No.19015 サポウイルスによる集団食中毒事例

[詳細報告]

分野名 ウィルス性食中毒
衛研名 相模原市衛生研究所
報告者  
事例終息 事例終息
事例発生日 2019/03/09
事例終息日 2019/03/22
発生地域 神奈川県相模原市
発生規模
患者被害報告数 22名
死亡者数 0名
原因物質 サポウイルス
キーワード 食中毒、サポウイルス、相模原市

概要:
 平成31年3月7日正午から、相模原市内幼稚園に通う園児等14名及び保護者13名が市内飲食店を利用したところ、3月9日に園児10名、保護者12名がおう吐、下痢の症状を呈した。そのうち1名は自宅で脱水症状による意識不明になり、救急搬送され、3日間入院したとの情報が平成31年3月14日に寄せられたため、保健所は直ちに調査を開始した。患者に共通する食事は当該飲食店のみであり、患者14名及び調理従事者1名の便からサポウイルスが検出された。当該飲食店及び対象幼稚園内で感染症を疑う事例はなく、患者の症状がサポウイルスによるものと一致したため、保健所は当該飲食店を原因とする集団食中毒と断定した。

背景:

地研の対応:
 施設ふきとり10検体、患者便14検体及び調理従事者便7検体について、細菌性食中毒菌及びノロウイルス、サポウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスの下痢症ウイルスについて検索を実施した。その結果、施設ふきとり10検体は細菌性食中毒菌及び下痢症ウイルスは不検出であった。患者便14検体すべて及び調理従事者1検体からサポウイルスが検出された。なお、サポウイルス以外の細菌及びウイルスは検出されなかった。

行政の対応:
 3月20日から22日までの3日間、当該飲食店を営業停止処分とし、3月20日その旨報道発表した。本件は、発生要因として、調理従事者の手洗い不足、調理従事者からの二次汚染による食中毒が考えられた。当該飲食店の営業者、食品衛生責任者、調理従事者、その他のスタッフに対し、リーフレットや手洗いチェッカーを用いた衛生講習会を実施した。また、当該飲食店は患者から体調不良の申し出があったが保健所に連絡していなかったため、利用者からの食中毒等健康被害につながる恐れが否定できない情報を受けた場合は速やかに報告するよう指導した。 サポウイルス陽性となった調理従事者については、当該ウイルスを保有していないことが確認されるまでの間、食品に直接触れる調理作業を控えるなどの適切な処置をとるよう大量調理施設衛生管理マニュアルのノロウイルスに準じた助言を行った。

原因究明:
 平成31年3月14日午後、当該飲食店に立ち入り調査を実施した。施設内のトイレは汚れや吐物もなく、施設内の衛生状態は比較的良好であった。7日に提供された食事の残品は無かったため、残品検査は実施できなかった。  喫食者の行動調査において、当該飲食店での3月7日の食事以外に共通事項は認められず、発症者は共通した食中毒症状を呈していた。対象幼稚園において、3月4日~8日に園内でおう吐、下痢の発症はなく、対象幼稚園に登園していない家族1組3名も発症していた。喫食者グループが集まったのは当該飲食店のみであり、座席表から発症者の偏りも確認できなかった。これらのことから、感染症の可能性は否定された。また、サポウイルスを検出した調理従事者は当該日に調理に従事していた。このため、サポウイルスを病因物質とした当該飲食店の提供した食事を原因とする食中毒と断定した。

診断:

地研間の連携:
無し

国及び国研等との連携:
無し

事例の教訓・反省:
 例年、ノロウイルス以外のウイルスを原因とする食中毒事例は少ない。平成30年の食中毒事件は、ウイルスによる食中毒が全体の19.9%、その内ノロウイルス以外のウイルスは3.3%であった。本市では、食中毒調査の初期段階における検便のウイルス検査は、ノロウイルスのみ実施している。 調査票の回収率が低い初期の段階で判断するのは難しいものの、本事例では、潜伏時間が48時間以上の患者が8割以上おり、ノロウイルスの性状と異なっていたことに早い段階で着目し調査に反映させるべきであった。

現在の状況:

今後の課題:
一般的に、食中毒調査の初期段階では、なるべく多くの病因物質を検査し、病因物質を検出することで、原因施設や感染源の特定につながり、危害拡大防止につながると考えられている。人員及び予算面などの理由から低予算のmultiplex PCRキットの開発が望まれる。

問題点:

関連資料: