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当該年報は、平成27年1月1日から同年12月31日の間に、新たに登録された結核患者及び潜在性結核感染症(LTBI)の者と、平成27年12月31日現在に登録されているすべての登録者に関する状況について、感染症サーベイランスシステム(NESID)上の結核登録者情報システムに全国の保健所から入力されたものを「結核登録者情報調査年報」として取りまとめたものである。
平成27年 結核登録者情報調査年報集計結果について
〜表ごとの解説〜
諸外国と日本の結核罹患率について
多くの先進国では、結核罹患率は低まん延国の水準である10を下回っているが、日本は14.4となっており、低まん延国の水準には至っていない。(表1)
結核罹患率の都道府県別おもな順位について
都道府県別の罹患率は、大阪府、兵庫県、東京都、大分県、奈良県の順に高くなっており、山形県、長野県、宮城県、秋田県、山梨県の順に低くなっている。中でも大阪府の罹患率は23.5であり、同府においては、大阪市の罹患率が最も高く、34.4となっている。(表2、表7−2)
結核の死亡数及び死亡率の年次推移について
平成27年の結核による死亡数は1,955人(概数)で、前年から145人減少した。
死亡率は1.7から1.6に、死因順位は26位から29位になり、いずれも前年より低下している。(表3)
新登録結核患者数及び罹患率の年次推移について
(1) 平成27年に新たに結核患者として登録された者(新登録結核患者)の数は18,280人で、前年から1,335人減少した。減少率は、平成25年から平成26年にかけては4.3%、平成26年から平成27年にかけては6.8%となり、減少幅は2.5ポイント大きくなっている。(表4−1)
(2) 平成27年の罹患率(人口10万対)は14.4であり、前年から1.0減少した。減少率は、平成25年から平成26年にかけては4.3%, 平成26年から平成27年にかけては6.5%となり、減少幅は2.2ポイント大きくなっている。(表4−1、図1)
(3) 菌喀痰塗抹陽性肺結核の患者数は7,131人で、前年から520人減少している。(表4−2)
(4) 菌喀痰塗抹陽性肺結核の罹患率(人口10万対)は5.6であり、前年から0.4減少した。菌喀痰塗抹陽性肺結核の患者が全体に占める割合は39.0%であり、前年と同じであった。(表4−2)
年次別・年齢階級別 新登録結核患者数および潜在性結核感染症新登録者数について
(1) 年齢階級別の新登録結核患者数は0〜4歳を除き減少した。年齢階級別では、80歳以上で減少率が最も大きく、388人減少した。全体に占める割合は、80歳以上が38.3%となっている。(表5−1)
(2) 年齢階級別の菌喀痰塗抹陽性肺結核新登録患者数は、0〜4歳、15〜19歳及び30〜39歳で10人未満の微増となっているが、他の年齢階級では減少した。減少幅は、70〜79歳が最も大きく、170人減少した。全体に占める割合は、80歳以上が43.7%と最も大きくなっている。(表5−2)
(3) 平成27年に新たに登録された小児結核患者のうち、重症例と考えられる粟粒結核及び結核性髄膜炎患者はそれぞれ1人となり、前年から減少している。(表5−3)
(4) 平成27年に新たに登録された潜在性結核感染症の者の数は、6,675人で、前年から887人減少した。年齢階級別では、40〜49歳で最も大きく、305人の減少となっている。
一方、70〜79歳、80歳以上の年齢階級では、100人以上の増加となっている。(表5−4)
(5) 新登録結核患者数に対する潜在性結核感染症新登録者数の比は14歳以下の年齢階級で1以上となっており、潜在性結核感染症新登録者数の数の方が多くなっている。
一方、15歳以上の年齢階級では、1未満となっており、新登録結核患者の方が多くなっている。(表5−5)
(6) 職業別では、全体の潜在性結核感染症新登録者数に占める医療職の割合は、前年の29.1%から26.7%に減少した。常勤職(医療職、接客業、教員・保育士を除く)の割合についても、前年の21.2%から18.1%に減少した。一方、無職、その他が全体に占める割合は、前年20.9%から25.2%に増加している。(表5−6)
(7) 平成27年の外国生まれ新登録結核患者数は1,164人であり、前年から63人増加した。
年齢階級別では、20〜29歳で新登録結核患者における外国生まれの者の割合が50.1%となっている。(表5−7)
(8) 外国生まれ新登録結核患者のうち、入国5年以内の者は505人であり、前年から68人増加した。特に20〜29歳の年齢階級では、前年から50人増加し、351人となっている。(表5−8)
年次別・年齢階級別 結核罹患率について
(1) 年齢階級別の結核罹患率は、高齢層ほど高くなっており、70〜79歳では26.9、80歳以上では70.8となっている。(表6−1)
(2) 菌喀痰塗抹陽性肺結核の罹患率は、高齢層ほど高くなっており、70〜79歳では10.1、80歳以上では31.5となっている。(表6−2)
新登録結核患者数及び結核罹患率 都道府県別・年次推移について
(1) 都道府県別の新登録結核患者数は、47都道府県のうち10の県で増加した。
新登録結核患者数が最も多いのは東京都の2,306人、次いで大阪府の2,074人となっている。(表7−1)
(2) 都道府県別の結核罹患率は、47都道府県のうち10の県で増加した。また、罹患率が10を下回った都道府県は、前年の6県から9道県に増加した。
罹患率が最も低いのは山形県であり、7.3となっている。(表7−2)
年末時結核登録者数及び有病率の年次推移について
平成27年末現在の結核登録者数は44,888人であり、前年の47,485人から2,597人減少した。そのうち、活動性全結核の患者数は12,534人で、前年より979人減少した。また、平成27年末の結核有病率は前年の10.6から0.7減少し、9.9となっている。(表8)
新登録結核患者の疫学的特徴について
〈再治療患者〉
平成27年の新登録結核患者のうち再治療患者は1,032人となっている。このうち、前回治療年が2000年以降の者は622人であり、再治療患者のうちの60.3%となっている。(表9)
〈発見の遅れ〉
(ア)平成27年の新登録肺結核患者のうち有症状の者を対象として、受診が遅れる(症状発現から受診までの期間が2か月以上の割合)
患者の割合は、20.0%となっている。このうち30〜59歳の有症状菌喀痰塗抹陽性肺結核患者に限定すると、受診が遅れる患者の割合は37.1%となっている。(表10−1)
(イ) 診断が遅れる(受診から結核の診断までの期間が1か月以上)患者の割合は21.5%となっている。(表10−2)
(ウ) 発見が遅れる(症状発現から結核の診断までの期間が3か月以上)患者の割合は20.4%となっている。(表10−3)
〈薬剤耐性〉
平成27年の新登録肺結核培養陽性結核患者の薬剤感受性検査結果より、多剤耐性肺結核患者数(INH,RFP両剤耐性の者)は48人となっており、全新
登録肺結核培養陽性結核患者の0.5%となっている。
また、薬剤感受性検査結果が判明した者のうち、主要4剤(HRSE)全ての薬剤に対し感受性のある患者の割合は89.2%となっている。(表11)
〈糖尿病、HIV合併〉
平成27年の新登録結核患者のうち、糖尿病を合併した患者は2,686人となっており、全新登録結核患者の14.7%となっている。
また、HIV検査を実施した患者は1,514人で全新登録結核患者の8.3%に当たり、このうちHIV陽性だった者は40人で、全新登録結核患者の0.2%となっている。(表12)
〈医療従事者〉
(ア)平成27年の新登録結核患者のうち、看護師・保健師の登録患者は219人であり、全新登録結核患者の1.2%となっている。
年齢階級別では30〜39歳が最も多く、同年齢階級の5.7%となっている。(表13−1)
(イ)平成27年の新登録結核患者のうち、医師の登録患者は61人であり、全新登録結核患者の0.3%となっている。
年齢階級別では30〜39歳が最も多く、同年齢階級の1.1%となっている。(表13−2)
(ウ)平成27年の新登録結核患者のうち、理学療法士、作業療法士、検査技師、放射線技師など、看護師・保健師・医師以外の者で
医療機関に勤務する感染リスクが高い者の登録患者は264人であり、全新登録結核患者の1.4%とないる。
年齢階級別では30〜39歳が最も多く、同年齢階級の5.6%となっている。(表13−3)
〈無職臨時日雇など〉
平成27年の新登録結核患者のうち、登録時の年齢が20〜59歳であって、登録時の職業が無職臨時日雇等であった者は1,172人となっており、
20〜59歳の全新登録患者の23.7%となっている。高齢者ほど患者数は多くなっており、55〜59歳では同年齢階級の38.3%となっている。
また、男性の患者に占める無職臨時日雇等の割合は、同年齢階級の40.8%となっている。(表14−1、表14−2)