No.15027 ブリの塩だれ漬けによる有症苦情

[ 詳細報告 ] 分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/05/13
最終更新日:2016/05/27
衛研名:川崎市健康安全研究所
発生地域:川崎市他
事例発生日:2015年7月
事例終息日:2015年7月
発生規模:喫食者数 9名(同一区内の有症届出があった3グループ)内 有症者数 7名
患者被害報告数:
死亡者数:0名
原因物質:ヒスタミン(推定)
キーワード:ヒスタミン、魚介類加工品、食中毒

背景:
ヒスタミンを原因とする鮮魚介類や加工食品の食中毒事例は珍しくないが、比較的小規模での発生事例が多い。2015年7月にチェーン展開のスーパーマーケットで販売された魚介類加工品を共通食品とし、複数の自治体にて対応を行った有症苦情事例を経験したので報告する。

概要:
2015年7月22日(水)市民から、市内のスーパーマーケットで購入した「ぶりねぎ塩」(魚介類加工品)を自宅で調理し、喫食したところ、2名中2名が1時間以内に顔面紅潮、発疹などヒスタミン中毒様症状を呈した旨の届出が当市A保健所にあった。また、同店で購入した他の客からも同様な届出がありA保健所が食中毒調査を開始した。
A保健所は販売店の調査、同一ロットの販売店保管品の検査を行うとともに、製造所(市外に所在するB社)、流通販売状況等について、本庁を通じて関係自治体に調査依頼及び情報提供を行った。 当該販売店(市内の販売店3施設中の1施設)では冷凍品を解凍して販売していたが、4℃以下で温度管理を行っていた。市内販売店の他2施設については、同様の届出はなかった。
製造所B社を所管する自治体からは、原因施設としての特定ができない旨の回答があり、その後の被害の拡大が確認されなかったことから、本件は有症苦情事例として処理された。
調査対象品
販売時形態    2切れ/合成樹脂製包装(パック)
販売時保存温度  要冷蔵
出荷時形態    10パック/箱(発泡スチロール)
出荷時賞味期限  2016.1.9
出荷時保存方法  要冷凍(-18℃以下)

原因究明:
A保健所は有症者調査と販売店調査を実施するとともに、本庁を通じて関係自治体と連携して調査を実施した。また、販売店に対し、残品の販売自粛及び商品保管温度の記録について指導した。
なお、販売店のスーパーマーケットはチェーン展開しており、関係自治体及び自主検査の結果判明後、当該品の取扱いのあった全販売店の残品を製造者に自主返品した。
【原因究明】
1 有症調査
届出があった3グループ9名について発症状況及び喫食状況調査を実施したところ、7名が同様の症状を呈しており、共通食は当該販売店で販売された当該食品に限られた。
2 販売店調査
7月14日に50パック(冷凍)仕入れ、同日から21日までに37パックを、販売状況に応じて数個ずつ店舗の表示や期限表示(解凍日含む6日間)を貼付して販売コーナーの冷蔵ケースに陳列し、4℃以下で解凍しながら販売した。冷蔵ケースの温度管理は4℃以下で異常は認められなかった。
3 製造所調査
B社を所管する自治体に製造所の調査依頼を行ったところ、以下の回答があった。
・ 製造数(同一ロット) 364箱(1箱10パック入り)6月19日~7月11日に製造
・ 販売数        351箱(1箱10パック入り)6月25日~7月14日に出荷
・ 残りの13箱については製造所にて保管
・ 衛生管理状態はおおむね良好
・ 月2回の自主検査でヒスタミンは検出されていない。
4 ヒスタミン検査結果
スーパーマーケットが所在する自治体及びスーパーマーケット本社の自主検査においてもヒスタミン検査を実施しており、当市が把握している結果は以下のとおり。
[資料参照]
5 結論
・製造所を所管する自治体が、製造所に保管中の同一ロットの残品を5検体検査したが、ヒスタミンが検出されなかったこと。
・製造所では6月19日から7月11日までの製造分を同一ロットとして扱っているが、ロット内の製造方法は必ずしも同一とは言えないこと。
・製造所では、作業工程中再冷凍するまでに長時間かかった製造日もあること。
・流通過程においては、保管・運搬中の温度管理に一部問題があったものの、ヒスタミン生成に影響するとは考えにくいこと。
・別の物流センターから別々の運送ルートで運ばれた商品にも苦情が発生しており、ヒスタミン生成は店舗納品以前に起こった可能性が高いこと。
・当管内の販売店での取扱いに問題はなかったこと。
以上のことから、原因施設の特定には至らなかった。また、その後の被害の拡大も確認されなかったことから、本事例については有症事例として処理された。

診断:

地研の対応:
搬入された食品検体2検体(有症者から提供された同日購入品(別包装)及び販売店の保管品)のヒスタミン検査を実施したところ、同日購入品から423mg%検出、販売店の保管品から不検出という結果であった(定量下限:2mg%)。

行政の対応:
A保健所は有症者調査と販売店調査を実施するとともに、本庁を通じて関係自治体と連携して調査を実施した。また、販売店に対し、残品の販売自粛及び商品保管温度の記録について指導した。
なお、販売店のスーパーマーケットはチェーン展開しており、関係自治体及び自主検査の結果判明後、当該品の取扱いのあった全販売店の残品を製造者に自主返品した。

地研間の連携:
なし

国及び国研等との連携:
なし

事例の教訓・反省:
本市の検査では魚介類加工品のヒスタミン濃度は423mg%と高値を示した。製造段階での温度管理の不備が原因の一つと考えられるが、製造日や製造工程等の確認ができず、原因究明には至らなかった。

現在の状況:
なし

今後の課題:
魚介類加工品におけるヒスタミン生成は、ヒスタミン生産菌によるものであることが知られており、一度産生されたヒスタミンは、加熱によっても分解されないことから、製造業者や流通業者、販売業者への衛生教育が再発防止策の一つとして不可欠である。また、腐敗により産生されるアンモニア等と違い、外観の変化や悪臭を伴わないため、食品を食べる前に汚染を感知することは非常に困難であることから、消費者への情報提供の強化が必要と考える。
今後は、原材料管理から製造、流通、販売段階における温度管理及び作業工程に関する記録とその保管を徹底し、健康被害発生時においては、疫学調査とリンクした原因究明の調査が可能となるよう、自治体間の連携強化が望まれる。

問題点:

関連資料:
宮﨑麻由・中居真代・有田富和・那須務・渡邉節・沖村容子(2011) 生食用鮮魚介類等におけるヒスタミン産生菌に関する調査(第2報).宮城県保健環境センター年報、第29号:37-39
宮﨑麻由・平本都香・山口友美・有田富和・加藤浩之・那須務・渡邉節・沖村容子・御代田恭子(2010) 生食用鮮魚介類等におけるヒスタミン産生菌に関する調査.宮城県保健環境センター年報、第28号:36-38
ファクトシート(ヒスタミン).食品安全委員会、作成日:平成25年2月4日、最終更新日:平成26年3月26日