施設側の同意により実施できたスーパー銭湯利用者の接触者健診の事例
〔作成者〕愛知県春日井保健所
〔発生年月日〕2008/9/22~2009/3/13
〔概要〕24時間営業のスーパー銭湯(参考:1日平均利用者数650名)で長期利用者(参考:深夜利用者170~180名、月20日以上の夜間頻回利用者50~60名)から高感染性結核が発生した。
本施設は過去5年間で6名(5名の排菌患者の内、利用者は3名、従業員は2名)の結核患者発生があり、その都度接触者健診を実施してきた(延12回、延1,358名)。これまでは施設管理者の理解が得られず、接触者健診の対象は従業員に限定されていたが、毎年のように患者発生があったことから、従業員限定の健診では不十分であること等を理由に施設管理者を説得し、利用者の接触者健診を行うことができた。有症者及び接触の可能性のあった施設利用者を対象に、1月間にわたって店内にチラシ・ポスター等で健診を呼びかけ実施した。
健診車による集団健診方式は、健診日を複数日設定しても、利用者にとっては利便性が悪く、まとまった受診者数は期待できないと考えられた。そこで、健診の申し込みがあれば、その都度医療機関を紹介する個別健診方式を採用した。接触者健診の申し込みのあった施設利用者7名の内、3名に対して胸部エックス線検査を実施したが、いずれも「異常なし」であった。4名は健診申し込みをするも受診には至らなかった。また、施設従業員4名からも健診申し込みがあり、胸部エックス線検査及びQFT検査を行ったが、いずれも「異常なし」または「陰性」であった。
これまで施設管理者は、接触者健診は従業員の定期健康診断の代替になったという程度の受け止め方であったが、今回の一連の指導の結果、利用者に対して「健診の必要性と受診機会の提供」を周知させることも施設管理上の責務であるとの認識を持たせることができた。同時に、結核患者発生予防と早期発見のための対策を施設管理者に指導し理解させることができた。
今後の課題としては、(1)利用者からの申し込みが少ない場合や、申し込みがあっても受診に至らない場合には、受診者増につなげるさらなる対策が必要である。(2)施設従業員の有症状受診を勧奨すると共に、定期健診の結果報告を求める必要がある。(3)施設利用者の中には宿泊目的で夜間頻回に利用する者も多いので、頻回利用者の健康観察と有症状時の受診勧奨を行えるように、施設管理者に継続的に働きかけることが重要である。(4)全国でこのような施設において結核排菌患者発生と接触者健診を行うような事例が発生している場合には、今後、長期利用者に対する健康観察の義務付けなど何らかの法的規制を検討する必要がある。
〔患者/死者/負傷者〕
結核患者の状況:67歳 男性、住所不定、体調不良(呼吸器症状・体重減少・呼吸苦・食欲不振等)の前後1ヶ月は24時間営業のスーパー銭湯に滞在していた。発生届後、4日目に死亡した。(死因 結核死)
〔症状/被害状況〕
喀痰検査:塗抹9号 結核菌同定、bⅠ3 、呼吸器症状・体重減少・呼吸苦・食欲不振等あり、呼吸器症状出現前後1ヶ月は24時間営業のスーパー銭湯に滞在した。施設1日利用者650名、1日深夜利用者170~180名、月20日以上の夜間頻回利用者50~60名、従業員(正社員25名、アルバイト約150名、派遣職員10名等) ※正規職員は年1回定期健診実施。アルバイトは施設として健康診断はしない。