No.1380 輸入衣服に付着して侵入したサソリによる刺症事例

[ 詳細報告 ]
分野名:原虫・寄生虫・衛生動物
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:沖縄県衛生環境研究所
発生地域:沖縄県
事例発生日:2006年10月26日
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:1名
死亡者数:0名
原因物質:キョクトウサソリ、Mesobuthus martensii
キーワード:サソリ、輸入衣服、刺症事例

背景:

概要:
平成18年10月、沖縄県の衣料服店でジーンズを試着した客が、その中に潜んでいた体長約5cmのサソリに大腿を刺される事例が発生した。激しい痛みを伴う腫れと微熱のため、患者は救急車で病院に運ばれ入院した。刺された脚は腫れたが、重症化することはなく5日後に退院した。

原因究明:
ジーンズは中国製で、商品は中国から日本に直接輸送されていたという情報から、サソリは中国から衣類に潜んで移入されたものと推察された。

診断:
まず専門書により当個体がキョクトウサソリ科Mesobuthus属のサソリと判明した。次に日本と中国に生息するMesobuthus属のサソリを文献で調べた。その結果、中国に生息するキョクトウサソリMesobuthus martensiiと判明し、最終的な同定に至った、との報告を同定を依頼した専門機関から受けた。

地研の対応:
持ち込まれたサソリを観察し、同定を試みた。しかし当所にはサソリに関する資料が不十分であったため、専門機関に同定を依頼した。また、当所が発行しているリーフレットに事件の概要を掲載し、関係機関に情報を提供した。

行政の対応:
病院にて医師および衣料服店店員に聞き取りの実施。サソリの確保・保管。

地研間の連携:
なし

国及び国研等との連携:
財団法人自然環境研究センターに同定を依頼。

事例の教訓・反省:
サソリの同定を実施している専門機関を把握していなかったため、依頼をし、同定結果が判明するまで時間を要した。

現在の状況:
財団法人自然環境研究センターより提供されたサソリの資料により、当所でも属までの同定が可能となった。

今後の課題:
今後も同様の事例は十分起こり得ると予想され、衛生動物の生息域については国内だけでなく、国外まで視野を広げ情報収集していく必要がある。また、他の専門機関への同定依頼が円滑に進むよう、事前に専門機関や担当部局を把握しておく必要がある。

問題点:
サソリに限らず、外来種は国内の専門書では扱われていないケースが多い。

関連資料:
最近10年間の衛生動物同定検査(平成9年度~18年度)(沖縄県衛生環境研究所報,第41号:49-55)