No.1278 ワラサ焼き魚定食のヒスタミンによる食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都健康安全研究センター
発生地域:発生地域:東京都千代田区
事例発生日:2006年2月23日
事例終息日:2006年2月24日
発生規模:発生規模:摂食者188名
患者被害報告数:被害者数:36名
死亡者数:0名
原因物質:原因物質:ヒスタミン
キーワード:キ-ワ-ド:ヒスタミン、ワラサ、西京焼き、顔面紅潮、発疹

背景:
ヒスタミンによる食中毒は、魚介類中の遊離のヒスチジンが、Morganella morganii等のヒスチジン脱炭酸酵素産生菌の増殖により脱炭酸され、ヒスタミンが生成されることにより発生する。したがって、これまで発生したヒスタミンによる食中毒事例でも、イワシ、マグロ、ブリ等遊離のヒスチジンを多く含有する魚種で多く発生している。症状は、顔面紅潮、発疹、頭痛、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢等で、発症時間は摂食直後から1時間以内の事例が大半である。

概要:
平成18年2月23日午後4時25分、千代田区内の官公署内診療所から「23日昼に庁内の食堂で『焼魚定食』をたべた16名が、同日13時頃から顔面紅潮、発疹、下痢等の症状を呈し、当診療所を受診した。」旨の連絡が千代田区千代田保健所にあった。保健所は探知後直ちに当該飲食店及び患者の調査を開始した。調査の結果、昼食の焼魚定食は「ワラサ西京焼き」であり、188食提供していた。当該飲食店は庁内に2ヶ所の施設を有し、1施設で「ワラサ西京焼き」の仕込み及び保管を、他の施設で加熱調理及び盛り付けを行った。患者は36名で、いずれも「ワラサ西京焼き」を食べた後4時間以内に顔面紅潮、発疹、下痢等の症状を呈していた。
2月27日、千代田区千代田保健所は、患者の共通食は当該飲食店の「焼魚定食」の他にはないこと、東京都健康安全センターにおける検査の結果で「ワラサ西京焼き」からヒスタミンが検出され、患者の症状もこれによるものと一致したこと、患者を診察した医師の診断が食中毒であることを確認したことから「ワラサ西京焼き」を原因とする食中毒と断定した。

原因究明:
千代田保健所により、当該飲食店に残されていた「ワラサ西京漬け」及び「ピリ辛ねぎ」の2検体が収去され、東京都健康安全研究センターに搬入された。患者の摂食状況及び症状からヒスタミンによる食中毒が疑われた。そこで、これら試料について、2004年10月に報告した「サンマピリ辛揚げ」と同様の方法で、ヒスタミンの分析を行った。
その結果、「ワラサ西京焼き」の食材の「ワラサ西京漬け」からヒスタミンが220mg/100g検出された。また、ヒスタミン以外の不揮発性腐敗アミン類も、カダベリンが19mg/100g、チラミンが6mg/100g検出された。

診断:
ヒスタミン中毒の最低発症量は100mg/100gといわれているが、今回、患者の共通食である「ワラサ西京焼き」の食材である「ワラサ西京漬け」からヒスタミンが220mg/100g検出されたこと及び患者の症状から、ヒスタミンによる食中毒であると断定された。千代田保健所によると、原因となったのは「ワラサ西京焼き」で食材の保管状況に問題があったとされており、ワラサがヒスチジン脱炭酸酵素を有する菌に汚染され、ヒスタミンが生成されたものと考えられた。

地研の対応:

行政の対応:
当該飲食店を7日間の営業停止処分

地研間の連携:
なし

国及び国研等との連携:
なし

事例の教訓・反省:

現在の状況:
2人体制

今後の課題:

問題点:

関連資料:
東京健安研セ年報