昨今、中国産餃子や緑茶飲料等の農薬混入事件を受けて、食の安全に関する意識が高まっている。また地域の健康危機管理に関して保健所の役割がますます重要となってきている。今回、管内保育所で発生した集団健康被害に関し、当初原因が特定されない中、警察や衛生環境研究所等との連携によって早い段階で飲料調製の再現等による発生原因の推測、再発防止策を講じることができたので報告する。
平成20年3月某日、管内の保育所施設において調製した乳酸菌飲料の飲食後による嘔吐症状の集団発生があった。しかし、症状は一過性で、早期に回復しており病院受診者もいなかった。健康被害発生後、保育所を所管する役場から第1報が入り、保健所は現場調査を始めると同時に状況から人為的な原因の可能性も否定できないと判断し日南警察署への情報提供を行った。警察は毒物等による事件性を考慮し化学物質の検査を、保健所は疫学調査を進めると同時にシアン、ヒ素、農薬のスクリーニングと黄色ブドウ球菌エンテロトキシン、農薬及び金属の詳細な検査を受け持つなど役割を分担して初期調査を実施した。