[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:健康安全研究センター
発生地域:東京都
事例発生日:2013年4月19日
事例終息日:2013年4月25日
発生規模:喫食者数92名
患者被害報告数:52名
死亡者数:0名
原因物質:エルシニア・エンテロコリチカ 血清群O8
キーワード:エルシニア・エンテロコリチカ、血清群O8、野菜サラダ
背景:
Yersinia enterocolitica(以下Y. enterocoliticaという)による集団下痢症事例は1972年に初めて報告されて以降、わずか20例が報告されているにすぎない。今回、東京都内で発生したY. enterocolitica 血清群O8による食中毒では、検食から原因菌を検出することができた。
概要:
2013年4月25日、某予備校から「管内の寮で4月19日~25日の間、約20名の寮生が発熱、腹痛等の症状を呈しており、3名が入院している」と保健所に連絡があった。
調査の結果、寮生92名のうち52名が発症していたことから、発症者および調理従事者の検便を当センターで実施したところ、発症者26名中18名、調理従事者11名中2名からY. enterocolitica 血清群O8が検出された。発症者糞便および検食から同菌が検出されたこと、発症者の共通食が寮の食事に限定されることなどから、寮の食事を原因とする食中毒と断定された。
原因究明:
原因食品を特定する目的で、4月14日~20日の期間の検食を検査したところ、4月17日夕食の野菜サラダからY. enterocolitica 血清群O8が検出された。また、同菌が検出された調理従事者2名は野菜サラダを賄いとして喫食していた。この施設では別の日に豚肉を使った料理を提供していたことから、豚肉を扱った器具を介した野菜サラダへの二次汚染の可能性が高いことが示唆された。
診断:
地研の対応:
発症者糞便、調理従事者糞便、拭き取り、検食、原材料、給茶器の水について検査を実施した。その結果、発症者糞便から高率にY. enterocolitica 血清群O8を検出した。また、検食(野菜サラダ)からも同菌が検出された。
行政の対応:
担当保健所は、発症者の共通食が寮の食事に限定されること、症状及び潜伏期間が同菌のものと一致することから、寮の食事を原因とする食中毒と判断し、3日間の営業停止処分(営業自粛4日間あり)とした。
地研間の連携:
国及び国研等との連携:
事例の教訓・反省:
今回の検査では、食品の培養液から遺伝子検査でスクリーニング試験を行い、陽性であった検体に集中して目的の菌の分離を行うことで、効率の良い検査を実施することができた。また、培養液中に夾雑菌が多い場合はアルカリ処理や免疫磁気ビーズ法を用いた集菌法が非常に効果的であった。
現在の状況:
今後の課題:
今回、検食からY. enterocolitica 血清群O8を検出することができたが、リン酸緩衝生理食塩水による食品の増菌培養に3週間、菌の分離・同定を含めると約1ヶ月を要したことから、迅速な検査を実施するためには更に検討が必要であると考えられた。
問題点:
関連資料:
1)国立感染症研究所:病原微生物検出情報 Vol.35 No.1(2014.1) 17