No.1632 腸管毒素原性大腸菌及びサポウイルスによる混合感染食中毒事例

[ 詳細報告 ] 分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:和歌山市衛生研究所
発生地域:和歌山県和歌山市
事例発生日:2014年3月9日
事例終息日:2014年3月14日
発生規模:123名
患者被害報告数:123名
死亡者数:0名
原因物質:腸管毒素原性大腸菌O6:H16、サポウイルスGI-2
キーワード:腸管毒素原性大腸菌、サポウイルス、混合感染

背景:
腸管毒素原性大腸菌は発展途上国などへの海外渡航者下痢症の主要な原因菌として、サポウイルスは乳幼児の下痢症や福祉施設等での集団感染症の原因ウイルスとして知られている。また、腸管毒素原性大腸菌とサポウイルスは、どちらも事例数は多くないが、水や食品を介しての食中毒の起因微生物としても報告されている。

概要:
2014年3月8日及び9日に和歌山市内の宿泊施設において食事をした17グループ258名中13グループ123名が、3月9日から14日にかけて腹痛、下痢、嘔気等の食中毒症状を呈した。有症者19名と調理従事者2名の便及び検食(3月8日)の刺身等4検体から腸管毒素原性大腸菌O6:H16、LT/STh両産生株が検出され、また有症者36名と調理従事者1名の便からサポウイルスが検出された。これらのうち、有症者10名と調理従事者1名の便から両方の病因物質が検出されたため、本事例は腸管毒素原性大腸菌とサポウイルスの混合感染による食中毒であると断定した。

原因究明:
有症者の検便の結果、検査を実施した10グループ52名中、10グループ36名からサポウイルスが、同様に6グループ34名中、3グループ19名から腸管毒素原性大腸菌が検出され、このうち10名からは腸管毒素原性大腸菌とサポウイルスの両方が検出された。また、施設従業員の検便の結果、調理従事者1名からサポウイルスが、2名から腸管毒素原性大腸菌が検出され、このうち1名からは両方が検出された。さらに、検食の細菌検査の結果、3月8日提供の刺身等4検体から腸管毒素原性大腸菌が検出された。

診断:
有症者、調理従事者、検食から検出された腸管毒素原性大腸菌は、全て血清型O6:H16であり、LT/STh両産生株であることが確認され、かつPFGE解析の結果が一致した。また、有症者、調理従事者由来のサポウイルスは遺伝子の系統樹解析の結果genotype GI-2であった。以上のことから、本事例を腸管毒素原性大腸菌O6:H16(LT/STh産生性)及びサポウイルスGI-2の混合感染による食中毒であると断定した。
喫食日3月8日、9日の2日間にわたって有症者が発生し、有症者が喫食したメニューは多岐にわたっていること、調理従事者の手指が直接触れる複数の刺身等から腸管毒素原性大腸菌が検出されていること、さらに、それぞれ同一遺伝子型の腸管毒素原性大腸菌とサポウイルスが調理従事者便と有症者便から検出されていることより、調理従事者の手指を介して複数の食品が2種類の病因物質に汚染されたことが原因であると推定された。

地研の対応:
有症者便、施設従業員便の下痢症ウイルス、食中毒起因菌の検査及び検食、施設拭き取りの細菌検査を実施した。さらに、病因物質の遺伝子解析を実施した。

行政の対応:
施設には食品衛生法に基づき3日間の営業停止を命じ、病因物質が検出された調理従事者には、検出されなくなるまで調理には従事しないように指導した。また、食品、調理器具類の取扱方法、施設の清掃消毒及び調理従事者の衛生管理について指導した。

地研間の連携:
患者は2府6県に散在したので各自治体の衛生研究所等に情報の提供、検査協力をしていただいた。特に、奈良県保健研究センター、西宮市保健所、大津市保健所には患者由来の大腸菌株を分与していただき、大腸菌の遺伝子解析をすることができた。また、和歌山県環境衛生研究センターからはサポウイルスの遺伝子解析データをいただき、比較解析することができた。

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
サポウイルス検出をもって病因物質をサポウイルスと判断し、検食等の詳細な細菌検査が遅れた。混合感染の可能性を常に考慮に入れた検査対応が必要である。
有症者が2日間のうちに多岐にわたるメニューを、中には複数回喫食していたことに加え、混合感染であったため、発症までの潜伏期間やどちらの病因物質による症状であるのかを鑑別することが困難であった。サポウイルスについては検食のウイルス検査を実施しなかったため、汚染源の特定には至らなかった。腸管毒素原性大腸菌についても、調理済み食品以外は検食として保存されていなかったため、食品の原材料汚染の可能性を否定できなかった。また、調理従事者の感染ルートも不明であった。

現在の状況:

今後の課題:
簡便で、感度がよく、コンタミネーションの恐れのない、食品からのウイルス検査方法の開発が望まれる。

問題点:
有症者が2日間のうちに多岐にわたるメニューを、中には複数回喫食していたことに加え、混合感染であったため、発症までの潜伏期間やどちらの病因物質による症状であるのかを鑑別することが困難であった。サポウイルスについては検食のウイルス検査を実施しなかったため、汚染源の特定には至らなかった。腸管毒素原性大腸菌についても、調理済み食品以外は検食として保存されていなかったため、食品の原材料汚染の可能性を否定できなかった。また、調理従事者の感染ルートも不明であった。

関連資料:
市内宿泊施設で発生した腸管毒素原性大腸菌の遺伝子学的検討について-和歌山市衛生研究所報№18(2014)