No.17011 観賞用ヒョウタンによる食中毒

[ 詳細報告 ]

分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2017/04/04
最終更新日:2018/03/22
衛研名:兵庫県立健康生活科学研究所健康科学研究センター
発生地域:兵庫県篠山市
事例発生日:2016/07/27
事例終息日:
発生規模:喫食者数3名
患者被害報告数:3名
死亡者数:0名
原因物質:クルビタシンB(推定)
キーワード:ヒョウタン、苦味成分、植物性自然毒、ククルビタシンB

背景:
ヒョウタン等のウリ科植物には、苦味成分であるククルビタシン類を含むことがあり、実等を摂取すると、嘔吐や下痢の症状を引き起こすと言われている。

概要:
兵庫県篠山市在住の男性が、自宅の庭で栽培した観賞用ヒョウタンの実を、油で素揚げにして調理した。これらを自宅を訪ねてきた友人2名と喫食したところ、約30分後に3名全員が嘔気、嘔吐、下痢等の食中毒症状を呈し、医療機関を受診した。当該ヒョウタンと同一株から採取した実から、ウリ科植物に含まれる苦味成分である植物性自然毒ククルビタシンBを検出した。

原因究明:
患者が観賞用ヒョウタンを食べられると思ったことが原因と考えられた。また、インターネットでヒョウタンの調理法が掲載されていたことも誤食の一因と考えられた。

診断:
有症者を診断した医師から食中毒の届出があった。

地研の対応:
当該ヒョウタンと同一株から採取した実をメタノールで抽出したものをLC/MSで分析した結果、ククルビタシンBを468μg/g検出した。また、ヒョウタンと同一種である食用のユウガオにククルビタシンBを1μg/g相当添加し、回収試験を行った結果、回収率は97.8±2.3% (n = 3)であった。定量限界(S/N =10) はユウガオに添加した場合で0.3μg/gと計算された。

行政の対応:
丹波健康福祉事務所(保健所)は、当該ヒョウタンを原因とする食中毒と断定し、同事務所及び兵庫県健康福祉部健康局生活衛生課が記者発表を行った。

地研間の連携:
分析方法については、大阪府立公衆衛生研究所研究報告、岡山県環境保健センター年報、沖縄県衛生環境研究所報等の地研の研究報告を参考にした。

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
中毒事例発生時は、原因物質の標準品(ククルビタシンB)は入手していたが、分析法を検討していなかったため、分析に多少時間を要した。

現在の状況:
現在は、今回分析したククルビタシンBのほか、その類縁体であり、ウリ科植物の苦味成分であるククルビタシンD, ククルビタシンE, ククルビタシンI及びククルビタシンEの配糖体であるエラテリニドの標準品を準備し、一斉分析が可能な状態になっている。

今後の課題:
自然毒中毒において、ククルビタシン類以外の自然毒物質は多種類あり、標準品の入手が困難なものについては、分析が難しいのが課題である。

問題点:

関連資料:
吉岡直樹,吉田昌史:観賞用ヒョウタンによる中毒の原因物質と推定される苦味成分ククルビタシンBの分析.兵庫県立健康生活科学研究所健康科学研究センター研究報告,8, 26-29 (2017)