No.17019 連続して発生した2件のコレラ事例

[ 詳細報告 ]

分野名:細菌性感染症
登録日:2017/04/04
最終更新日:2018/03/22
衛研名:岡山県環境保健センター
発生地域:岡山県西部
事例発生日:2017/08/16
事例終息日:2017/09/08
発生規模:患者2名
患者被害報告数:2名
死亡者数:0名
原因物質:コレラ菌O1エルトール稲葉型
キーワード:コレラ、エルトール、Vibrio cholerae、コレラ毒素

背景:
コレラは代表的な経口感染症であり、主として飲食物の摂取により感染する。海外では多発している地域もあるが、国内における発生はまれであり、近年の感染者数は年間数名から10名程度である。感染者の多くは海外渡航歴があるが、まれに海外渡航歴のない症例もみられる。また、過去には輸入食材を推定感染源とする集団感染事例も報告されている。岡山県では、2004年のO1エルトール小川型による海外渡航歴のある患者1名以降発生はなかった。

概要:
10km程度離れた地域で、同時期に連続してコレラが2例発生した。1例目は、2017年8月16日に発症し8月21日に疑い症例として報告された70代女性である。2017年 8月 23日に患者由来株を検査した結果、コレラ菌O1エルトール稲葉型と同定された。患者宅井戸水1件、接触者の便3件を検査したがコレラ菌は検出されなかった。患者には海外渡航歴は無く、現在のところ、感染源は不明である。2例目は、2017年8月28日発症し8月31日に疑い症例として報告された80代女性である。2017年 9月1日に患者由来株を検査した結果、同じくO1エルトール稲葉型と同定された。2例目の患者も海外渡航歴は無かった。また、1例目と2例目の居住地間の距離は10km程度と近接していたが、共通する喫食物や行動も確認されず、現在のところ、感染源は不明である。患者から分離された2株のコレラ菌は、MLVA法による遺伝子解析の結果、同一型と判明した。

原因究明:
保健所において患者行動調査、喫食調査が行われたが、2事例の関連性は見出せず感染源は不明であった。

診断:
2事例の患者由来株の同定検査を実施した。TCBS寒天培地及びビブリオ寒天培地でのコロニー観察、生化学的性状試験、コレラ菌免疫血清及びPCR法による血清型別、PCR法による生物型別及びコレラ毒素遺伝子検査を行い、ともにコレラ菌O1エルトール稲葉型と同定された。

地研の対応:
コレラ菌の同定検査を行いコレラ菌O1エルトール稲葉型と同定した。1例目について患者宅井戸水1件、接触者の便3件を検査したが全てコレラ菌陰性であった。患者菌株は、当所での同定の後、国立感染症研究所細菌第一部にMLVA法による遺伝子解析を依頼した。その結果、2事例の患者から分離された2株は同一型と判明した。

行政の対応:
2事例の発生を公表し、地域住民に対する注意喚起を行った。また、国立感染症研究所感染症疫学センターに実地疫学専門家(FETP)の派遣を依頼し、原因究明及び今後の対策等について協議・検討した。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
疫学調査時には、症状及び喫食調査だけでなく行動調査も行うことで、原因究明の一助となる場合がある。また、長期に遡る喫食調査は患者の記憶が不確かな部分もあり、散発事例では疫学調査が不十分となりやすい。

現在の状況:

今後の課題:

問題点:

関連資料: