No.1173 幼稚園で発生した腸管出血性大腸菌O26による集団食中毒事例

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:横浜市衛生研究所
発生地域:横浜市 青葉区、都筑区、鶴見区、港北区、緑区、旭区
事例発生日:2003年9月8日
事例終息日:
発生規模:検便実施者数5,467名、食中毒患者141名、感染者数449名、死亡者数0名
患者被害報告数:検便実施者数5,467名,食中毒患者141名,感染者数449名
死亡者数:0名
原因物質:腸管出血性大腸菌 O26:H11 VT1産生株
キーワード:腸管出血性大腸菌、食中毒、集団感染、O26

背景:
腸管出血性大腸菌感染症は、出血を伴う下痢やその後に溶血性尿毒症症候群等を引き起こすことが特徴である。その感染の多くは血清型O157が原因で、各地で感染事例が見られるようになったが、一方、病原体検出情報によるとここ数年O26による食中毒も増加し報告されている。

概要:
2003年9月17日に異なる医療機関から幼稚園児2名の「O26による腸管出血性大腸菌感染症」の発生届があり、翌日、他の幼稚園児1名について別の医療機関から同じ「O26」の届出があった。これらの幼稚園は共通の給食施設を利用していることから食中毒と感染症の両面から調査を行った。その結果、2区6園から449人の腸管出血性大腸菌O26:H11、VT1の菌検出者が確認された。今回の事例は感染者が市内6園で生活圏が異なり、発症日が9月10日から11日に集中していること、6園より分離された検出菌のXba I制限酵素による遺伝子DNA断片多型性解析が、パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)で同一のパターンを示したことにより、O26、VT1を原因とする食中毒と断定された。

原因究明:
本事例では、同一業者から給食を受けていた市内6区15幼稚園等を調査した。その結果、感染者449名のうち、2003年9月8日に給食を摂食し同月10日から14日に下痢、腹痛等の症状があった者を患者とした。摂食者数は3,476名、患者数は141名(発症率4.1%)であった。
検査の結果、2区6園で、園児367名、園児の家族60名、園の職員20名、その他(友人)2名よりO26が分離された。この分離された検出菌のPFGEは、同一の泳動パターンを示した。

診断:

地研の対応:
原因物質究明のため、福祉保健センターから搬入された関係園の職員・園児および家族検便等の検査、給食施設の検食、水、ふき取りおよび従業員便等の検査を行った。併せてPFGEを用いてXba I制限酵素による遺伝子DNA断片多型性解析を行った。また、民間検査所において分離された菌株について確認検査を実施した。なお、今回の集団食中毒事例への対応は「横浜市衛生研究所健康危機管理対策実施要領」および「横浜市衛生研究所緊急時感染症検査体制マニュアル」に基づき、全所的応援体制を構築し、最優先業務として行われた。

行政の対応:
本事例は食中毒と感染症の両面から調査を開始し福祉保健センター職員が症状や喫食状況の聞き取り調査を行った。また、今回、初めて民間検査所に検査の一部を委託した。(陽性例についての確認等は当所で行った。)

地研間の連携:
神奈川県内の4衛生研究所・衛生試験所と密接な連絡を取りながら分離培地、診断用血清の借用を受け検査を遂行した。

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:

現在の状況:

今後の課題:
検査について、関係者全員の感染確認を行うことになり、行政検査として実施した。その結果、対象者が5千名を超える規模となったため、今回、初めてその一部を民間検査機関に委託したが、今後も大規模な事例で同様の措置が考えられるところであり、平常時から健康危機管理として、培地、診断用血清等の確保や、他自治体の衛生研究所等との連携体制を構築しておく必要がある。

問題点:

関連資料: