No.1170 サンマピリ辛揚げ定食のヒスタミンによる食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都健康安全研究センター
発生地域:東京都千代田区
事例発生日:2004年10月19日
事例終息日:
発生規模:摂食者8名
患者被害報告数:6名
死亡者数:0名
原因物質:ヒスタミン
キーワード:ヒスタミン、サンマ、サンマピリ辛揚げ、発疹、不揮発性腐敗アミン

背景:
ヒスタミンによる食中毒は、魚介類中の遊離のヒスチジンが、Morganella morganii等のヒスチジン脱炭酸酵素産生菌の増殖により脱炭酸され、ヒスタミンが生成されることにより発生する。したがって、これまで発生したヒスタミンによる食中毒事例でも、イワシ、マグロ、ブリ等遊離のヒスチジンを多く含有する魚種で多く発生している。症状は、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、頭痛、顔面紅潮、発疹等で、発症時間は摂食直後から1時間以内の事例が大半である。

概要:
平成16年10月19日、千代田区内の医療機関の医師から千代田区保健所に、続けて3名の患者が発疹等の症状で来院し、事情を聞いたところ同一の飲食店の利用がある旨の連絡があった。保健所による調査の結果、10月19日の昼食として千代田区内の飲食店が提供したサンマピリ辛揚げ定食を摂食した8名のうち6名が、摂食後、顔面紅潮、発疹、ほてり等の症状を呈し、医療機関に受診しており、患者の共通食はサンマピリ辛揚げ定食のみであることが明らかとなった。

原因究明:
食品衛生監視員により収去され、健康安全研究センターに搬入された試料は、当該飲食店に保管されていたサンマピリ辛揚げ定食の食材であるサンマの南蛮漬け、赤だし用みそ、白みそ、南蛮漬け用ドレッシング、及び飲食店に食材を納入していた業者に保管されていたサンマの南蛮漬け3検体、計7検体であった。患者の症状及び摂食状況から、原因物質はヒスタミンが、原因食品はサンマピリ辛揚げ定食が疑われた。そこで、これら試料について、ヒスタミン、カダベリン、チラミン、スペルミジン及びプトレシン等の不揮発性腐敗アミン類の分析を行った。その結果、当該飲食店に残されていた食材のうち、サンマの南蛮漬けからヒスタミンが240mg/100g検出された。また、ヒスタミン以外の不揮発性腐敗アミン類も、カダベリンが44mg/100g、プトレシンが32mg/100g検出された。他の食材からはいずれの不揮発性腐敗アミン類も検出されなかった。また、納入業者に保管されていたサンマの南蛮漬け3検体からもヒスタミンがそれぞれ、100mg/100g、12mg/100g、26mg/100g検出された。その他の不揮発性腐敗アミン類は、カダベリンがそれぞれ16mg/100g、11mg/100g、8mg/100g検出された。

診断:
過去のヒスタミンによる食中毒事例では、ヒスタミンが100mg/100g以上の濃度で発生しているが、カダベリン等の不揮発性アミンの存在により作用は増強されるといわれている。本事例も、患者の共通食であるサンマピリ辛揚げ定食の食材であるサンマの南蛮漬けから高濃度のヒスタミンが検出されたこと及び患者の症状から、ヒスタミンによる食中毒であると断定された。納入業者に保管されていたサンマの南蛮漬けからもヒスタミンが検出されたことから、サンマの水揚げから、流通、南蛮漬けの加工のいずれかの過程で、サンマがヒスチジン脱炭酸酵素を有する菌に汚染し、ヒスタミンが生成されたものと考えられた。

地研の対応:

行政の対応:

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:

現在の状況:

今後の課題:

問題点:

関連資料: