2004)ドクツルタケ(Amanita Vivosa(FR) Bertillon)によるキノコ中毒事例について 地方衛生研究所全国協議会近畿支部理化学部会講演要旨集
1) 寺田久屋、坪内春男、阿部政夫、宮部正樹 (1995) 調理食品中のアマニタトキシンの定量、名古屋市衛研報 第41巻 8-10