[ 詳細報告 ]
分野名:化学物質による食品汚染
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:横浜市衛生研究所
発生地域:横浜市青葉区
事例発生日:2005年9月15日
事例終息日:
発生規模:1家族
患者被害報告数:1名
死亡者数:0名
原因物質:フェニトロチオン、キシレン、ケロシン
キーワード:フェニトロチオン、キシレン、ケロシン、害虫駆除用薬剤、有機溶媒臭、飲食店、調理場、湯葉巻き、GC/MS、FPD-GC
背景:
2005年9月に飲食店の調理場での害虫駆除が原因と考えられる、喫食苦情事例が発生した。
概要:
2005年9月15日に飲食店で湯葉巻きを喫食したところ、有機溶媒(ボンド)のような臭いを感じた。苦情者から提供された湯葉巻きと、参考品の湯葉巻き、さらに次の日に店より収去した湯葉巻きを検査したところ、フェニトロチオン(0.07,0.46,0.5ppm)、キシレン(140,870,89ppm)、ケロシン(120,700,46ppm)が検出された。福祉保健センターが飲食店を調査したところ、前日に害虫駆除のため、殺虫剤を噴霧していたことが分かった。殺虫剤の薬剤にフェニトロチオン、溶剤としてキシレンとケロシンが使用されていた。なお、参考品の湯葉巻きは、苦情品と同じ9月15日に同じ飲食店で作られ、保管してあったものである。このため、苦情品と同様に数値が高かった(フェニトロチオン0.46ppm、キシレン870ppm、ケロシン700ppm)と思われる。
原因究明:
1 検査方法
湯葉巻きをヘキサンで抽出し、この抽出液を試験溶液として、GC/MS及びFPD-GCを用いて確認及び定量を行った。
2 検査結果 フェニトロチオン キシレン ケロシン
苦情者から提供された湯葉巻き 0.07ppm 140ppm 120ppm
参考品の湯葉巻き 0.46ppm 870ppm 700ppm
次の日に店より収去した湯葉巻き 0.5ppm 89ppm 46ppm
診断:
地研の対応:
同センターからの依頼で、原因物質確定のために「苦情者から提供された湯葉巻き」、「参考品の湯葉巻き」、さらに「次の日に店より収去した湯葉巻き」についてGC/MS等により検査を行うこととした。
行政の対応:
検査の結果、苦情の原因が前日に行った殺虫剤の噴霧により、室内に残留する殺虫剤や溶剤が湯葉巻きを汚染したものと推察された。このため、同センターから飲食店に対して、1)調理場内の清掃及び整理整頓を徹底して衛生害虫の発生を抑える。2)食品のラップ掛けと有蓋容器への収納の徹底。3)冷蔵庫内排水口用蓋の設置等を指導した。
地研間の連携:
特になかった。
国及び国研等との連携:
特になかった。
事例の教訓・反省:
店内で害虫駆除を実施したが、これに使用した薬剤は低臭性のものではなかった。また、冷蔵庫底部の排水口の蓋が欠落していたため、外部の臭気がこの冷蔵庫内に進入した。さらに、湯葉巻きはラップをしないで保管をしていたなど、複数の条件が重なったため、このような事例が生じたと考えられた。
現在の状況:
横浜市衛生研究所健康危機管理対策実施要領により、関連の担当者を招集し、役割分担を行い、円滑に結果をだすことができた。
今後の課題:
特になし
問題点:
関連資料:
1 残留農薬検査告示法