No.19010 スイセンによる食中毒

[詳細報告]

分野名 自然毒等による食中毒
衛研名 名古屋市衛生研究所
報告者 食品部 宮崎仁志
事例終息 事例終息
事例発生日 2019/05/05
事例終息日 2019/05/13
発生地域 名古屋市
発生規模 喫食者数7名
患者被害報告数 7名
死亡者数 0名
原因物質 ガランタミン
キーワード スイセン、ガランタミン、食中毒、リコリン、ギョウザ、ニラ

概要:
2019年5月5日、名古屋市内の一般家庭にてギョウザを食べた7名が嘔吐、下痢などの食中毒症状を呈した。原因はギョウザにスイセンが混入したためであった。当該家庭に残っていた調理前のギョウザおよび敷地内においてニラの付近で栽培されていたスイセンを LC-MS/MSで分析したところ、ギョウザからはガランタミンのみが検出され、スイセンからはガランタミン及びリコリンが検出された。

背景:
スイセンはヒガンバナ科の植物であり、リコリン、ガランタミンなどのアルカロイドが含まれる。スイセンの葉はニラ、球根はタマネギと似ているため誤食による食中毒が報告されている。食後30分以内で嘔吐、吐き気などの消化器症状を示す。

地研の対応:
保健センターからの依頼により、搬入された検体(調理前のギョウザおよび敷地内で栽培されていたスイセン)の分析を行った。ギョウザの葉部(スイセンと思われる部分のみ採取)から1.2 µg/gのガランタミン、スイセンの葉から18.9 µg/gのリコリンおよび1.0 µg/gのガランタミンが検出された。ギョウザの葉部からリコリンが検出されなかった要因として、アルカロイド含有量は採取場所、時期、採取部位等により異なる可能性が考えられる。

行政の対応:
・ギョウザに使用された豚ひき肉の販売店の調査。 ・当該家庭での現地調査。 ・検体(ギョウザおよび敷地内のスイセン)を採取し衛生研究所に搬入。 ・(調査終了後)公式ウェブサイト、メールマガジン、講習会等を通じた市民への注意喚起の実施

原因究明:
当該家庭においてはニラを栽培しているだけでなく、スイセンも栽培しており、両者の境界が不明確であったことから取り違いが起こったと推測される。

診断:
LC-MS/MSを用いて分析を行ったところ、ギョウザの葉部(スイセンと思われる部分のみ採取)から1.2 µg/gのガランタミンが検出され、敷地内で栽培していたスイセンの葉からは18.9 µg/gのリコリン、1.0 µg/gのガランタミンが検出された。

地研間の連携:
なし

国及び国研等との連携:
なし

事例の教訓・反省:
なし

現在の状況:
当所では過去にスイセンによる食中毒に対応した経験があったため、迅速な対応が可能であった。

今後の課題:
スイセンに含まれるアルカロイドとしてリコリン、ガランタミンが知られているが、種々の条件により両化合物の濃度が異なる可能性が考えられる。今回の事例のように一方のアルカロイドのみ検出されることもあるため、リコリン、ガランタミン以外のアルカロイドも同時にモニタリングし、原因究明に努める必要がある。

問題点:
なし

関連資料:
なし