No.16015 さんまのぽうぽう焼きのヒスタミンによる食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2017/04/04
最終更新日:2017/04/04
衛研名:福島県衛生研究所
発生地域:福島県南会津郡下郷町
事例発生日:2016年1月21日
事例終息日:
発生規模:喫食者 376 名
患者被害報告数:患者被害報告数 87名
死亡者数:0名
原因物質:ヒスタミン
キーワード:ヒスタミン、アレルギー様食中毒、さんまのぽうぽう焼き、学校給食、消費期限切れ、冷凍保存

背景:
ヒスタミン食中毒は、ヒスタミンが高濃度に蓄積された食品を食べることにより発症する。ヒスタミンは、赤身魚及びその加工品などに多く含まれるヒスチジンにヒスタミン産生菌の酵素が作用することにより生成されるため、ヒスチジンが多く含まれる食品を常温に放置する等の不適切な管理をすることで増加する。ヒスタミンは熱に安定であり、一度生成されると調理加工工程で除去できず、食中毒の原因となる

概要:
2016年1月21日、南会津保健所は、南会津郡下郷町教育委員会から「町内の小中学校において、複数の児童・生徒が、給食を喫食中に体調不良を訴えた。」との連絡を受け、調査を開始した。学校給食共同調理場で調理した学校給食を喫食した小中学生と教員376名のうち87名が喫食後、唇の痒みや腫れ、発疹、頭痛等のアレルギー症状を呈しており、ヒスタミンによる食中毒が疑われたため、福島県衛生研究所で当該給食に提供されたさんまのぽうぽう焼きと原材料のさんまのすり身のヒスタミン検査を実施した。その結果、すべての検体から高濃度のヒスタミンが検出され、さんまのぽうぽう焼きを原因とする食中毒と断定した。

原因究明:
会津若松市卸売市場内の魚介類販売業者は2015年8月27日に、他県の魚介類加工業者より「さんまのすり身」(冷蔵保管、消費期限:2015年8月29日)を45袋仕入れ、うち24袋は消費期限内に出荷し、残り21袋については、2015年8月28日に表示ラベルを剥がし、冷凍保管した。このうち14袋を、消費期限を大幅に過ぎた2016年1月19日に下郷町の食品販売業者に出荷し、この業者は1月21日午前8時頃、下郷町学校給食共同調理場へ14袋全部納品したことが判明した。会津保健所は、消費期限を過ぎた食品を冷凍し販売した業者に対して2日間の営業停止処分とした。

診断:
さんまのぽうぽう焼き2検体と原材料のさんまのすり身2検体から、ヒスタミン270~390mg/100gを検出した。

地研の対応:
検食のさんまのぽうぽう焼き2検体と原材料のさんまのすり身2検体のヒスタミン検査を実施し、すべての検体からヒスタミンを検出した。

行政の対応:
発症者の状況と給食に使用された原材料の調査を実施し、当衛生研究所にヒスタミン検査を依頼した。その結果、さんまのぽうぽう焼きとその原材料のさんまのすり身から高濃度のヒスタミンが検出され、発症者は喫食後短時間(数分間~1時間)でアレルギー様症状を呈しており、ヒスタミンの食中毒の特徴に一致していることから、さんまのぽうぽう焼きのヒスタミンによる食中毒と断定した。
事件後、県は、食品衛生部門から食品販売業者への食品保管に関する指導、給食施設に対する原料仕入れ時の消費期限ラベル確認徹底の指導を行った。また、教育委員会からも市町村教育委員会に対して食材の表示確認の徹底について通知した。

地研間の連携:
なし

国及び国研等との連携:
なし

事例の教訓・反省:

現在の状況:
なし

今後の課題:
食品衛生検査指針(理化学編2015)高速液体クロマトグラフ法(定性・定量)(A)(参考法)で実施した。この方法は、ダンシルクロライドによる誘導体化反応に時間がかかり、操作も煩雑であるため、結果報告まで数日を要したので、より簡便で迅速な検査ができるようにフルオレスカミン誘導体化による高速液体クロマトグラフ法(定性・定量)(B)(参考法)等、分析法を検討する。また、県内衛生検査技術職員を対象に検査法の研修を予定している。

問題点:

関連資料: