No.1636 保育園における腸管出血性大腸菌O111の集団感染事例

[ 詳細報告 ] 分野名:細菌性感染症
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:福岡市保健環境研究所
発生地域:福岡県福岡市
事例発生日:2013年7月22日
事例終息日:2013年8月30日
発生規模:検便対象者333名
患者被害報告数:80名
死亡者数:0名
原因物質:腸管出血性大腸菌 O111:H-(stx1 & 2)
キーワード:腸管出血性大腸菌 O111,保育園

背景:
腸管出血性大腸菌感染症は,日本において1999年以降年間2,000~5,000件の届け出がされており,その血清型は,O157およびO26が80%以上を占めている.しかし,近年はその他の血清型による報告事例の増加がみられる.また,腸管出血性大腸菌は,微量の菌により感染が成立するため感染が拡大しやすく,特に保育園,幼稚園などの小児関連施設での集団発生が数多く報告されている.今回,福岡市内の保育園において腸管出血性大腸菌O111:H-(stx1 & 2)による集団感染事例が発生したので概要を報告する.

概要:
2013年7月,福岡市内のある保育園において腸管出血性大腸菌O111の集団感染事例が発生した.園児,職員および園児の家族計333名(延べ671検体)の糞便,給食の保存食および調理室のふきとりについて腸管出血性大腸菌O111の検査を実施したところ,園児60名と職員2名,園児の家族18名の計80名から腸管出血性大腸菌O111:H-(stx1 & 2)(以下O111)が共通して検出された.これら分離株の生化学性状は同一で,PFGEパターンはほぼ同一であった.菌の解析結果および保健所の実施した疫学調査の結果から,本事例は給食による食中毒ではなく,園児間および家族間での2次感染による集団感染事例であると考えられた.今回の事例は,陰性確認を実施している期間中にも2次感染により新たな患者が発生しており,事例探知から終息まで40日と長い期間を要した.この感染拡大は、無症者や軽症例が多く,早期発見が容易ではなかったためにO111陽性者の登園が続けられ起こったものと考えられた.

原因究明:
今回の集団感染事例では,園児60名と職員2名,園児の家族18名の計80名から腸管出血性大腸菌O111:H-(stx1 & 2)(以下O111)が検出された.本事例で分離された80株は,いずれも同一の生化学性状を示し,リジン脱炭酸反応は陰性で,運動性は認められなかった.また,代表株25株についてPFGEを実施したところ,2株が1~2バンド異なっていたがそれ以外は同一パターンを示した.したがってこれらの解析結果から,本事例は同一の感染源であることが推察された.
今回の集団感染事例においてO111が検出された園児の共通食は,当該保育園で提供された給食であり,全園児と職員が喫食していた.そのため,7/9~7/23までの給食の保存食,調理室のふきとりおよび調理従事者の便について検査を実施したが,O111は検出されなかった.また,O111が検出された園児の発症日も,6月29日から7月30日まで様々で,偏りも見られなかったことから,給食による食中毒ではなく,園児間および家族間での2次感染による集団感染事例であると考えられた.

診断:

地研の対応:
園児,職員および園児の家族計333名(延べ671検体)の糞便,7/9~7/23までの給食の保存食および調理室のふきとりについて腸管出血性大腸菌O111の検査を実施した.糞便の検査は,ソルボースマッコンキー寒天培地,亜テルル酸カリウム添加(2.5 mg/L)ソルボースマッコンキー寒天培地およびクロモアガーSTEC寒天培地による直接分離培養に加えて,マイトマイシンC添加(100μg/L)CAYE増菌液からのEIA法によるStxの検出およびTSB増菌液からのPCR法によるstx遺伝子の検出を併用した.給食の保存食,調理室のふきとりについては, mEC培地で増菌培養し,PCR法による増菌液からのstx遺伝子の検出を行った.分離された腸管出血性大腸菌O111株のうち代表株の25株についてパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を実施した

行政の対応:
原因究明と再発防止を目的として2回の感染症対策会議を実施した.

地研間の連携:

国及び国研等との連携:
感染症サーベイランスシステムの病原体検出情報システムを通じて,国立感染症研究所および各地方衛生研究所の検査情報について,情報交換を実施.

事例の教訓・反省:
今回の事例は,陰性確認を実施している期間中にも2次感染により新たな患者が発生しており,事例探知から終息まで40日と長い期間を要した.また,感染拡大は無症者や軽症例が多く,早期発見が容易ではなかったためにO111陽性者の登園が続けられ,起こったものと考えられた.無症の園児数は,O111が検出された園児60名のうちの 17名(28.3%)で,有症者の入院事例はなく,軽症例が多かった.さらに,当該保育園における手洗い指導の不足に加え,おむつや排泄後の清拭に使用した布(以下,清拭布)の処理および保管方法,持ち帰りなどの衛生管理もその感染拡大に影響した可能性があると思われた.そのため,保健所は排泄時は保育士が園児の手洗いを確認すること,清拭布は廃止してティッシュを使用し,紙おむつも一緒に保育園で廃棄するよう指導を実施した.

現在の状況:
腸管出血性大腸菌感染症の発生届が提出され次第,迅速に聞き取り調査や接触者検便等の検査を行っている.

今後の課題:
なし

問題点:
なし

関連資料:
保育園における腸管出血性大腸菌O111の集団感染事例―福岡市,病原微生物検出情報,Vol.35 No.5(2014.5)p7-8