No.16001 Escherichia albertii による食中毒事例について

“[ 詳細報告 ] 分野名:細菌性食中毒
登録日:2017/04/04
最終更新日:2017/04/04
衛研名:静岡県環境衛生科学研究所
発生地域:静岡県
事例発生日:2016年7月10日
事例終息日:
発生規模:大規模
患者被害報告数:154名
死亡者数:0名
原因物質:Escherichia albertii
キーワード:Escherichia albertii

背景:
静岡県内の陸上自衛隊演習場において野営訓練中の隊員400人中154人が、下痢等の症状を呈し、患者及び調理従事者の便からEscherichia albertiiが検出され、所管保健所は訓練中の食事を原因とする食中毒事件と断定した。

概要:
2016年7月、静岡県内の陸上自衛隊演習場において訓練中の隊員400人中154人が、下痢等の症状を呈していることが判明した。疫学調査の結果、患者の共通食が訓練中の食事に限られていること、患者の症状が類似していること、また、患者88人及び調理従事者7人の便からE. albertiiが検出されたこと、患者を診察した医師から食中毒の届出がなされたことから、所管保健所は訓練中の食事を原因とする食中毒事件と断定した。
発症者は、7月10日夕方から下痢、腹痛、発熱等の症状を呈し、その発生は7月11日午前0時~6時をピークとする一峰性の流行曲線を示した。
症状は下痢、腹痛、発熱を主徴とし、血便を呈した8人を含む48人が一時入院した。

原因究明:
疫学調査結果から、7月9~10日の食事が原因であることが示唆されたが、検食がなかったため、原因食品及び汚染経路は不明である。

診断:
診断的マルチプレックスPCR法によりE. albertiiと同定した(lysP および mdh においてE. albertii に特異的な塩基配列を検出するとともに、clpX陽性を確認)。また、ダイレクトシークエンス法によりE. albertiiであることを確認した。

地研の対応:
患者及び調理従事者便からの病原体の分離を試みると同時に、便から抽出したDNAを用いて食中毒起因菌の病原因子16種の保有の有無を網羅的に検出するリアルタイムPCR法によりスクリーニング検査を実施した。その結果、患者10人全て及び調理従事者7人中5人からeaeが検出された。一方、菌の分離では、乳糖・白糖非分解のコロニーが優位で多数認められ、生化学的性状から検出菌はE. albertiiであることが示唆されたため、診断的マルチプレックスPCR法及びダイレクトシークエンス法によりE. albertiiと同定した。

行政の対応:
自衛隊演習場内炊事場で調理した食事を原因とする食中毒事件と断定した。営業施設ではないため、行政処分は行っていない。

地研間の連携:
横須賀市衛生研究所及び山梨県衛生環境研究所と分離菌の同定に関しての情報共有を図るとともに、分離菌の遺伝子型を比較するため、分離菌株の分与を受け、当研究所でパルスフィールド・ゲル電気泳動法を実施した。

国及び国研等との連携:
E. albertii の同定等について国立感染症研究所細菌第一部にご助言をいただいた。

事例の教訓・反省:
本菌の検出、同定にあたり、E. albertiiが特徴的な性状に乏しいことを十分認識するとともに、検査時には腸管出血性大腸菌や赤痢菌と誤同定する危険性をはらんでいることを注意する必要があると思われた。なお、本事例では自衛隊の訓練中ですべての食品が共通食であり、また、保存食がなかったため原因食品及び汚染経路は不明であるが、本菌による食中毒発生防止のため自然界におけるE. albertiiの浸淫状況等基礎的な疫学調査も重要な課題であると思われる。

現在の状況:
E. albertiiの同定のフローを構築した。また、行政機関に対して本事例を広報し、注意を喚起した。

今後の課題:
本事例では患者の多くが血便を呈していたため、stx2a及びstx2fについても検査したが、保有は認められなかった。しかしながら、stxを保有するE. albertiiの報告もあることから、今後、疫学情報の集積とリスク評価が必要であり、さらに、E. albertiiの細菌学的な解明が急務であると思われた。

問題点:
E. albertiiの細菌学的な解明及び同定方法のマニュアル化

関連資料:
病原微生物検出情報Vol. 37 No. 5(2016.5)
病原微生物検出情報Vol. 37 No. 12(2016.12)”