保健医療科学 災害時の生活と水の必要性

『保健医療科学』第57巻 第3号, p.240-244 (2008年9月)
特集:災害時に保健医療従事者は何をすべきか ―期待と現実の Gap ―

災害における歯科専門職の役割PDF

山本裕子
北海学園大学工学部

抄録
北見市で発生した断水について,水道利用者である住民および病院,学校などの施設を対象とし,生活に欠かせない水 が得られない断水という緊急事態発生時に,水道利用者側ではどのような点に不自由し,どのように水を確保し,また危機管理意識はどのようであったかを明らかにするためアンケート調査を行った.住民,施設ともに,健康に影響を与えか ねないトイレ用水や手や体を洗う水の不足が見られた.また病院では加えて人工透析や手術のための水の不足が見られた.断水が発生したことを多くの住民は蛇口をひねって始めて知ったと回答しており,広報車などによる情報伝達の体制が不十分であることが伺えた.また水道利用者側では断水発生後でも水の備えをしている割合はそれほど多くなく,水道事業体での対応を期待しており,自身の危機管理意識が高いとは言えない.今後様々な災害が発生する可能性を考えると,自治体や水道事業体の体制強化のみならず,利用者側の危機管理意識の向上および備えも必要であると思われる.
キーワード:? 水道,断水,危機管理,情報伝達

Abstract
Questionnaire survey was conducted in Kitami City where the water failure has occurred in 2007. The purpose of the survey was to clarify the trouble people experienced and the way they got water for various purposes during the water failure, and the degree of their awareness of the crisis management. People experienced difficulty in getting water for flushing toilet or washing bodies. Hospitals found it difficult in getting clean water for dialytic treatment or operation. It was revealed that the communication system in emergency situations was not enough. Not only authority concerned but also the users of the water system need to prepare for the emergency.
keywords: water supply, water failure, crisis management, communication