No.15013 麻しんウイルスD9型による集団感染事例(岡山県)

[ 詳細報告 ] 分野名:ウィルス性感染症
登録日:2016/05/13
最終更新日:2016/05/27
衛研名:岡山県環境保健センター
発生地域:岡山県美作保健所管内
事例発生日:2012年1月11日
事例終息日:2012年3月22日
発生規模:5名
患者被害報告数:
死亡者数:
原因物質:麻しんウイルスD9型
キーワード:岡山県、麻しん、麻しんウイルスD9型、集団感染事例

背景:
岡山県における麻しん患者発生は、2010年2名、2011年4名であり、いずれも散発事例であったが、2012年1月にフィリピンで感染したと推定される患者1名を発端に、二次感染者、三次感染者あわせて4名の患者が続発するという集団感染事例を経験した。本事例は、麻しんが全数把握対象感染症となって以降、2008年の広域流行を除けば、県内で初めて確認された集団感染事例である。
なお、2012年の岡山県における麻しん患者報告は、この集団感染事例以外には散発事例1例が報告されたのみである。
また、2012年に国外で流行した麻しんの遺伝子型はB2型、B3型、D4型、D5型、D8型、D9型、G2型、G3型、G6型、H1型の10種類であり、国内では、2006~2008年頃までに主流(常在株)を占めていたD5型は2010年5月を最後に検出されていない状況である(2013年2月現在、IASR Vol. 34 p. 24-25: 2013年2月号)。

概要:
2012年1~2月に岡山県美作保健所管内で、フィリピンから帰国(2012年1月1日)した6歳女児(1例目)が、1月11日に麻しん様症状を発症し、続いて19日に女児の双子の兄6歳(2例目)が発症し、A病院小児科に入院した。2月4日にA病院入院中の13歳男児(3例目)と、A病院に1月23日から2月1日まで入院していた 1歳4ヶ月女児(4例目)が発症した。2月3日に4例目の女児と接触した叔母44歳(5例目)が、2月14日に発症した。1~4例目はワクチン接種歴なし、5例目はワクチン接種歴不明であった。
5名の麻しん患者全員から麻しんウイルスD9型が検出され、5例目はカタル期に200名を超える接触者があったため、接触者調査と感染拡大防止に努め、3月22日に集団発生の終息宣言に至った。

原因究明:
1例目がフィリピンで感染し、2例目が1例目から家族内感染し、3、4例目は1、2例目と明らかな接触はなかったが、A病院内で2例目から感染した可能性が高い。5例目は4例目から感染したため、患者全員から麻しんウイルスD9型が検出されたと考えられる。

診断:
患者5名から採取した検体から麻しんウイルス遺伝子が検出され、遺伝子型はD9型であった。

地研の対応:
保健所の積極的疫学調査に伴い、2012年1月~3月に疑い患者9名(検体数25件)についてPCR検査を実施し、5名から麻しんウイルスを検出し遺伝子型別を行った。また、接触者34名についてPA法による抗体検査を実施した。

行政の対応:
2012年2月14日に4例目の1歳4ヶ月女児のPCR検査陽性確定後、管内の医師会、病院協会に患者発生を周知するとともに、麻しん患者の届出と検体提出について依頼した。また、A病院に対し、感染拡大防止の徹底、接触者の予防接種歴の把握と未接種者への対応を依頼した。
5例目は、4例目の接触者として健康観察を行っていたところ、2月14日に発症したが、その後、研修会に参加していたため、勤務先(B施設)の入所者および職員145名に加え、研修会参加者および会場職員83名、店や受診した近医の接触者 26名、合計254名の接触者を把握した。
2月17日にプレス発表を実施し、2月18日にかけて接触者のワクチン接種歴等を確認し、接種の確実でない者にワクチン接種を強く勧奨したほか、14日間の健康観察とその間の勤務を控えることを指導した。また、勤務先のB施設に対し、施設職員・入所者のワクチン接種歴等の調査、ワクチン接種の勧奨、健康観察の依頼を行った。
研修会参加者については、次のような対応を行った。
①2月18日、19日にA病院に臨時のワクチン接種外来を設置してもらい、46名(63.9%)に緊急ワクチン接種を実施した。
②ワクチン未接種者については、抗体検査の結果、抗体価64以下の4名に医療機関への受診を勧奨し、1名がワクチン接種、2名がγグロブリン投与となった(1名は未受診)。
③2週間の健康観察と勤務の自粛を、本人とその所属施設に要請した。
④ワクチン接種、抗体検査とも受けなかった5名と、抗体価64以下の4名には発症の可能性が高いことを説明するとともに、毎日の健康状態を把握した。
⑤健康観察期間を、ワクチン接種者は3週間に、γグロブリン投与者については4週間に延長し、対象者およびその所属施設に文書で理解、協力を求めた。
5例目が確定した時点で、医師会、病院協会あてに再度、麻しん患者の報告等を依頼し、サーベイランスの強化に努め、3月22日に終息宣言を行った。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:
国立感染症研究所FETPチームに応援を要請し、岡山県美作保健所で感染拡大防止のための対策について助言を受けた。

事例の教訓・反省:
今回の事例では、接触者数が多かったが、接触者を早く特定できたことで感染拡大防止への対応を迅速に取ることができた。接触者の約6割に緊急ワクチン接種が実施され、未接種者には保健所で無料の抗体検査を実施し、抗体価の低い者に対しては保健指導が行われた。これらの対応により、感染拡大を防止できたものと考えられた。

現在の状況:

今後の課題:
今回の発症者は、ワクチン接種歴のない者、接種歴不明の者であったため、市町村と連携し、確実な2回のワクチン接種を勧める必要がある。また、住民や医療関係者に対して、麻しんに対する正しい知識の啓発が必要である。

問題点:

関連資料:
岡山県における麻しん集団発生について、病原微生物検出情報、vol.33、p166-167 (2012.6)