[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2017/04/04
最終更新日:2017/04/04
衛研名:沖縄県衛生環境研究所
発生地域:沖縄県
事例発生日:2016年5月23日
事例終息日:2016年5月27日
発生規模:
患者被害報告数:217名
死亡者数:0名
原因物質:Escherichia albertii
キーワード:Escherichia albertii、ニガナの白和え
背景:
概要:
2016年5月26日、愛知県生活衛生課から当県生活衛生課へ「沖縄県に修学旅行に行った高等学校にて食中毒の疑いがある」旨の連絡があった。当該団体376名は、5月22日〜24日の日程で旅行し、食事は12施設を利用していた。下痢(64%)、腹痛(56%)、倦怠感(40%)、頭痛(38%)を主症状とし376名中217名が発症した。発熱、吐き気、嘔吐はそれぞれ14%、8%、1%であった。潜伏期間は32.8時間であり、5月24日~25日に発症時間が集中する一峰性の患者発生パターンを示した。他の有症者の嘔吐物や糞便に暴露されるなどの感染症を疑うエピソードはなく、食品等による単一暴露が疑われた。管轄保健所による疫学調査、愛知県衛生研究所及び当所による病因物質検査によって、当該事例はニガナの白和えを原因食品とするE. albertiiによる集団食中毒事例であると断定された。
愛知県衛生研究所の検査により有症者19名中16名の検便からE. albertiiが分離された。20種の既知食中毒細菌及びノロウイルス検査は陰性であった。当所の検査により検食「ニガナの白和え」からE. albertiiが分離された。有症者及び原因食品由来株は同一PFGEパターンを示し、「ニガナの白和え」を原因食品とするE. albertii集団食中毒事例と断定された(詳細は、IASR 2016年12月号に掲載)。
原因究明:
別ロットの原因食品原材料2検体(ニガナ、豆腐)、豆腐製造施設の井戸水3検体、ニガナ栽培畑土壌、肥料、使用水の計3検体、原因施設及び豆腐製造施設の拭き取り検体30検体も同様にE. albertii分離同定検査を実施したところ、結果は陰性であった。
診断:
上述の通り。
地研の対応:
愛知県衛生研究所において有症者19名を対象に、腸管出血性大腸菌等の食中毒細菌20種及びノロウイルスについて検査が実施された。対象の食中毒細菌及びノロウイルスは陰性であったが、19名中16名のソルビトール・マッコンキー寒天培地(SMC培地)上にソルビトール非分解の特徴的な集落が多数観察された。分離株は非運動性、β-glucuronidase陰性、eae陽性であり、E. albertii診断用プライマーを用いたPCRを実施したところ、lysP, mdh, clpX陽性であったことからE. albertiiが起因菌として同定された。
当所において、食中毒疑い施設12施設の従業員便108検体、うち9施設の検食158検体のE. albertii分離同定検査を実施した。E. albertii分離同定検査は、検体を緩衝ペプトン水で破砕し、42℃で一晩培養後、lysPを対象にスクリーニングPCRを実施した。スクリーニングPCR陽性の培養液をSMC培地及びXLD培地に塗抹し、37℃で一晩培養した。SMC培地上のソルビトール非分解集落及びXLD培地上の無色透明集落を対象にE. albertii診断用プライマーを用いたPCRを実施したところ、A施設の検食ニガナ(キク科の葉野菜)の白和え及びA施設従業員からE. albertiiが分離された。分離されたE. albertiiについてアピ20、アピ50CH、下痢原性大腸菌の既知病原遺伝子(stx1、stx2、stx2f、ipaH、LT、STp、STh、eae、aggR、astA、afaD)のPCR及び病原遺伝子とされるcdt遺伝子のPCRを実施した。有症者、ニガナの白和え及びA施設従業員由来株は全て同一の生化学的性状を示し、病原遺伝子としてeae、cdt-II及びcdt-Vを保有していた。分離株についてXba Iを用いたパルスフィールド電気泳動解析を実施したところ、有症者、ニガナの白和え及びA施設従業員由来株は同一PFGEパターンを示し、同一株であることが示唆され、さらにニガナの白和えには同一の単一株が存在すると考えられた。
行政の対応:
地研間の連携:
大分県衛生環境研究センターから過去の事例について情報提供があったことや、有症者の細菌及びウイルス検査を実施した愛知県衛生研究所と分離法等の技術的な事柄について迅速な連携、討論を実施できたため食品検体からのE. albertii分離に繋がった。
国及び国研等との連携:
国立感染症研究所感染症疫学センター第五室村上光一先生からE. albertiiについて分離法及び生化学的性状について情報提供があったため、迅速な細菌検査とE. albertii分離に繋がった。
事例の教訓・反省:
現在の状況:
今後の課題:
選択的増菌培地や分離培地の必要性が感じられた。
問題点:
関連資料:
ニガナの白和えを原因食品とするEscherichia albertiiによる集団食中毒事例−沖縄県, 病原微生物検出情報, Vol. 37, p252-253:2016年12月号