[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都健康安全研究センター
発生地域:岐阜県恵那市
事例発生日:2005年7月
事例終息日:2005年9月28日
発生規模:不明
患者被害報告数:不明
死亡者数:1名
原因物質:不検出
キーワード:健康食品,健康被害,真光元,医薬品成分
背景:
岐阜県恵那市の自然食品研究所で,重度の糖尿病患者である女子生徒1名が,健康食品「真光元」により病状が改善されると言われ服用したが,改善せず死亡し,社会問題となった.女子生徒が食べていた健康補助食品「真光元」の製造所本社が都内江戸川区にあることから,東京都薬事監視員が監視に入り,製品の任意提出を受けた.そこで当所では有害物質および医薬品成分の試験を行った.
概要:
真光元(しんこうげん)は、ヒメガマ(ガマ科の多年草植物)を微粉末にしたと表示されることから,ヒメガマの花粉・葉・茎・花序の有無を顕微鏡下で観察した.また副腎皮質ホルモン28種,糖尿病用薬5種,有害重金属5種について分析した.しかし各医薬品は検出せず,有害重金属も人体に作用を及ぼす量は検出されなかった.ヒメガマの花粉は漢方で蒲黄といい,専ら医薬品にしか使用できない植物部位であるが,これも検出しなかった.
原因究明:
診断:
地研の対応:
ヒメガマの花粉を中心とした植物各部位の鑑別試験は,東京都薬用植物園植栽品,山梨県野生品及び蒲黄(漢方薬原料,東京市場品)を対照に実体顕微鏡及び光学顕微鏡(1,000倍)を用い行なったが,厚い膜で覆われている球形あるいは亜球形の特徴を示す花粉は認められなかった.製品からは単子葉植物組織片と思われるものが観察された.
TLCにより成分スクリーニングを行なった(検出:10%硫酸噴霧、加熱後UV照射,アニスアルデヒド硫酸噴霧)が,ヒメガマ各部位とは異なり,製品からは僅かに認めるファイトステロール以外特徴的なスポットは検出しなかった.グルコース,シュークロースなどの糖,フラボノイドなどの有機物はほとんど検出しない.
HPLC-PDAによる各医薬品の試験は下限値を50ppmに設定して行なった.副腎皮質ホルモン28種:吉草酸ジフルコルトン,吉草酸ベタメタゾン,吉草酸酢酸プレドニゾロン,コハク酸ヒドロコロチゾン,コハク酸ヒドロコロチゾンNa,コハク酸プレドニゾロン,酢酸コルチゾン,酢酸ベタメタゾン,酢酸デキサメタゾン,酢酸ヒドロコルチゾン,酢酸プレドニゾロン,ターシャリーブチル酢酸プレドニゾロン,デキサメタゾン,トリアムシノロン,トリアムシノロンアセトニド,ヒドロコルチゾンカプロエート,ヒドロコルチゾン,フルオロメトロン,プレドニゾロン,プロピオン酸ベクロメタゾン,プロピオン酸クロベタゾール,プロピオン酸アルクロメタゾン,フルオキシノロンアセトニド,ベタメタゾン,メタスルホ安息香酸デキサメタゾンNa,酪酸クロベタゾン,吉草酸デキサメタゾン,酢酸ジフロラゾン.糖尿病用薬5種:クリベンクラミド,グリグラジド,クロルプロパミド,トルブタミド,グリメピリド.いずれも下限値以上のピークは出現せず,含有されていないことが判明した.
重金属の水銀は水銀測定装置により下限値を25ppmに設定し,イオウはHPLC/PDA装置により下限値を1.0ppmに設定し行なったが,いずれも検出しなかった.カドミウム及び鉛はICP/MS装置により確認及び定量試験を行なったところ,前者は35ppb,後者は1.1ppm検出した.ヒ素は原子吸光装置を用いて分析したところ33ppb検出した.このように一部有害重金属を検出したが,その含量は低く,健康被害を及ぼす量ではないと考えられる.
考察:東京都薬事監視員の立入調査によると,本製品は中国で植物を粉末として製造された後,1年間程ムロに保管された(製造業者は『熟成させる』という)後,製品化されたもので,バクテリアの繁殖により成分が減少した可能性が高い。
行政の対応:
地研間の連携:
国及び国研等との連携:
事例の教訓・反省:
現在の状況:
今後の課題:
問題点:
関連資料: